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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第17章 Black Diamond
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EPISODE310:完全決着・エリアYの死闘!

 ゴーレムたちは疲れ知らずだ。何故なら彼らには自己修復システムがある。いくらダメージを受けても自動で傷を修復しチャラにしてしまうのだ。

 一方、健と葛城は自分で勝手に回復できない。葛城の場合は太陽の光を浴びれば瞬く間に体力が全快するが、基本的にゴーレムを相手に持久戦を挑むのは無謀というもの。ならば道はひとつ。どちらかに集中して徹底的な攻撃を加え一気に畳み掛けるのみ。


「アルヴィー、光のオーブを!」

「うむ! 我が力、お主に託す!」


 健の呼びかけを受けたアルヴィーの体が白からまばゆいほどの黄金色へと変わる。白金色のビー玉〜ピンポン玉ほどのサイズの光の珠が飛び出し、健の手元へ渡った。


「白き光よ、眠れる力を呼び覚ませ!」


 白金色に輝くオーブを剣の柄にセットしたそのとき、エーテルセイバーは光に包まれ白と金を基調とした豪華な装飾を施された神々しい剣へと変わり、ヘッダーシールドは表面が水鏡のように磨かれ月の紋章が刻まれた盾へと変わった。


「あれは!? いかん……あれは我が兄弟ファイを倒した!」

「帝王の剣だ……! そうは行かんぞ!」


 健と葛城は見るからに本気だ。だからヤられる前にヤる――というのはゴーレムたちも同じだった。カイゴーレムがランスを振り回しデルタゴーレムがマシンガンで援護するという戦法に出る。普通なら援護射撃を行うほうから先に倒しに行くだろう。だが健はデルタには目もくれずカイに接近して連続で斬撃を浴びせた。袈裟斬り、横、逆袈裟斬り、盾で殴り、〆は真っ向から両断。効果は抜群だ。


「カイ!」

「あなたの相手はわたくしよ、ヴァイオレントブロッサム!」


 カイを助けようとしたデルタの行く手を阻んだのは葛城だ。弾幕をシールドで防ぐとヴァイオレントブロッサムでデルタを串刺しにし、ダメージを与えたあとでイバラを巻き付けて身動きを封じた。これでデルタはしばらく動けず射撃は出来ない。健の援護をするべく葛城は彼の元に駆け付けた。


「援護します!」

「オッケー、一気に行くぞ!」


 健はカイのレールガンを盾で反射してダメージを与え、そこに葛城がザクザク! と、レイピアを連続で突き刺す。もちろん一点集中だ。相手の中枢部が見えたところを一気に――貫くのだ。


「カイ!」

「行きます――五月雨の舞!」


 踊るように華麗で、ときに激しい動きで葛城はカイに斬撃を浴びせていく。やがて腹部に穴が開き――機械のはらわたがうごめく中に自己修復システムとおぼしき装置が垣間見えた。現に葛城が与えたダメージをいまにも回復せんとしている。


「これで自己修復を……ヤアアアアアッ!」

「グハアアアアアアア゛ァァァァッ」


 葛城の鋭い一突きが自己修復システムを貫く。自己修復システムは破壊され火花を散らして、カイゴーレムはたじろぐ。


「ジ……自己修復システムがぁ」

「終わりだ! 人の命を屁とも思わないお前たちは絶対に許さん!」


 痛々しい傷が残るカイゴーレムに容赦のない言葉を浴びせ、健は光の力を宿したエーテルセイバー……もとい帝王の剣に力を溜めていく。


「破邪閃光斬り!」

「ウグアアアアアアァッッッッ!!」


 力を溜めて刀身を光らせた健はダッシュで一気に接近してカイゴーレムをぶったぎる。カイゴーレムは全身から火花を吹き上げ、たじろいでいく。


「東條……オレは……!」

「カイッ!」


 そう言うとカイゴーレムの体は海に架けられた橋を臨む埠頭から海へと落下。海中で爆発し巨大な水柱を上げて海の藻屑となった。


「やったぁ!」

「あとは三角のゴーレムを倒すだけね!」


 カイゴーレムを倒した余韻に浸る暇は無い。闇のオーブを握るデルタゴーレムを倒して奪還せねばならないからだ。デルタゴーレムは唸り声を上げるとイバラを引きちぎり銃を構えて怒りの矛先を二人に向けた。


「おのれぇいッ、返り討ちにしてやる!」

「観念しなさい、リーフストーム!」


 デルタゴーレムのマシンガン乱射を盾で弾いた葛城は左手をかざして、風を起こし花びらや木の葉を回せる。風に乗って鋭い花びらや木の葉がデルタゴーレムを切り裂く。さしものデルタゴーレムもこれでズタズタだ。


「うおおおおおおおおおおおッ! シャイニングオデッセイ!!」

「な、なにぃっ! グハアアアアアアアッ!?」


 健の光の剣を両手で握って前方に構えての突進&突貫攻撃がデルタゴーレムを貫く。これぞ新たなる必殺技――シャイニングオデッセイだ。デルタゴーレムは戦闘不能に追い込まれるほどの大ダメージを受けた上に闇のオーブを手放してしまった。闇のオーブを拾い上げた健は凛とした笑みをこぼす。


「くそっ、コンディションさえ万全ならば……」


 いつもの捨て台詞を吐いてデルタゴーレムは逃走。コンテナの隙間へ溶けるように消えていった。健は光のオーブを剣から外し、真の力を解き放った剣と盾は眠りに就く。反動は健の体にも働き著しく疲弊した。剣を杖がわりに立つのがやっと、という状態だ。


「へへっ。よっしゃ、取り返したぞ!」

「でも不破さんが心配ね。……行きましょう」

「そうだね!」


 今は喜びを噛み締めている場合ではない。不破を――助けに行かねばならないからだ。健と葛城、アルヴィーは埠頭をあとにした。



「うぅりゃあああああああああああ!!」

「ぐっへえええええええええ!?」


 不破とシャドウマンティスの戦いは依然続いており、スクラップ置き場周辺は白熱した空気に包まれていた。不破の渾身の一撃で鎌を折られて、更に左腕を切り落とされてシャドウマンティスはうろたえている。


「う、腕がぁぁぁぁ!?」

「おりゃ!」

「ゲエエェッ!!」

「行くぜ! サンダーストライク!!」


 ランスによる突きからの回し蹴り、更に腹部への正拳突きが炸裂。シャドウマンティスはよろめき、不破はランスを両手に握って前方に構え穂先にパワーをチャージすると容赦なく突進攻撃――サンダーストライクを繰り出した。しかも六回連続でだ。何度も突進攻撃を打ち込まれたシャドウマンティスは壁に激突し顔から地面に叩き付けられた。


「う、ウソだありえない! 人間ごときが上級シェイドである僕を上回るなど!」

「終わりだシャドウマンティス!!」


 左腕を失い仰向けで倒れたシャドウマンティスは自分が押されていることを認められず更にうろたえる。対する不破の怒りは鎮まることを知らない。彼の全身は義憤から炎のようにたぎり稲妻のように轟いていた。


「た、助けてくれ! 僕の負けだ。もう二度と悪さはしない! だから助けてェ!!」

「その手には乗らねえよ!」


 負けそうになったシャドウマンティスは卑怯にも命乞いをするが、不破がそんなことで動じるはずもなく――シャドウマンティスの咽喉にランスを突き立て電流を流し込んだ。


「うぎゃぴいいいいいい~~~~っ!? ぼ、ぼぎゃあああああああ~~~~!! んごべらああああああ~~~~!!」

「シャドウマンティス! 地獄に落ちろぉ!! ギガボルトブレイク!!」


 轟く稲妻をまとったランスが振り下ろされ真っ向からシャドウマンティスを両断! 流し込まれた電流の影響でシャドウマンティスの体が膨張し紫の血を全身から吹き出していく。


「ばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶべべべべべべべべべべべべ、ぼおおぉぉっ!!」


 やがて破裂し大爆発。何度も大爆発を起こしてシャドウマンティスは、断末魔の叫びとともに肉片ひとつ残さず盛大に爆死した。ランスを振り回してから片付けると、不破は一息吐いた。


「不破さん!」

「お前ら! 闇のオーブはどうした?」

「わたくしたちの手で奪還しました」

「良かった……。あれが奪われたりしたらえらいことになるからな」


 やがてシェイドサーチャーの反応を追って健と葛城がやってきた。闇のオーブを無事取り戻したことを聞いて不破は溜飲が下がる思いをした。


「ところでシャドウマンティスはどこ行っちゃいましたの?」

「あのカマキリ野郎ならオレがぶっ倒した。ムカつくヤツだったからスッキリしたぜ」


 不破の口からシャドウマンティスを倒した報告を受けた二人は胸を撫で下ろした。そして村上のもとまで行き事の経過をすべて報告した。

 それから全員トレーラーやパトカーに乗り込みエリアYから東京都内の湾岸へと移動。一同はトレーラーから降りる。


「東條くん、我々が守り抜いてきた闇のオーブを君に託そう」

「君ならわかっていると思うが、力そのものに善悪はない。使うものの心次第だ」

「こうなれば我々は君が闇に呑まれないことを祈るだけだ。ぜひ平和を守るために役立ててほしい」

「……はい。喜んで」


 闇のオーブを託された健は、村上と警視総監に闇に呑まれないことを誓って東京を去っていった。黒く妖しい輝きを放つ闇のオーブ。それが導く未来は平和か、それとも破滅か――。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃――ヴァニティ・フェア本部にて、甲斐崎はバルコニーで風に吹かれながら本部の周囲を見下ろしていた。鋭い感覚でシャドウマンティスの死を感じ取った彼は――鼻で笑った。


「斬夜め、死におったか」

「一応は仲間ですからな。彼が闇のオーブを手にして帰ってきたら祝ってやるつもりでしたがどうやら期待はずれだったようだ」


 不敵に笑う甲斐崎の背後から、片目に眼帯をつけた屈強な体格の男性が現れた。ライオンのような黄金のタテガミにヒゲ、古代ローマの闘士を彷彿させる鎧、鍛え上げられた傷だらけの体――。一筋縄ではいかなそうな男だ。


「ヤツの小ずるさは始末に負えなかったからな。いなくなってせいせいしたよ」

「まったくもって同感でございます。今はいない鷹梨殿や辰巳殿が天使に思えるほどに」

「クラークもヴォルフガングも辰巳も散り、糸居まり子は俺を裏切り鷹梨も俺の元から巣立った。残るはお前たち親衛隊のみだ」


 甲斐崎がバルコニーで眼帯の壮年男性と話している最中にビートロンとスタグロンも姿を現し、会話に加わった。


「抜かるなよ、ビートロン、スタグロン。そして……ライオグランデ!!」

「仰せのままに」



 ここへ来て新たなる強敵が姿を現した。――決戦のときは近い。


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