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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第18章 聖夜の大決戦
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EPISODE334:Rebellion to the fate


「ハッハァァーーッ」


 ゆっくりと歩み寄ったかと思えば、カイザークロノスは瞬間的に加速してアッパーを健にぶちかます。天井をぶち破った健は城の屋上へと飛び出した。健とカイザークロノスを追って、あとの三人も天井に開いた穴から屋上へ向かう。


「うぉぉぉっ」


 カイザークロノスは健に追い打ちをかけんとするが、健は体勢を直して同時にクロノスを斬った。屋根の上に降りると、パンチとキックも交えた斬り合いを始めた。


「クロノスぅぅッ!」

「――逆行(リワインド)


 健は片足によるキックを繰り出した。しかしカイザークロノスはまたも逆行(リワインド)を発動させ、健の時間を巻き戻す。

 めげずに健はキックをかまし、それに対抗したかカイザークロノスも両足キックを繰り出した。カイザークロノスのほうが押し負け、屋根に叩きつけられ怯んだ。またとないチャンスだ。しかし、当然というべき相手のパワーも相当なものだったため健は疲弊する。


「や、やっと隙のない相手が隙を見せたんだ……。突かなきゃ……!」

「誰が隙など突かせるものか!」


 ところが、起き上がったカイザークロノスは目から破壊光線を発射。それで周囲を焼き払い爆発を起こして健を牽制する。


「ふぉぉあっ!?」


 双剣を仕舞いカイザークロノスはラリアットで追撃。健は尖塔の壁に叩きつけられた。落下するも健は屋根の淵に掴まった。上ろうとしたが、しかし――カイザークロノスは黙って見過ごすほど優しくなかった。上ろうとする健の手を踏みにじったのだ。


「ここまでだな。地獄で親父が待っているぞ」

「だ、誰が行くもんかぁっ……」


 ジリジリと手を踏みにじられても、健は強気な姿勢を崩さない。しかしカイザークロノスによって何度も踏みにじられた手には血がどくどく溢れ出し、今にも力が抜けそうになっていた。もはや命運尽きたか。


「健ゥーッ」

「どあっ!?」


 と、そのときである。アルヴィーが勢いよく真横からカイザークロノスにぶつかって、彼をぶっ飛ばした。更に城の屋上までやってきた不破ら三人も姿を現す。


「東條、無事だったか?」

「さあ掴まってっ」

「みんな……」


 仲間の身を案じて助けに来てくれた葛城の、不破の、市村の手を掴んで、健は引き上げられた。首を振って士気を高め、身構えるとカイザークロノスの禍々しい姿を見据えた。


「いいか、肩だ。あいつは時間を操れるらしい。時間を操って何かしようとしたときは……肩を見るんだ」

「肩? わかりました」


 不破からアドバイスを授けられ、凛々しい顔で頷いた健。カイザークロノスは、低く唸りながら起き上がり、目をカッと開いて健たちへ破壊光線を放つ。仲間に被害が及ばぬように、健は盾に土のオーブをはめて岩の壁を作り出した。

 壁は崩れたが、とっさに飛び出して健は剣を叩きつけて反撃。クロノスのパンチをタイミング良くガードし、一瞬怯んだ隙を見てすかさず斬撃でカウンターする。

 クロノスが反撃で繰り出したキックをバック宙でかわして距離を置くと、盾に雷のオーブをはめて、それと交換で剣に土のオーブをはめた。刀身が褐色に変わり、温もりと力強さ・重厚さを感じさせる。


「食らえー!」

「フン!」


 衝撃波を起こしてカイザークロノスを攻撃。しかしカイザークロノスは一切動じず、それどころか双剣を召喚して気合いを溜めた。


「失せろーっ!」

「ぐっぐはぁぁぁぁーーっ!!」


 黒いオーラをまとうカイザークロノスは回転しつつ健へ突進、健をぶっ飛ばして塔の壁に叩きつけた。

 しかし健は、剣にはめた土のオーブを氷のオーブと交換し、空気中の水分を凍結させて道を作り出して滑走。カイザークロノスを牽制するが何度目かの攻撃を加えようとしたところで、双剣で薙ぎ払われ屋根に落とされた。


「よし、これならどうだ……?」


 それは空元気か? 一瞬ニヤリと笑い、健はまだ二つ残っていたエーテルセイバーの柄の穴に風のオーブをセット。辺りに凍えるほどに冷たく輝く吹雪を乗せた超低温の風が吹き荒れた。


「オーブとオーブの合わせ技を見ろ! ブリザードストーム!」

「くうううっ」


 吹雪を伴う竜巻がカイザークロノスを巻き込み、吹き上げる。下半身を凍らされたカイザークロノスは苦い顔で、「くっ、動けん」


「――ブレイジングサンダー!!」


 速やかに健はオーブを交換、今度は炎と雷のオーブだ。荒れ狂う稲妻が降り注ぎ、炎の波を巻き起こしてカイザークロノスを焼き払う。


「でやああああああ!!」

「防げ!」


 動けるようになったクロノスは、目の前に青黒いバリアーを展開。健が追撃で放った稲妻を帯びた衝撃波を防いだ。健たちは思わず、目を丸くする。


「俺にこのバリアーを張らせたことは称賛に値する……。ハアッ!」

「なにっ……うわああああああ!!」


 バリアーが分散したかと思えば、先端が尖り――無数の鋭いエネルギーの矢となって健を襲う。しかし、瞬時にアルヴィーが割り込んで身を挺し、健をかばった。


「! ……黄金龍め、またしても!」

「健、光の力を使え。さすれば道は開けるはずだ」

「言われなくてもそうするつもりだったよ」

「まったく。お主というヤツはどこまでも調子のいいことをぬかしおる」


 アルヴィーは全身を黄金色に輝かせ、白金色に輝く光のオーブを健に手渡した。


「――剣よ、眠れる力を呼び覚ませ!」


 眉を吊り上げ自信に満ちた笑みを浮かべると、健は光のオーブを装填。エーテルセイバーとヘッダーシールドは眠っていた力を解き放ち、豪華絢爛な装飾が施された真の姿――エンペラーソードとミラーシールドとなった。黄金色に輝くエンペラーアーマーも装着され、髪も黄金色に輝き出し――健の力はより一層高まっていく。


「出た! あれやったらいける!」

「健さんが帝王の剣(エンペラーソード)を手にしたら、まさしく鬼に金棒だわ」

「っふ……。ついに真の力を呼び覚ましたか。だが、お前にそれを手にする資格があろうとも俺を倒すほどの力は備わってなどいない」


 市村と葛城は目を輝かせ、カイザークロノスは冷たい笑みを浮かべて健を見下す。「それは……どうかなっ!?」と、健はカイザークロノスに急接近し一太刀浴びせた。健は元よりパワー・スピード、すべてにおいて平均以上の高さを誇っており、帝王の剣を手にしたことにより更に己の能力を引き出し高めたのだ。カイザークロノスはよろめくがまだ表情には余裕が見られる。


「ククッ……! そんな金メッキの鎧をまとったところで状況を覆すことは出来ん。お前たちはここで塵芥となる運命(さだめ)なのだ」

「勝手に人の運命決めるなよッ!」


 健は光の刃で笑うクロノスを薙ぎ払った。追撃で、黄金色のアルヴィーも口から青い炎を吐き出して追撃する。


「お前の言う結末が正しいとしたら、僕はそんな運命ねじ曲げる! 僕たちの運命を切り開くのは、僕たち自身なんだ!」


 健は帝王の剣でカイザークロノスに斬りかかる。クロノスは双剣で弾き、つばぜり合いに持ち込む。互いに凄まじい気迫だ。目が据わっている――。


「英雄気取りが……!」

 つばぜり合いにはカイザークロノスが打ち勝った。健を怯ませると切り払い、たじろがせる。追撃を加えようとしたが健は宙返りでかわした。


「お前の時間を戻してやる! エスパーになる前になッ!!」


 狂気じみた笑いを浮かべてそう叫んだカイザークロノスは、片手を震わせ力を溜めた。時間を操ろうとしているのだ。


「あっ! 肩の触角が動いた……。そうか、あそこから時間を操作するパワーを発していたんだな!」

「気付いたところでもはやどうにも出来んぞ。タイムフリーザー!!」


 時間操作の秘密を超速理解した健は、肩の触角のような突起を破壊しようと飛びかかり剣を振る。しかしあと一歩のところでカイザークロノスのタイムフリーザーが発動し、時間が凍り付くように止まった。


「ハハハハ……。滅べ! 滅べ、滅べ、滅べえええぇぇっ!!」


 カイザークロノスは時間が凍った中を我が物顔で闊歩し、目にも留まらぬ速さで健を斬りつけた。そして時間は再び動き出し、健は血しぶきを上げてゆっくりと地面に落ちた。


「た……健さん!?」

「終わったな……。フッフッフッ、ハーッハッハッハッハッハ!」

「ハッハッハッハッ!!」


 葛城が口を塞ぐ。市村は両目を手で覆う。不破は衝撃のあまり目を見開いた。しかし、アルヴィーだけは笑っていた。


「……何がおかしいッ!?」

「健が貴様にやられっぱなしだと思っておったのか?」

「黄金龍……何が言いたいのだ?」

「今にわかる」


 パートナーが倒されても冷静なアルヴィーの言葉をいぶかしがるカイザークロノス。次の瞬間、斬撃が放たれたような軌跡が浮かぶとともにカイザークロノスの両肩にあった突起が破壊された。カイザークロノスはうめき、「な……なにい……?」と、はじめて狼狽した。同時に健があえぎながらも立ち上がる。


「……説明しなければなるまいッ! お前がタイムフリーザーとかいうインチキな技を使おうとしたとき、僕は時間が止まる寸前のわずか0.5秒という隙を突いて触角を斬った! だからお前が時間停止状態を解除すると同時に触角が破壊されたッ! 早すぎてお前でも気付かなかったってわけだッ!」


 苦い顔をするカイザークロノスへ、健は自信たっぷりにそう言い放つ。説得力があるかどうかも疑わしいとんでもない理論だが、この際細かいことはどうでもいい。戦いはノリが良いほうが勝つとどこぞの赤い鬼も言っていたようにだ。仲間たちは健のトンでも理論をあきれ半分で聞きつつ、喜んだ。


「ともかく、これでお前は時間を操れなくなった。カイザークロノス、僕の勝ちだ」

「……クックックッ……ウワーッハハハハハハ!!」


 これで健たちはカイザークロノスとの戦いに勝ったも同然だ。だが、ヤツは突然狂気をはらんだ高笑いを上げた。微塵も悔しがっておらず、一同は逆に驚かされた。



「そ れ が ど う し た ? たかが能力のひとつ封じられたところで、俺には貴様らを遥かに凌駕するほどの力がある。結局貴様らは敗北する運命を覆せないまま終わるんだ。だのに勝手に俺に勝ったなどと思い込むとは、笑い話にもならん」


 カイザークロノスは時間を操ることしか能のないシェイドではなかった。時間操作を封じても実力差を埋められないのなら、勝つことなど出来ない。一同は言葉を失った。



「絶望しろ……愚か者ども!」


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