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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第16章 究極の選択!
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EPISODE303:凶刃が切り裂く

「……不破、お前、捜査のほうはどうなったんだ?」

犯人(ホシ)なら既に逮捕した。で、サーチャーに反応が出たからここまで来たのさ!」


 村上と宍戸に事情を簡潔に説明すると、不破は鋭い目付きでシャドウマンティスを睨む。


「さて。何が起きたかは知らないが、お前が斬夜だってことはわかるぜ。カマキリ野郎!」

「ギレェェェ! 斬夜だと? 誰それぇ? 知らないなあ!! 人違いじゃあないの~~ッ!」

「ごまかしても無駄だ、端っから怪しいヤツだとは思ってたさ! 今まで気配を消していたようだが殺気までは隠しきれなかったらしいな!」

「なにいーーっ!」


 不破はすばやい身のこなしで接近してきたシャドウマンティスの斬撃を弾きながら、相手の正体が斬夜であることを看破。攻撃が後方にいる村上と宍戸に及ばないようにして戦っていた。

 生き残った数人の戦闘班も不破の勇敢さに呼び掛けられたようにマシンガンで援護射撃を始めた。シャドウマンティスにはあまり効いておらず牽制にしかなっていないがそれでいい。


「オレの仲間には指一本触れさせねぇ!」

「そうは言うがな不破ァ! そいつらは最高機密をお前に話さず、あるいは最高機密を外部に漏らした連中だぞ。そんなクズどもに守る価値があると思うか!」

「なんだと……」

「もらったあァ!!」

「ぐわあああァァァッ!?」


 シャドウマンティスは事実を突き付けて不破に揺さぶりをかけ、回し蹴りを脇腹に叩き込んで吹っ飛ばす。村上と宍戸は思わず口を塞いだ。


「ヒャーッハハハ!! 何が仲間だ? 何か信頼だ? 惰弱(だじゃく)な! そんなものに何の価値がある。ひとりじゃ何も出来んクズどもが肩を寄せあったところで何が出来るというのだァ?」

「っ……」

「安易に他人を信用するからこうなるんだ。クズどもをかばわなければお前は余計なダメージを受けずに済んだと言うのに!」

「ぬあっ!!」


 起き上がったばかりの不破を鎌で切り裂き、柱に叩きつけて血を流させる。シャドウマンティスは、まるで実際のカマキリが人間並みに巨大化したような獰猛で残忍なハンターだ。両腕には凶刃を備えている上に悪知恵も働く。凶悪きわまりない。


「まったく、警察もヴァニティ・フェアもアマちゃんぞろいだ! まあ、おかげでやりやすかったがね!」

「なにい……そうか貴様、甲斐崎とやらの手下か!」

「今更知ったところで手遅れだ! いいか、他人とは利用するためにあるんだ。現にそこのメスブタも利用するだけ利用して捨ててやった。利用価値のなくなった他人など生ゴミだ、クズだ!」

「てめえこの野郎……生ゴミと同じだっていうのか!」

「友情だの、信頼だの、絆だの……ハッ、くだらない! 虫酸が走るね!!」


 不破の連続攻撃を受け止めて、シャドウマンティスは不破に鎌やキックをかまして更に痛め付ける。極めつけに胸を踏みつけた。


「フヒャハハハハハ!! そもそも高度な知性を持った生命体というのはな、打算で動くべきなんだ。一時のくだらない感情に振り回されるお前らはしょせん、知性に欠けた下等生物だぁ〜〜!!」

「うッ! ぬがあああぁぁぁ!!」


 狂気じみた笑いとともにシャドウマンティスは不破を踏みにじる。銃を向けようにもヤツには牽制にしかならない。宍戸たちには見ていることしか出来ないのだ。


「ヒャハハハハハ! ウヒャーッハハハハハハ!!」

「不破さんっ!」

「不破ァッ!」

「キヒヒヒ……し、死ねぇ!!」


 シャドウマンティスが鎌を振り下ろした、刹那、不破はとっさにランスで鎌を弾いた。


「な、なにいーー!?」

「おぉぉらあああァァッ!!」


 不破が繰り出した強烈な一撃がシャドウマンティスを吹っ飛ばし、積み上げられていた箱の山に激突。シャドウマンティスは苦悶する。


「不破さん!」

「不破……」

「人間、確かにひとりだけじゃあ何も出来ないかもな。けど、だからこそオレたちは互いを信じて支えあう。そして繋がっていく。そうやってオレたちはどこまでも強くなっていくんだ!」


 体勢を整えながら不破は強くなる理由を語る。


「お前が嘲笑うものの中にオレたちの強さや誇りがある。他人を利用することしか考えていないお前とは違うんだッ!!」

「フンッ……! 付け上がるなよ。自分がどういう状況におかれているかわかっているのか? いくらごたくを並べようが結果は同じ」


 不破の熱い叫びを、ドス黒く汚れきった心をしながら鼻で笑ったシャドウマンティスは右腕に力を溜めてから振るい――風車のごとく回転する円形の赤黒い衝撃波を放った。


「さっさと僕にズタズタにされてあの世に逝け! ブラッディウィンドミル!!」

「ぐわっ!」


 ブラッディウィンドミルを食らった不破は壁に向かって吹っ飛ばされるが、体勢を立て直して着地。


「そら、もう一発食らっちまえ! ブラッディウィンドミル!!」

「ッ!」


 シャドウマンティスの左腕から二発目のブラッディウィンドミルが放たれた。今度は加速して回避しシャドウマンティスに一撃を入れる。急ブレーキをかけ、宍戸と村上が攻撃されないように二人の近くへととんぼ返りした。


「ギギギギレェェェエッ!」

「っ!」


 しかしシャドウマンティスは突如として右腕を前に突き出して突進してきた。鎌を不破の肩に突き刺すと勢いに乗ってコンクリートの柱まで突っ込んでいき不破を柱に叩きつけた。衝撃で不破は血ヘドを吐き出す。


「不破ァァァ!?」

「不破さん!」


 不破の肩から鎌を引き抜くとシャドウマンティスは嫌味ったらしい笑みを浮かべる。鎌が抜かれた不破の肩からは血のしぶきが吹き出た。


「ハーッ、ハーッ……勝負はあったな不破ライ。お前はあの二人に攻撃が及ばないようにして戦っているんだろう。だからあまり離れられず攻めの姿勢に入りきれないのだぁ~~~~」

「くッ……」

「甘えなぁ~~~~。甘えんだよお~~~~。その甘さが命取りだってことがぁまだわからないのかぁぁぁ~~~~? ていッ!」

「うご!」

「ヒャハハハハハ……うげえ!?」


 柱に追い詰めた不破を、シャドウマンティスは執拗に蹴る。とどめに鎌を振り下ろそうとしたが腹を膝で蹴られ、悶えた。


「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」


 不破は目にも留まらぬ速さで連続突きを繰り出す。が、シャドウマンティスにことごとく弾かれた。


「なに僕に楯突いてやがるんだ、クソザルがあ!」

「ちぇいやああああーーーーッ!!」

「うううぅぅぅッ!?」


 だが、不破はわざとやみくもに連続突きを繰り出した。相手が油断した隙を突こうとしていたのだ。現に不破が振り上げたランスがシャドウマンティスにクリーンヒットした。

 打ち上げられたシャドウマンティスはそのまま天井にめり込み、すぐに地面に落下した。


「ウギギギ! 少しはやるな。だがその程度でこのシャドウマンティスに勝てると思うなよ」

「そっちこそ降参するなら今のうちだぜ!」

「ほざいてろぉーーッ!」


 シャドウマンティスは左腕を振るい赤い衝撃波を飛ばす。不破は横っ飛びで回避し、次に繰り出された溶解光線も身をそらしてかわした。

 ジュウウウッ! と、鉄骨が、床が溶けている。切れ味鋭い鎌はもちろんだがこの溶解光線も厄介な攻撃だ。不破は改めて用心するように心がけた。


「フヒャハハハハハ! なにビビってんだよぉぉぉぉ! さっきっからこの鎌が叫んでるんだ。切らせろ、キらせろ、KILLERせろってなぁぁああぁああああぁ〜〜〜〜!!」

「アブねえっ」


 シャドウマンティスから不破めがけていくつもの衝撃波が放たれた。打ち消し、あるいはかわしたりするがかわしきれずに一発膝に受けてしまう。血が吹き出し、膝から全身に激痛が伝わった。


「不破ぁぁぁぁ!!」

「不破さんッ!?」


 村上や宍戸、戦闘班メンバーの悲痛な叫びがフロア内に響く。シャドウマンティスは下劣に笑いながら鎌についた血を舌なめずりした。


「キヒヒヒヒヒヒヒヒ!! 貴様をなぶるのも正直もう飽きた。そろそろ闇に葬ってやるとしよう! ダークシュラウディング!」


 シャドウマンティスは複眼を光らせ、腕を交差してから口から黒い霧を吐き出した。不破の周囲が瞬く間に黒い霧に包まれていきやがて何も見えなくなった。


「な、なんだこれは……?」


 一面暗闇の中だ。不破の第六感(シックスセンス)が危険を察知する。――斬撃だ。あまりに早くてかわしきれない。一発だけではなく、次から次へと打撃と斬撃が襲いかかって不破をいたぶる。


「ヒャハハハハハ!! ウヒャーッハハハハハハ!! フヒャハハハハハ!!」

「うっ! ぐはっ! うくうっ!! ぬわあああああああぁ!?」


 狂気じみた高笑いとともに繰り出される怒涛の連続攻撃。暗闇に閉じ込められて迂闊に動けない不破が攻撃をかわしきれるはずがなく――いいようにいたぶられた。やがて黒い霧は晴れたが不破は傷だらけの状態で放り出され頭から地面に叩きつけられた。


「どわあああああっ」

「不破あっ!?」

「不破さん!」

「フヒャハハハハハ……!」


 笑いながら不破に近付くと腕を組んで彼を見下し、悦に浸る。優位に立っているためかシャドウマンティスは余裕をぶっこいていた。


「どうだ~~~~い、暗闇に閉じ込められた感想はよぉ~~~~?」

「き……きたねえぞ」

「けっこーけっこー大いにけっこー!」


 ダークシュラウディングによって発生した黒い霧に閉じ込められたものは身動きが取れなくなり一方的に攻撃を受け続ける。つまり黒い霧が消えるまでずっとシャドウマンティスによってズタズタに切り裂かれ続けるのだ。


「血だ! もっと血を流せ! 泣きわめけ! 苦しめ、もがけ! ヒャーッハッハッハッハッハ!!」


 他人を信じず利用することしか考えない卑劣なシャドウマンティスか、クールに振る舞いながらも強い正義感を持ち仲間との絆や信頼を重んじる不破か――。果たして、勝利の女神が微笑むのは。


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