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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第15章 湯煙と大地の石とビキニふたたび
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EPISODE270:まずはお着替え

 ――ある一台の車が道路を走っていた。山々の間に架けられた高速道路を抜け、車は長いトンネルを抜けて海に面した道へと飛び出す。そこは――和歌山だ。


「スパってどの辺かしらー? 東條くん、地図お願い」

「はーい。こっから先を右に曲がって北に行ったところにあるみたいですね。ほら、ここ」


 車を運転している白峯とばりに頼まれ、東條健は地図のどの辺りに行き先が載っているのかを調べる。発見したので、彼は白峯にその位置を指差して見せた。


「あとどのくらいかかるかの?」

「そうね。もう少しくらいかな」

「あと少しかー。楽しみだなあ」

「うんうん。冬なのに水着を着て泳げるなんて、最高じゃない?」


 膝丈まである、白銀色の髪を伸ばした女性――アルヴィーが白峯に訊ね、もう少しで着くと知った一同は大いに盛り上がる。スパとは鉱泉や鉱泉のある保養地のこと。そこにはウォータースライダー付きの大きな温水プールもあるため、みな待ち遠しく感じていた。


(ビキニ……見放題……うおおおおおお早く着いてくれえええええぇッ)


 とくに彼、東條健はそれが顕著だった。それほど女性の水着姿に飢えていたということだ、これも男の(サガ)である。誰も責められはしない。


「着いたわよー」


 そして健たちを乗せた車は、目的地であるスパに辿り着いた。ここは海に面したところに建てられていて、モダンで立派な外観が印象的だ。

 中には温泉と大型の温水プールがあり、地元の住民は夏場、雨が降って海水浴場で泳げなくなった際には、全員がここまできて泳ぐのだという。ちなみに温泉にも水着で浸かっていいそうだ。余談だがここを経営しているのは、葛城あずみの父・剛三が会長を務めている葛城コンツェルンである。


「おーっ、ここか!」

「早速入りましょ!」


 一同はスパの、その立派な外観を前に驚く。立て続けに自動ドアをくぐってロビーへと入っていく。そこでは健たちと遊ぶ約束をしていたものたちがくつろぎながら彼らが来るのを待っていた。

 バラ色のロングヘアーを三つ編みにしたスタイルのいい少女に、髪を黄褐色に染めた筋肉質な不破、ガールフレンドである逢坂アズサとおしゃべりをしている青い髪の陽気な市村――。みんな健にとってかけがえの無い仲間だ。


「おーいっ、お待たせー!」

「あっ!!」


 健から声をかけられ、バラ色の長い髪を一本の三つ編みに束ねた少女――葛城あずみが椅子から立ち上がって振り向く。次に葛城は微笑みながら、「ようこそいらっしゃいました!」と清々しい気持ちでお辞儀をする。


「葛城さん、ごめんね! ちょっと来るの遅かったかな」

「いえいえ、わたくしたちも来るのが早すぎましたわ」

「やーっと東條はん一行のご到着かい。わしら待ちくたびれたでー」

「オレなんかジム行って朝トレしたぐらいだ!」


 葛城に続いて、不破と市村がやっと到着した待ち人へ挨拶する。


「みなさん、お久しぶりー! 元気にしてはった?」

「アズサさん! こちらこそ!!」

「ウチな、みんなに会うのホンマに楽しみにしてたんよ。今日ここで会えてめっちゃ嬉しいわぁ♪」


 市村のガールフレンドである金髪の若い女性・アズサは健たちに会うのを心から楽しみにしていた。というのも最近は実家のお好み焼き屋が忙しくて、彼らとは長らく会っていなかったためだ。


「さてさて。これで全員集まりましたね?」

「何を言っとるんだ、私たちで最後ではないか」

「もしかしてまだ誰か来たりする?」

「いいえー、健さんたちが最後ですわ。では……着替えましょう」


 葛城のその一言を合図に、全員男女に別れて水着に着替えることになった。ちなみに更衣室を覗き見することは出来るが外からでないと見られないため難易度は高い。

 ――そしてここで大事なのは、野郎の裸ではない。華々しい女性陣がいかにして着替えをするのかだ。



 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 女子更衣室――。そこは広く、ロッカーもたくさん並んでいる。ものをなくさないように用心する必要がありそうだ。その更衣室の中で女性陣は、私服から水着に着替えていた。


「皆さん持ってきていらしたんですね。水着ならこちらで用意したものを使ってくださっても良かったんですが」

「ううん、それには及ばないわ」


 話をしながら着替える葛城と白峯。フェンシング部の部長である葛城はスポーツマンでもあるためか、競泳水着を着て泳ぐことにしていた。ぴったりサイズで、黒地に入った桃色のラインがおしゃれな雰囲気を醸し出している。その豊かな胸が窮屈そうに飛び出しているが、葛城はいたって平気だ。

 次に白峯は、薄紫のビキニに着替えその上にスイムウェアを羽織った。見た目麗しくも快活な彼女の魅力とセクシーさを最大限に引き出している最良のコーディネートだ。


「そういえばさ、あたしたちお金払わなくて良かったのかなー」

「今回は特別です。皆さんには何度も助けていただいてますから。それにお金だなんてとんでもない!」

「せやってさー。それより先どこ行こかな。温泉がええかな?」

「それもいいけど、あたしはプールがいいな」


 みゆきは以前の海水浴のときにも着てきたオレンジ色のワンピース水着を着て、おしゃれにかわいらしく決めていた。アズサは、フリフリが付いた緑色のビキニを着ていて実に楽しそうだ。髪の毛をまとめてポニーテールにしたりもしていた。


「……とりあえずこれで何とかしよう」


 一方で、この中で一番目のやり場に困るであろうアルヴィーは前日にオーダーメイドで作ってもらった黒ビキニを身に付けた。やはり、彼女は胸がある。なまじ胸が大きいために布の面積が足りない。だがそれは仕方のないことだ。恵まれたものなのだからむしろ誇るべきである。


「ふんっふんふーん♪」

「まり子、お主それ着れるのか?」


 アルヴィーの隣では、まり子が鼻歌混じりでパレオの付いたデザインのビキニを眺めていた。元々、もっときわどいものを着る予定であったがあえてこちらを選んだらしい。なぜきわどくしようと思ったのかというと以前は、あざといものを身に付けたからだ。


「着れる着れるー。だってね、こうしたら……」

「む……」


 まり子は顔に右手を被せると瞳を紫に光らせて髪の毛を広げ、妖しい微笑みとともに紫がかった黒いオーラを立ち上らせて服を脱ぎ捨てた。

 ――以下、黒いオーラが消えるまでの一瞬の出来事である。まり子の背丈は急激に伸びて、体型もちんちくりんなお子さまのそれからいろいろな意味で垂涎の的となるであろうナイスバディに変わっていた。髪は豊かに、胸も当然豊かに、腰はくびれて――。似合わないであろうと思われていたパレオとセットになったビキニもぴったり、お似合いだ。


「うっふん♪ これで男はいちころ……」

「「「「なっ!?」」」」


 一同、戦慄。見慣れているであろうアルヴィーやみゆきに白峯はともかく、アズサや葛城はとくに驚いていた。「すごい……モデルさんみたい」「あの小さな体のどこに……?」と、思わず口にするくらいだ。


「驚いた? フフッ!」

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