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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第15章 湯煙と大地の石とビキニふたたび
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EPISODE274:男はアバレにアバレて


 ところ変わり和歌山のスパ。ペンスライダンを打ち破った健ら男性陣は休憩を挟んで自分たちを待っていた女性陣と無事合流し、待ちに待った温泉へと足を踏み入れんとしていた。


「ここの温泉は、種類が豊富なんですよ。露天風呂はもちろん足湯もありますし、水風呂もあります」

「へぇー! やっぱり相当デカいんだね」

「どこがですか?」

「へ?」


 このスパは相当デカい。そう言おうとしたのだが、案内役の葛城は自分の胸のことだと勘違いして困惑している。更に周囲から呆れた表情で見られているような――。咳き込んでから、健は「このスパはデカいなーって! そう思いました!」と言い返す。


「……とりあえず、温泉入りましょう? そこで日々の疲れを癒しましょうよ」

「そうそう、そうしようそうしよう!」


 そして、一行は温泉の入口に辿り着く。男湯と女湯、ふたてに別れて入っていき入浴。更衣室を抜けるとそこには大浴場があり、葛城が言っていた通り様々な風呂があった。女湯の方も男湯のほうと同じような設計になっており、ここに行ったことがある客からは「まるで鏡写しみたい」と評されている様子。

 露天風呂へ行きたかった男性陣だが、健と不破は以前南来栖(みなみくるす)島のホテルにあった露天風呂での苦い経験が脳裏をよぎったため敢えて室内の大風呂に入った。とはいえ、この大風呂の中には露天風呂に通じるガラス扉があるのだが。


「ふーっ! 一時はどうなることかと思いましたよ」

「オレだけ入れないんじゃないかってドキドキしたが、無事に入れてホッとしたよ」

「極楽、極楽」

「入ったからにはさっぱりしようぜ!」


 体が芯から温まり、日々の疲れが、日夜続いている戦いの疲れが癒されていく。やましい考えは払われ、溜め込んでいたストレスも消えて――。やはり温泉はいいものだ。健は縁側でくつろいで自分の近くに桶とタオルを置き、市村は奥でどっしりと座り込み、不破は頭にタオルを被せて伸びをする。


「混浴じゃないのが残念だ〜」

「だからってのぞいたりすんじゃねえぞ?」

「しませんって! そんなのぞき仙人みたいなこと!」

「いやするな。お前ならやりかねん!」

「ハハッ、言われたのォ〜東條はん!!」


 他の二人にからかわれた健は、「プイッ」と顔を背けてしかめっ面をする。もう二度とのぞきなんてやらない。しかし女湯が気になるのは事実――。健は壁際に耳を当てて様子を窺う。傍らに市村が泳いでやってきて、その流れで一緒に盗み聞きだ。ドキドキしながら耳を当てていると――。


「うわぁ……みんなでっかいなあ。それに比べてあたしったら」

「気にすることないですよー。あんまり大きすぎても肩が凝ってきちゃいますし」

「そうそう。わたしもこの姿だとときどき肩が重くなってくるし、胸も張ってきて――」

「うらやましい悩みだなぁ〜〜ッ」

「ちょ、何すんのッ!? わたしの揉んだってご利益はもらえないってば!!」


 ――ダメだ。興奮が止まらない。止められない。治まらない。最初はこらえていたが、やがて二人の我慢は限界に達し鼻の穴から真っ赤な噴水が上がった。


「ウワーッツ!? なんじゃこりゃあ!! 湯船が真っ赤にイイイイィィ!?」

「す、すみません。すぐこいつら下げますので。ほらさっさと上がれッ!」


 湯船が二人の大バカ者が噴き出した鼻血によって赤くなっていく。他に入浴していたものはみんな目を丸くして驚いている。かのアモールの町で起こった惨劇を二度と繰り返してはならない! 不破は大急ぎで健を湯船から引き上げ、クールダウンを試みる。


「と、とばりさんのおっぱいが揺れている……葛城さんのおっぱいがたわわに実っている! まりちゃんのおっぱいがあんなにも大きくなるとは予想外デス! アズサさんの金髪と美乳が眩しい! み、みゆきは可もなきゃ不可もない! アルヴィーのおっぱいは、やっぱりすんげええええええええェ!!」

「オメー公衆の面前でなに言ってんの!?」


 楽しみを邪魔されたからか、それとも脳内で激しく妄想しているにすぎないのか。健は完全に錯乱状態だ。その証拠に頭上で星が円を描いて回っている。急いで水風呂があるコーナーまで行って冷水を桶いっぱいに入れてきた不破は、それをぶっかけて健を無理矢理にでも黙らせる。


「ひどいわー、仕切りなんかいらんのにひどいわー」

「境界線越えてどうするつもりだ、このマヌケぇー!」


 にやついて(何故か)カメラ目線でピースをしていた市村をげんこつで黙らせ、不破は彼も引き上げる。――よかった。この場はなんとか抑えられた。


「騒がしいわね〜。東條くん、何かやらかしたのかな?」


 頭にタオルを巻き、壁際に腰かけているのは白峯だ。艶のある白い肌に琥珀色の瞳が映える。傍らにはお猪口を乗せたお盆が浮いている。誰かに入れてもらうつもりなのだろう。胸がある。


「大丈夫でしょう。向こうの問題は向こうで解決すると思いますし」


 いつもとほぼ変わらない格好で入っているのは葛城だ。至って冷静に、湯船に使って気持ち良さそうにしている。彼女も胸がある。


「まったく、欲望に忠実すぎるんだから……」


 先程みゆきから恵まれたものであることをうらやましがられてセクハラを受けたまり子は、ありえないほど長い髪をまとめたりせずにそのまま入浴していた。これだけ伸ばしていれば服を着ていなくとも大事なところを隠せるから安心だ。あと、やはり胸がある。アルヴィーよりはひとまわりほど小さい。


「男というのはそういう生き物だ。割り切らんとやってられぬ」


 縁側でタオルを体に巻いて、足だけを浸からせてほっこりしていたのは、女性陣でも屈指のグラマラスなスタイルの持ち主――アルヴィーだ。ため息混じりに、しかし不満どころか少しだけ嬉しそうに笑っていた。胸については言うまでもあるまい。


「くそう、おっぱい三巨頭めェ……」

「なんで、おっぱい四天王ちゃうの?」

「アズサさんなんにもわかってない! まり子ちゃん元々は小さかったからノーカンなのッ、あんなのニセ乳よニセ乳! 健くんを惑わすクモ女めェ〜〜」

「それ、言いすぎー……」


 体を洗いながら恵まれたものたちにひがんでいたのは、可もなく不可もない体型のみゆきだ。隣ではそれなりに均整が取れたスタイルをしたアズサが愚痴を聞いてやりながら怒りに震えているみゆきをなだめている。


「キャッ!」

「みゆきちゃん!?」


 突如怒れるみゆきの背中にシャワーの冷水がかけられた。振り返ればそこには誰もいない。まり子が念動力でシャワーを動かして冷水が出るように設定したのだ。


「フフッ、さっきの仕返し〜〜」

「もーっ!」


 男湯でトラブルが起きつつも、女湯は和気あいあいとしていて実に楽しそうだった。


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