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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第14章 『光の矢』
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EPISODE250:緊・急・会・議


 都内、とある一流企業の高層ビル。その最上階にある社長室にて、メガネをかけた秘書の女性が社長を務める若い男性の前に膝を突いて何かを報告していた。


「なに、『白き光』だと! クラークめ、この俺にさえ隠していたというのか……」

「それだけではございません。クラークさんが捕らえていた『白き光』がアルビノドラグーンの体に宿り、その姿を黄金色へと変えました」

「……まさか、黄金龍か!? やはり奴がそうだったのだな、忌々しい!」


 いつもは冷徹でいたってクールな社長――甲斐崎が苦い顔を浮かべる。必要とあれば部下を切り捨てる男ではあるが、彼なりに仲間のことを思っていたということだ。


「クラークさんは黄金龍によって消し飛ばされ、その後……東條(たける)が持つ剣と盾が『白き光』の力で形を変えました」

「恐らく、それは帝王の剣(エンペラーソード)月鏡の盾(ミラーシールド)……ヤツにあれを持つ資格があろうとはな」


 今まで見くびってきた相手は、あろうことか伝説の武具を手にしていた。更に幹部をひとり失ったと来れば、冷静な彼でも心の底から怒りが沸き上がるというもの。甲斐崎は右手を握りしめ、ぷるぷると震わせた。


「鷹梨!」

「はっ」

「今後の方針を決めるために、緊急で会議を開く。至急幹部と社員を集めろ! いいな!?」

「承知しましたっ」


 甲斐崎が鷹梨に命ずる。鷹梨は社長室を出た。甲斐崎もまた、テレポートらしき力で姿を消した。



 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 雷鳴とどろく岩山、そこに建てられた機械仕掛けの古城――その内部にある会議場で社長・甲斐崎とその配下のものたちが会議を行っていた。入口には白い鎧で身を固めたカブトムシ型のシェイドと、黒い鎧で身を守っているクワガタムシ型のシェイドが立っている。彼らはビートロンとスタグロンといい、甲斐崎の身辺を警護する近衛兵――いわば専属のボディーガードのような存在だ。


「伝説の黄金龍があの白龍(アルビノドラグーン)と同一の存在だったというのは本当ですか!?」

「ああ、にわかには信じがたいだろうが事実だ」

「しかも帝王の剣を東條が持っているときた。なぜこうも嫌な予感ばかり当たるのだ……クラーク、なぜ『白き光』を持っていたことを話してくれなかったんだぁ」


 やはりというか、白龍ことアルヴィーが黄金龍だったということを知った幹部たちはかなり驚いていた。大柄で軍服を着たヴォルフガングは苦虫を噛み潰した表情をして拳を握りしめ、包帯で顔を覆った辰巳は頭を抱えまたも仲間を失った無念から怒りに震えていた。あんなに卑劣な輩でも彼らにとっては大切な仲間だったのである。


「……お気持ちはわかります。でも、今は嘆いている場合ではありません」

「そうだ。その怒りと憎悪は別のことに活かすべきではないのか?」

「重々承知しております」


 煮えたぎっている自分を落ち着かせ、甲斐崎の問いに答える辰巳。ヴォルフガングも深刻な顔をしながらも立ち直り、服装のたるみを直す。


「辰巳、あれから作戦のほうは立てられたのか?」

「はっ。人間のライフラインを断つことでございます」

「ライフラインを断つ?」

「人間にとって、いまや電気は生活する上で必要不可欠なエネルギーです。そこで各地の発電所に攻撃をしかけることを思い付きましてね」

「まずは東京を、その次は関西の都市を襲撃する予定です。いくらエスパーといえども人間ですからな。様々な用途に使う電気が無くなれば、連中はたちまち混乱に陥るでしょう」

「私もヴォルフガングも、なぜ今までこんな簡単なことを思い付けなかったのか不思議に思っております」


 彼らの狙いは街を停電させ、混乱に陥った人々に襲いかかることだ。停電させれば電車は止まり、テレビやパソコンは使えなくなる。電話で助けを求めることも出来なくなり、他にも様々な設備が使えなくなってしまう。なにゆえ彼らは、こんなにも恐ろしいことを平然とした顔で思い付くのだろうか――。


「ふっ、いいアイディアだな。その作戦はお前たちだけで行うのか?」

「いえ、我が部下の中でも最強の戦士、モグドリラーを辰巳のもとにつけるつもりです」

「……よろしい。今回の作戦、必ずや成功させろ!」

「「ははぁっ!!」」


 作戦が承認され、辰巳とヴォルフガングは敬礼して意気込む。


「鷹梨、君はどうする?」


 辰巳が真剣な顔でライフライン断然作戦の内容を聞いていた鷹梨に問うた。


「私も戦いたいと思っています。戦死したクラークさんの分も含めて」

「それは頼もしい! お前ほどの実力者が前線に立てば我々も安泰だ」

「ああ、並の連中では君には到底かなわないだろうしな」

「社長、どうか私も前線に立たせてください」


 クラークの分も働くため、自分が前線に赴いてもいいように鷹梨が甲斐崎に頼み込む。しばし考えた末、甲斐崎は「いいだろう」と許可を出した。


「万が一、辰巳たちが関東の都市を襲っているときに関西からエスパーが駆けつけてきたら厄介だ。鷹梨、お前は関西にいるエスパーを叩き潰せ」

「かしこまりました!」


 ――これで鷹梨が前線に立つことが決定した。今まで秘書として、おもに事務の仕事をこなしてきた彼女の実力はいかほどなのだろう。


「栄光を謳歌し平和を貪っている奴らに思い知らせてやるのだ。地上を制するにふさわしいのは我らシェイドだということをな!」


 人類を駆逐し、あるいは奴隷にして地上を支配しようと企むヴァニティ・フェアの邪悪な作戦が、新たに始まろうとしていた。

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