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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第18章 聖夜の大決戦
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EPISODE323:総攻撃開始!ネザーワールドへ突入せよ


 それから残りの五日間は皆、決戦に備えて厳しい修行に明け暮れ、ときには体を休めた。すべてはクリスマスイブに始まる総攻撃から罪無き人々と平和を守るために――。皆の決意は固かった。


 ――そして十二月二十四日、クリスマスイブ、早朝。ついにそのときは来た。


「な……なんだアレ!?」

「シェ、シェイド……いやぁぁッ殺されるぅぅッ!」


 骨で出来た簡素な鎧をまとった雑兵タイプのシェイド……グラスケルトンの集団が姿を現す。彼らは人々を目にするや、剣や斧、棍棒に槍を持って襲いかかる。

 中には容赦なく銃を向けて発砲した個体も見られた。ひとつのビルが破壊されたのを皮切りに次から次へと街は破壊され、人々は蹂躙されていく。栄華を極めていた東京の街も、すっかり瓦礫の山となってしまった。


「グラァ……」

「ひぃっ!」


 剣を持ったグラスケルトンが逃げ遅れた一人の女性に接近。近くには赤と水色のトンボ型シェイドや、体表がドロドロしているゾンビのようなシェイドがいた。


「た……たすけて!」


 もうダメだ、殺される! しかし一筋の閃光……太陽エネルギーの光線が放たれ、近寄ってくるシェイドたちは焼き尽くされ消滅。絶望しかけた女性の窮地を救った。


「ここは危険です、早く逃げてください!」

「はいっ」


 先ほどの光線を放ったのは葛城だ。助けた女性に避難を促して自身は戦場の真っ只中へと切り込んでいく。

 レイピアで繰り出す斬撃はシェイドたちを切り裂き、突きがシェイドたちを貫き、回し蹴りがシェイドたちを薙ぎ倒す。


「数が多いですわね……ヴァイオレントブロッサム!!」


 倒しても倒しても次から次へとシェイドは沸いてくる。葛城一人に対してシェイドたちは何千体も跋扈している。圧倒的物量で襲撃し数の暴力で一気に攻め落とす――。単純だがこれが人類に対する総攻撃の全容だ。

 そこで葛城は地面にレイピアを突き刺して、地中から突き出た無数の茨で周囲を攻撃。シェイドたちは串刺しにされた。


「グエーッ!」

「今度は空中からッ!」


 シェイドは空中からも容赦なく攻撃してくる。キツツキ型のシェイド――ブラッドペッカーが徒党を組んで現れ、そのうちの一体が葛城に狙いを定める。


「降りかかる火の粉は、払いますッ!」


 険しい顔で葛城は跳躍。自分を狙ってきたブラッドペッカーがいる高さまで到達すると切り裂いて、華麗に着地。葛城の背後で切り落とされたブラッドペッカーが爆発した。

 しかし空を見上げれば敵は一体だけではない。もちろん地上にも敵は大勢いる。自分ひとりだけでは埒が開かない。


「困ったわ、まるで詰め将棋……。猫の手でも借りられたらいいのだけど」


 冷静にしながらも葛城は焦りを感じる。しかし、いらぬ心配だった。どこからともなくミサイルやビームなどが戦場に飛び交い、文字通り飛ぶ鳥を落とす勢いで空中のシェイドたちを落としていく。無論、地上にひしめくシェイドたちもだ。


「一人でええかっこしぃでっか? あきまへんな」

「正史さん! 来てくださったのね!」

「ええよイッチーで!」


 全身が武器となっている機械の体を持った相棒・ブルークラスターを引っ提げて葛城のピンチに駆けつけたのは市村だ。ご機嫌そうに答えながら、余裕綽々で市村はブロックバスターからビームを乱射。ちぎっては投げ、ちぎっては投げる勢いでシェイドたちを潰していく。


「やれるけえ、この数!」

「命ある限り戦えます!」


 市村に射撃で援護してもらいながら、葛城はグラスケルトンたちをレイピアで蹴散らす。銃弾や剣が飛んでくれば盾で防ぎあるいはかわす。隙を見せたら情け無用の一撃を浴びせ畳み掛ける。しかしシェイドの群れは更に沸いてくる。


「そぉい!」


 更にそこへ電撃が放たれた。動揺する葛城と市村が次に見たものは、バイクに乗ってシェイドたちを轢き倒す――不破ライの姿。


「不破さん!」

「よっ、待たせたな! クロノスの前にこいつらからとっちめようぜ!」


 二人の前に不破がバイクから降り立つ。バイクはタイルの隙間に消え、不破はランスをグラスケルトンに叩きつけて頭から潰した。不破の加入を喜ぶ間もなくシェイドたちは、群れをなして襲いかかってきた。


「食らえ、サンダーストライク!」


 不破はランスの穂先にエネルギーを集中させ電撃をまとって突進。白銀色のトンボ型のシェイドやガーゴイルのような外見のシェイドを貫くと爆散させた。


「ズーッ!」

「やぁっ!」


 あらかた雑兵を蹴散らした葛城はボウガンを構えたハチのシェイド(♀)に挑む。放たれる矢を盾で弾きながら、一気に詰め寄り突きで攻撃。ハチ女のシェイドは背中の翅を広げて飛ぶと距離を置き、ボウガンを乱れ撃つ。葛城はすべて突きで打ち落とし、急所狙いの最後の一発は盾で受け止めた。


「オラオラァァ〜ッ!!」


 一方の市村は寄ってたかってきたグラスケルトンたちに足払いをかけ、転ばせたところを一体ずつ撃ち抜いて撃破していく。息を吐く暇もなくグラスケルトンやクリーパーたちを大斧で突き飛ばして黒い猛牛のシェイドが現れ、斧を大地に叩きつける。地面が揺れて呆気にとられた市村は転んだ。


「ブモオオオオォッ!」

「にゃろおォォッ!!」


 市村は転んだ状態から猛牛のシェイド――バイソンアックスに銃を乱射。ところがバイソンアックスは斧を風車のごとく振り回して防御し、それが終わると角を怒らせ市村に向かって突進。市村をぶっ飛ばしビルの壁面に叩きつけた。


「市村ぁッ!」

「ガブガブゥゥッ!」


 市村を助けねばと、不破は走る。だが彼の行く手を巨大な頭を持ったフクロウナギのシェイド――ビッグマウスが立ちはだかり、その大顎で不破を噛み砕こうと迫る。噛みつきを宙返りでかわすも、ビッグマウスは不破が着地する地点に火の玉を吐き見事に命中させる。絶叫しながら不破は街灯に叩きつけられ、地面に落下した。


「ズー!」

「くっ!」


 ハチ女のシェイドと戦闘中の葛城は、防御し損ねた矢が頬をかすったがまだまだ行けそうだ。急接近して肉弾戦に持ち込むも、足払いをかけられ葛城は転倒。挙句喉元にボウガンを突き付けられてしまう。


「ズーッ……」

「し……しまった」


 体が動かない。先ほどかすった矢にマヒ毒でも塗られていたのか、それとも恐怖心か? 窮地に次ぐ窮地。不敵に笑いながらハチ女のシェイドは――ファムスティンガーはボウガンを撃とうとするが、突如、空間が歪曲し、禍々しい蜘蛛の爪のようなものがファムスティンガーを突き飛ばす。ファムスティンガーは爆発四散し、葛城はうめきながらもレイピアと盾を手にして立ち上がった。


「グラァァァァァァ!!」


 灼熱の青い炎が、輝くほど冷たい吹雪が地上や空中にひしめくシェイドたちを殲滅していく。それもそのはず、宙には白い龍の姿をした――アルヴィーが舞っていた。

 アルヴィーの背から人影が二つ飛び降り、華麗に着地。健とまり子だ。葛城ら三人の表情が明るく、希望に満ちたものへ変わっていく。


「健さん、遅いですよ!」

「悪い悪い! でも主役は、遅れてやってくるもんだから!」


 健は風のオーブを宿した剣で回転斬りを放ち、まだ残っていたシェイドたちを空気の渦で吹き飛ばし爆散させる。オーブを土のオーブと入れ替え地面に叩きつけると、地中から衝撃波を発生させ不破を襲っていたビッグマウスを吹き飛ばして撃破。


「失せろ!」

「ブモオオオオォ!?」


 大人化した状態で現れたまり子はバイソンアックスを背中から蹴っ飛ばし、ビルの壁に激突させ爆散させる。これで東京を襲っていたシェイドは全滅した。


「これで全員そろったか?」

「いや、鷹梨はんがまだや。一週間前に自分から呼び出しといて、いざ一週間経っても来いひんのはおかしい……もしかしたらわしらを騙しとったんちゃう?」


 鷹梨がまだ来ていないことから、市村は疑念を抱く。と、そのとき、生き残っていたクリーパー一体が健たちに接近してきた。「まだいたのか!」と、健はいきり立つ。しかし彼らが身構えた次の瞬間、クリーパーの体を――目にも留まらぬ速さで何者かが貫き、消滅させた。正体は、仮面をつけ、両手両足に鋭いカギ爪を生やしたハヤブサの女怪人――。


「鷹梨!」

「……遅れて申し訳ありません」


 鷹梨は一旦人間態となり、真摯な態度で一同に頭を下げる。


「よかったのか? お前自分の仲間を殺しちまったんだぜ……」

「こうする覚悟はしていました。嫌ならそもそも来てません。これも運命ならばやむを得ない」

「……よし、それじゃ行きましょ。ネザーワールドへ」


 不破と鷹梨が影のあるやり取りを交わした後、まり子は念動力で空間を歪曲させると青黒いワームホールのような何かを作り出す。


「開いたわ。これが本来ならばヴァニティ・フェア関係者しか通ることが出来ない……ネザーワールドへの近道」

「ありがとう、行ってくるよ。でもまりちゃんたちは?」

「あとから行く。だから向こうで思いっきり暴れてきて!」

「……オッケー!」


 笑顔でサムズアップをして、健たち四人と人間態になったアルヴィーはまり子と鷹梨に見送られワームホールへ飛び込む。

 超高速のジェットコースターに乗ったような感覚に襲われ、健たちは思わず嬉しい悲鳴を上げる。怖さがあまってスリリングな楽しさに変わったのだろう。



「わあっ!」


 やがて一同は、冷たく暗い荒野に放り出される。空を見上げると薄暗く雷鳴が轟いており、地上を見ればどこまでも荒れ果てた大地が広がっている。日が当たっていないためか空気は冷たい。――間違いない。ここだ。


「ここが……ネザーワールド?」

「鷹梨が言うておった通りだな……」


 シェイドたちが住んでいる異次元の果て、ネザーワールド。決戦の地へと彼らは辿り着いた。


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