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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第14章 『光の矢』
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EPISODE266:急造! 共同戦線


 健とアルヴィー、ワイズファルコン。お互い敵同士である彼の前に、エスパーとシェイド……両者の敵であるゴーレム二体が姿を現した。一時休戦し、この突如として現れた刺客を手分けして力を合わせて倒す――。たったいま張られたこの場限りの共同戦線だ。


「虫ケラどもが粋がってやがる。急造のチームではオレたちには勝てないことを教えてやるよ!」


 三人を前にカイゴーレムは左手のランスを振り回し地面に突き立て、周囲に激しい稲妻を落として先制。一瞬動きが止まった隙を突いてデルタゴーレムは背部のブースターで空中へ舞い上がり左膝に隠し持った機銃を掃射。健は、「防げッ」と、盾に氷のオーブをセット。氷のバリアを張って降り注ぐ鉄の雨をしのいだ。


「いいですか、あいつらを片付けたら次はあなた方の番ですよ。そのときは容赦しませんから」

「こっちのセリフだ!」


 健がバリアを張っている横でいがみ合う、ワイズファルコンとアルヴィー。やがて機銃掃射が止んだので健はバリアを解除し、鷹梨は持ち前の神速でデルタゴーレムに急接近。二人から引き離した。


「そりゃあああぁーーーーッ」

「おりゃあっ!!」


 剣を振り上げて飛びかかってきた健をカイゴーレムはランスで叩き落とし、四つの目から光弾を放って爆破。立ち上る煙幕を突っ切って、健は炎のオーブを装填した剣で斬撃をカイゴーレムにお見舞いする。高熱からカイゴーレムのカメラアイの視界が少し乱れた。


「たあっ!」

「ぐぅぅぅおっ」


 よろめくカイゴーレムを狙い、両手を武骨な龍爪に変えたアルヴィーが背後から不意打ちをしかけてコンクリートの壁にぶつける。


「カイ!!」


 カイゴーレムがやられたことに気付いたデルタゴーレムは救援に駆け付けようとするが、ワイズファルコンに阻まれバイザーの下に苦虫を噛み潰した表情を浮かべる。


「どけっ!!」


 行く手を遮るワイズファルコンを左手の指から鉄鋼弾を連射して殺そうとするが、ワイズファルコンは翼で身を守り弾丸を弾く。


「ハッ!」

「どおおおッ」


 翼を大きく広げて、ワイズファルコンは鋭い突風を巻き起こしてデルタゴーレムを切り刻む。更に超スピードで空を飛びながら宙に放り出されたデルタゴーレムを再び切り刻んだ。偶然にも、デルタゴーレムはカイゴーレムと同じ場所に叩き落とされた。


「どうだッ」

「へへっ……まだだ、まだこんなもんではない」

「……ぜあああッ!!」


 だが二体は起き上がり、カイゴーレムは右腕のレールガンから電撃弾を放って反撃。更にデルタゴーレムはバイザーを展開させて、その下に隠された半月状のモノアイから破壊光線を射出して三人を吹き飛ばした。


「うわあああああっ!?」

「あ゛ああああああああッ!?」


 三人が吹っ飛ばされた先は橋とそのたもとにある川だ。シェイドと同じようにして隙間を通って瞬時に移動したカイとデルタは、薄ら笑いしながらそれぞれの得物を構える。破壊光線と電撃弾の波状攻撃にやられた健たちは傷だらけで、健は頭や頬の傷から血を流していた。無論アルヴィーやワイズファルコンも傷を負っていた。


「さっきはよくもやってくれたな……?」

「仕返しだ! 逆襲だ! お礼参りだ!!」


 それぞれ啖呵を切ると、カイゴーレムは背中から攻撃ビットを射出し、デルタゴーレムは銃を乱射して三人を足止めする。


「くっ」

減殺(めっさつ)!!」


 デルタゴーレムの左手が液体のように波打って大振りの剣に変形。隙を突いて健とアルヴィーに斬りかかり、よろめいたとけろにショルダーキャノンを放って爆破、転倒させる。


「む……!」

「――かかれッ!」


 カイゴーレムの号令とともに五体から電気信号が発せられ、先端が尖ったビットに攻撃指令が届いた。そしてビットは四方八方を囲み、電撃光線を放って健たちに襲いかかる。


「うわあああああ――――ッ!!」

「ぐっ……ああああぁ――――!!」


 響き渡る悲痛な叫び――。互角だと思われていた戦いは形勢が逆転し、ゴーレム二体の方へと傾いていた。


「愚かな虫ケラどもめが。ゴーレムをなめるなよ」

「くたばれぃ!」


 膝を突いている三人に迫るデルタゴーレムとカイゴーレム。カイゴーレムは唐突に腕を広げて、三人に背中を向ける。


「敵に背中を向けている場合ですか?」

「なにか勘違いしてないか? まあ、今に見ていろ」


 戦いにおいて敵に背中を向けるということは土下座などと同じく、本来は逃げるあるいは負けを認めるということだ。しかしカイゴーレムが行った行為はどれにも当てはまらない。その証拠に背中に加速用のブースターと何かのハッチらしきものがついていた。ハッチが開き、高出力のジェネレーターに電気エネルギーが収束していく――まさか、これは!


「死ね!」

「うわあああああっ!!」


 身構えるも時既に遅し。極太のレーザーが放たれ瞬く間に健を吹っ飛ばした。そう、奴の背中についていたのはレーザー砲だったのだ。柵や壁など簡単に破壊するほどの恐ろしい威力を誇っていた。


「ぐあああああああ〜〜〜〜っ!?」

「た……健!」


 極太レーザーで吹っ飛ばされた健は川に落ちて流された。放っておくわけにはいかない、助けに行かねば! アルヴィーは龍に姿を変えて健を助けに向かった。ワイズファルコンはひとり置いていかれた。


「チッ、逃がしたか!」

「だがまだターゲットがひとり残ってるぞ。鳥女、次は貴様だ!」


 二人を取り逃がしたメカ生命体二体が次に狙いを定めたのはワイズファルコンだ。彼女は手練れだが二人がかりならなんということはない。なぜなら俺たちは無敵のコンビだからだ! そう二体のメカ生命体は自負していた。


「くはははははははッ! 結局急造チームじゃ俺たちには勝てなかったというわけだ」

「ムリもないだろう。元々敵同士だったんだから」

「覚悟はいいか!? 鳥のお嬢ちゃん!!」

「ッ……」

「本命は逃がしたがこのまま帰るのももったいないからなぁ。せめて手土産のひとつくらいは欲しいね!」


 片腕を押さえて喘いでいるワイズファルコンを嘲りながら、それぞれの武器を携えたメカ生命体コンビはジリジリと詰め寄る。


「ひゃははは、とどめだぁーーーーッ!!」

「その首もらったあッ!!」


 ショルダーキャノンから黒ずんだ血の色をしたエネルギー弾が、レールガンから電撃弾が放たれた! もはやここまでか。ワイズファルコンは目を瞑り死を覚悟する。



 ――そのときだった。ワイズファルコンの眼前でレールガンの弾もショルダーキャノンの弾も急に止まった。それどころかカイゴーレムとデルタゴーレムも動かない。ワイズファルコンも動いていない。いや、そうなったのは彼らだけではない。周りの景色も動きが止まっていたのだ。まるで凍り付いたように。

 そして橋の隙間から、青と黒を基調とした体色の怪人が姿を現した。その怪人は引き締まっていながらも重厚な外見で、メタリックブルーの肉体の至るところに水色のラインが入っている。鋭利な刃物のような目はこれまた水色の輝きを放っており、ギザギザした口には鋭い歯牙が並んでいてこれだけでもかなりの威圧感があった。また、全体的な容貌は甲殻類に似た特徴を持っており、頭部には悪魔的な四本の角が、顔の横の耳に当たる部分にはロブスターの触角が、肩や胸部にはカブトガニがまるごと一匹貼り付いたような見た目のプロテクターが、両手にはアノマロカリスの目とキバを彷彿させるパーツがついていて、両足のブーツはロブスターの背中を思わせる外見、等々――ところどころにその意匠が見られた。分かりやすくいえば、この怪人は甲殻類のキメラだ。


「フンッ」


 謎の紺碧のシェイドは、ゆっくりとワイズファルコンの前に歩み寄るとレールガンの弾とショルダーキャノンの弾に腕を振って攻撃し方向を変えた。そしてワイズファルコンを抱き抱え、右手で指をパチンと鳴らし――速やかに姿を消した。当然、紺碧のシェイドによって軌道を変えられた弾はカイゴーレムとデルタゴーレムに向かい爆発した。機械でありながら生々しい悲鳴を上げて二体は吹っ飛ぶ。


「な……なんだったんだ? 鳥女が急にいなくなったかと思ったら……」

「わからん。だがおそらく誰かが時間を止めるようなことをしたんだ。でなきゃ納得が行かん!」


 頭を痛そうに押さえながら二体は受けた傷を自己修復機能で再生させる。これによって視界の乱れも焼け焦げた痕も、すべて自力で治すことが出来た。


「それより東條健とアルビノドラグーンだ! やつらの居場所を特定して抹殺しなくては……」


 体内に搭載されたレーダーで、デルタゴーレムはターゲット二人を探そうとする。しかし二人の生体エネルギー反応は感知できなかった。


「おかしい、虫ケラどもの反応がないぞ。まだ近くにいるはずなんだが」

「故障じゃないのか? お前のレーダーはオレより少し古いからな。さっきの戦闘で受けたダメージを回復しきれてないんだろう。オレが代わりに探してやる」


 カイゴーレムはデルタに代わって最新式のレーダーで健とアルヴィーの生体エネルギーを探る。だが範囲内にエネルギー反応はなかった。レーダーの範囲内から二人の生体エネルギー反応が消失したのだ。


「……ターゲット、範囲内より消失。時間の無駄だから帰って報告した方がいいんだとよ」

「やはりか! くそぅ、コンディションさえ万全なら……」


 ターゲットはこの近くにはいない。これ以上は時間の無駄だ。二体は仕方なく、地面の亀裂に溶けるように消えて去っていった。


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