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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第17章 Black Diamond
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EPISODE309:その秩序を、破壊する


 不破とシャドウマンティス、両者の実力は拮抗していた。シャドウマンティスが振りかざす鎌をバックラーで弾き、不破は斬撃と突きを連続で三回浴びせる。防御力に乏しいシャドウマンティスはたじろぎその反撃にと眼から溶解光線を放った。加速して回避すると不破はすれ違いざまに何度もシャドウマンティスを攻撃した。


「ウギギ! うっとうしい……!」

「いい加減に観念しろシャドウマンティス!!」


 シャドウマンティスは歯ぎしりして鎌を振るい衝撃波を飛ばす。不破はそれを回避し代わりに彼の背後にあった瓦礫が吹き飛んだ。シャドウマンティスは優れた跳躍力でジャンプしながら逃走。


「また逃げやがった!」

「ギレェェェ!!」


 どこからともなく、シャドウマンティスはカマキリの姿をモチーフにした禍々しい外見の専用バイクに乗って現れ不破に突っ込む!


「ぬわあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!」

「フヒャーッハハハハハ!!」


 不破を突き飛ばして急ブレーキとターンをかけると、エンジン音を何度も鳴らして不破を挑発。だが不破はうろたえるどころか笑っていた。


「へへへっ……」

「気でも狂ったのかあ!?」

「いーや狂ってんのはお前だ。バイクなら負けねえ」

「ハッ! 負け犬の遠吠えか、見苦しい」


 バイクで突っ込んでくるシャドウマンティスをかわして、不破は「イクスギャロップ!」と、己のパートナーの名を呼ぶ。瓦礫の隙間からいななきとともに、機械的な外見をしたユニコーンのようなシェイドが現れた。これぞイクスギャロップ。進化の過程で機械と融合しバイク形態への変形能力を手に入れた鋼鉄の馬だ。


「なんだあの馬ぁ!?」

「行くぜギャロップ、あいつを叩きのめしてやろう!」

「ヒヒーン!」


 不破はイクスギャロップの背に飛び乗って手綱を引くと、イクスギャロップを四足歩行のユニコーン形態から瞬く間にバイク形態へと変形させた。稲妻もほとばしる激しさだ。


「ちぃッ!」

「逃がすか!」


 不破はギャロップを走らせ専用バイクに乗って逃走したシャドウマンティスを追う。二台のバイクは廃墟の区画からエリアY内の道路へと飛び出し、小競り合いを繰り広げる。

 建物の脇へ逃げ込んだシャドウマンティスは、クラクションを鳴らしながら貯水タンクを飛び越し不破へ突撃。クラッシュしかけるもすばやくターンを利かせて持ち直し、不破はすれ違いざまにランスでシャドウマンティスを斬って反撃。

 さながら騎馬戦のようだ。やがて戦いの場は道路からスクラップ置き場へと移り、バイクによる騎馬戦も激しさが増すばかりだ。


「死ねぇ!」

「お前がな!」


 電撃を伴うウィリーでシャドウマンティスの溶解光線を打ち消して不破はウィリーの態勢のまま突進。シャドウマンティスを突き飛ばして積み上げられた箱やオイル缶の山へと叩き付けた。


「ギレエエエエ!!」

「ていっ! ウリャアアアアア!!」


 箱の山から飛び出してシャドウマンティスは鎌から放つ衝撃波で反撃。颯爽とバイクを飛び降りた不破は地面にランスを突き立てるとそれを軸にして回転し、稲妻をまとうキックをシャドウマンティスの顔に浴びせた。


「ギギギ! お、おのれえぇ〜〜」

「宍戸を利用したてめえだけは絶対に許さねえ……覚悟しろ!」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 一方、ゴーレムたちを追っていた健と葛城はエリアYの埠頭で潮風を体に受けながらゴーレムたちと戦っていた。


「ヒャハハハッ!」

「〜〜っ! トリックディバイド!!」


 銃を乱射して襲いかかるデルタゴーレムに対抗すべく、健は風の力を宿しエメラルドグリーンに染まったエーテルセイバーを携え疾走。その過程でなんと五人に分身したではないか。


「な、なに! 分身した、どれが本物だ」

「デルタ、本物は右から二番目……ダメだ間に合わないッ!!」


 瞬時に技を分析してどれが分身でどれが本物か見破ろうとしたデルタゴーレムに、カイゴーレムは右から二番目が本物であることを伝えようとするも遅かった。

 健は質量を持った四人の分身とともにジャンプからの突き下ろし攻撃をデルタゴーレムに浴びせコンテナに叩き付けた。


「くそ……」

「あなたの相手はこっちです!」

「ウリャアアアアア!」

「たぁっ! えい!」


 苦虫を噛み潰した様子のカイゴーレムはレイピアを片手に斬りかかってきた葛城を振り向きざまに左手に持ったランスで牽制。斬り合いをはじめた。


「グレネード!」

「なにい!」


 起き上がったデルタゴーレムは広げた腕から射出したグレネードを投げつけ、爆発させて健を追い詰めようとする。グレネードの威力はかなりのものだ。出来れば直撃は免れたい。だったら今はヤツが隙を見せるまで逃げるしかない!


「ヒャハハハハハハ!! 逃げろ逃げろ! 汚物は消毒だぁー!!」

「うわあああああああああああああああああああッ!?」


 ところがグレネードの爆発に巻き込まれ、健は大きくぶっ飛ばされた。コンテナにぶつかって地面に落下すると立ち上がり風の力で加速して一気にデルタゴーレムへ詰め寄った。


「この距離ならどうだ!」

「バカめ! グレネードはまだまだあるぜ!」

「待てッ! どこへ行くッ!」


 余裕綽々のデルタゴーレムは背中のブースターでスライド移動を行い健から離れると、グレネードをばらまきはじめた。「あいつなにをする気だ?」と、健は怪訝な顔をする。


「どうしたんだ。さてはマシンガンの撃ちすぎで頭まで蜂の巣になっちゃったか?」

「うわははははは! お前は実にバカだな。俺が何の考えもなくグレネードをばらまいたとでも思ったか?」

「なに?」

「落ち着いて周りを見てみろ」


 落ち着いて周りを見回せばなんと、健を取り囲むようにグレネードが撒かれていた。デルタゴーレムは何も考えずにグレネードを投擲したのではなく計算して投擲したのだ。粗暴な言動に惑わされがちだが彼はなかなか頭が切れる。そういう点を踏まえても彼は戦闘マシーンだと言えるだろう。


「少し早いが俺からのクリスマスプレゼントだ。受け取れ!」

「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――ッ!?」


 デルタゴーレムが指を鳴らすと同時にばら撒かれたグレネードが次々に爆発し爆風に煽られて健の体は上空へとぶっ飛んでいく。すぐさま頭からまっすぐに地面へと落下し、突き刺さるようにして倒れた。


「健さん!?」

「よそ見している場合か!」


 叫ぶ葛城にカイゴーレムが容赦なくランスを叩き付ける。横薙ぎに殴り飛ばされ一瞬怯むも、すぐに体勢を整え突きと斬撃からキックに繋げてカイゴーレムに反撃した。健に続いてこちらを狙ってきたデルタゴーレムの射撃をシールドで防ぎ、葛城は地面にレイピアを突き刺して地中からイバラを出して攻撃。ゴーレムたちを引き離し健に駆け寄った。


「健さん、しっかり!」

「う……ぼ、僕なら大丈夫だよ。葛城さん」


 葛城に揺り起こされた健は傷だらけだ。額から血を流し、頬や右肩、腕や足にも傷があった。葛城も健ほどひどくはないものの頬や額に傷を負っていた。肩や足も傷付いている。葛城は、大切な仲間である健が生きていたことに安堵の息を吐く。


「ふ、クズがクズ同士肩の寄せ合いか。涙が出るね」

「せめてもの手向けだ。一緒に仲良く地獄に落ちろ」


 二人を鼻で笑ったカイゴーレムとデルタゴーレムはとどめを刺してやろうと、ランスや大型銃を持って近付く。動力炉――デミスエンジンを直結させてからエネルギーを流し込んでパワーを最大限まで高めるとコンビネーション攻撃を仕掛けようとした。デミスエンジンとは、終焉の使徒の首領が優れた科学技術を持って作り上げた、暗黒エネルギーを動力とする悪魔の発明である。これをフル稼働させ暗黒エネルギーを解放することでデミスエンジンを組み込んだモンスターの出力はアップし能力が飛躍的に上昇するのだ。


「なんだかやばそうだ。ここは僕が盾になろう」

「健さん……」


 ――身の危険を感じ取った健は傷を押してでも葛城の前に立ち彼女の身代わりとなろうとする。タフネスとあきらめの悪さには自信がある。それを活かすならまさに今だ。健は盾に氷のオーブをセットし氷のバリアーを展開する準備をしていた。


「レールガン出力最大……発射準備OK!」

「俺たちの連携プレーを受けてみろ!」

「「デュアルオーダーブレイク!!」」


 カイゴーレムの右腕のレールガンから最大限までパワーを溜めた電撃光線が放たれ、更に彼の背中を飛び越えてデルタゴーレムが銃を乱射。それだけではなくショルダーキャノンや胸部の機関銃、膝に隠されていたミサイルも放たれ次々に健と葛城に襲いかかる。すさまじい大爆発に圧倒され二人は壁に衝突。ぶち抜いてそのまま倉庫の中へと入っていった。


「ふん。思い知ったか」

「まだ生体エネルギー反応が残っている。しぶといヤツらよ」


 ゴーレムたちも壁に開いた穴から倉庫の中に入り、まだ生きている健と葛城を始末するべく探し出す。一方の健と葛城は見つからないように息を殺して、健はうなだれながらも葛城を守ろうと彼女のそばについていた。両方ともに深い傷を負っていて危険な状態であり、今度ダメージを受けたら命を落としかねない。だが二人にはそれでも戦い抜かなくてはならない理由があるのだ。


「葛城さん、確か君は太陽の光さえ浴びれば体力が全快するんだよね?」

「はい。ですがあなたは……」

「僕が囮になってヤツらを引き付ける。君はその間に外に行って光合成を」

「……わかりましたわ」


 小声で話し合い、作戦を立てると二人は早速それを実行に移す。葛城はバラのシェイドと契約したエスパーだ。植物系である関係か太陽の光を浴びて光合成をすれば体力を瞬く間に回復できるのだ。よって作戦が成功すれば逆転も夢ではない。


「ここに隠れてるのは知ってるんだ。早く出てこい」

「誰かお探しかい!?」

「貴様、ひとりだけか? 女のほうはどうした」

「教えてやんない! 闇のオーブを返せ!」


 健がゴーレムたちを引き付けている間に葛城は倉庫を飛び出して光を浴びる。


「ちょうどいいやぁ! まずはオーブの力を引き出せるお前を優先して殺してやる!」

「そうと決まれば集中攻撃といこうぜ相棒!」

「おうよカイ!」


 放たれる鉄の雨や稲妻を、健は倉庫内を走りながら周りの地形――積み上げられたコンテナやクレーン、ハシゴなどをうまく使いながら避ける。とにかく避けて出来るだけ時間を稼ぐのだ。


「こちらも早く闇のオーブを主にお渡しせねばならんのだ。ゴキブリにはこの辺で消えてもらおう」

「死ね! お前は死ぬのだ!」


 飛び交う弾丸、電撃光線。カイゴーレムが放った電気信号で動く攻撃ビットも加わり健はますます窮地に立たされていく。それでも健はめげずに葛城を信じて――ゴーレムたちに突風を伴う斬撃を放った。


「カイゴーレムに電気は効かないから……よぉし!」


 健はエーテルセイバーにはめていた風のオーブと盾にはめていた氷のオーブと交換。周囲に凍てつく冷気がほとばしり健は氷の力を宿した蒼い剣を握ってゴーレムたちに斬りかかる。

 まず冷気を放って凍結させると連続攻撃をしかけ、粉砕する。動こうとするたび体の一部を凍らされ、ゴーレムたちは思い通りに動けない。そして――。



「ヴァイオレントブロッサム!」

「ぐわあああああぁぁぁ!!」


 地面の下から突き出した無数のイバラがゴーレムたちを襲う! ゴーレムたちは倉庫の屋根をぶち破り、埠頭へと叩き出された。


「葛城さん!」

「ありがとうございました。おかげで体力満タンでしてよ」


 うめくゴーレムたちの前で言葉を交わす健と葛城。だがゴーレムたちは自己修復システムを作動させ受けたダメージを回復させていく。恨み節でも言いたげな様子だ。


「これ以上長引いたら危険だわ。早めに片をつけましょう」

「覚悟はいいか!? カイ、デルタ!!」


 葛城が太陽光の力を得て体力が全快したことで形勢は逆転。この戦いもいよいよ佳境に入らんとしていた。

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