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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第13章 白き光は誰の手に!?
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EPISODE249:すべてを振り切る閃光の刃


 Φゴーレムが、みたび自分の命を狙い殺そうとしている。健は長剣を抜いて両手でしっかりと握りしめ、気合いをこめる。


「ここは危険だ、みんな下がってくれ!」

「わかった、みゆき殿は任せろ!」


 他のものをうしろに下がらせて、健は剣の柄に雷のオーブをセット。盾には風のオーブをセットし、万全の態勢で唸っているΦゴーレムに接近する。

 Φゴーレムは全身に張り巡らせたコードを触手のように伸ばして健に突き刺そうとするが、健はひらりと身をかわす。Φゴーレムは右腕を大剣に変え唸り声を上げて突進したが、健は風の力を付加した盾で攻撃を弾き返し突風を発生させてΦゴーレムを吹っ飛ばす。


「行くぞぉぉぉッ!!」


 雷の力を宿した金色の刀身に青い稲妻がほとばしる。長剣を天に掲げ刃に雷を落とすと、健はΦゴーレムめがけて跳躍――そのまま勢いよく長剣を振った。


「ライトニングフラッシュ!!」

「グオオオオオオッ」


 Φゴーレムは大爆発を起こし、炎上。だが燃え上がる炎の中で目を光らせて、険しい表情の健に再び狙いを定めゆっくりと歩み寄る。体内に内蔵された自己修復装置を起動させ健から受けたダメージを回復してしまったのだ。


「くそッ、やっぱりダメか……」

「死ヌガイイ……許サレザル モノヨ」


 緊迫する健へ、Φゴーレムは左手から電撃を放ちしびれさせる。更に悲鳴を上げて苦しむ健を大剣で斬りつけてぶっ飛ばした。健は頭からまっ逆さまに落下して顔から地面に叩きつけられた。


「た……健くん!?」


 みゆきが悲鳴を上げた。血を流して、うめき声を上げながらも健は立ち上がり歯を食い縛る。


「うおおおおおおオオオッ!!」

「グオッ!」

「うわあああああッ!!」


 再び斬りかかるが寸前で大剣を叩きつけられ、健は吹っ飛ばされる。「タフさなら、こっちも負けてないぞ」と、強がりながら立ち上がった。


「どうしたらいいの? 必殺技が効かないんじゃ、倒しようが……」

「ふむ、どうやらあれを使うしか無いようだの」


 「あれって?」と、まり子が意味深に呟いたアルヴィーに訊ねる。アルヴィーは右手を握りしめて力をこめると、「健、受け取れッ!」と力いっぱいそれを投げた。健は両手でそれをしっかりと受け取る。――『白き光』だ。白金色の美しい輝きは無垢な天使のようで、見るものの心を清める。力を与えたためかアルヴィーの髪と眼の色はいつもの色に戻った。


「これは……!」

「健、今こそ光の力を使うときだ。エーテルセイバーに光のオーブをセットするのだ!」

「だ、だけど……」


 過ぎた力を手にした人間は変わってしまうことは、健もアルヴィーもよく知っていた。健が受け取った光のオーブをすぐに使えなかったのは、自身も力に呑まれてしまうのでは……という恐れを抱いていたからだ。

 現にこの光のオーブを無理矢理体内に埋め込んだファンタスマゴリアは手に入れた強さと引き換えに凶悪な姿へと変貌した。伝承の時代では、行き過ぎた力を手にした英雄が暴君へと変わってしまった。ともなれば――なおさら使うわけにはいかない。


「嫌だ、こんなの使えないよ! 僕は力に溺れたりなんかしたくない!」

「今になって何をためらっておる。それを使え――、使わなければ道は開けぬぞ!」

「そうよ、忘れちゃったの? 白峯さんから言われたこと!」

「!」


 みゆきの言葉を聞いた健は大事な何かに気付く。白峯から言われた「これまで通りに戦えばいい」という言葉を思い出すとともに。


「グオッ!」

「ッ!」


 振りかざされた大剣を盾で弾いてΦゴーレムをはね除けると、健は左手に握りしめた光のオーブをジッと見つめる。

 ――そうだ。オーブはお守りなんかじゃない。戦うための力だ。破壊するための力でもない。人々を守るために使うべき力だ。何を迷っている? 今は戦わなくてはならないときだ。自分のために、人のために、



 ――未来のために!



「わかったよ。僕、もう迷わない。僕は僕の道を切り開く!」

「健、よく言った!」


 迷いを振り切り健はエーテルセイバーの柄に光のオーブをはめる。


「きゃっ!?」


 瞬く間に刀身が白く輝き出し、辺りに白い閃光がほとばしる。剣と盾から身を引き裂かんばかりの力が沸き出して健は激痛から悲痛な叫びを上げる。激しい閃光からみゆきとまり子が身を守るなかでアルヴィーは眉ひとつ動かさず、激痛に耐える健を見守っていた。


「……これは!?」


 閃光が収まったそのとき、エーテルセイバーは形を変えていた。白と金色を基調とした、美しい装飾が施された両刃の長剣に。神々しささえ感じさせるその剣からは力がモコモコと沸き上がり、それだけではなく優しさや暖かさも感じられた。――これが帝王の剣(エンペラーソード)だ。

 更に盾は龍の頭を模した形から、表面が鏡のように磨き上げられこれまた美しい輝きを放つものへと変化していた。白銀色のその盾には三日月の紋章が刻まれている――。これぞ月鏡の盾(ミラーシールド)だ。


「あれぞまさしく帝王の剣と月鏡の盾……健、あとは何をすればいいかわかるな?」

「ああっ!」


 真の力を解き放った武具を持ち、健は起き上がったΦゴーレムを斬りつける。何度も斬って、斬って、斬りまくり、突進して腹を突き刺して吹っ飛ばした。ビルの壁に衝突したΦゴーレムはそのままめり込んだ。


「ガ……ガ……」

「よくも散々つけ回してくれたな!!」


 起き上がったΦゴーレムは電子頭脳に異常を来たし、正常な動きが出来なくなっていた。構わず健はΦゴーレムへ怒涛の勢いで連続攻撃をしかけ、Φゴーレムを追い詰めていく。


「オマエハ……許サレザル……」

「でえええいッ!!」


 大剣を振りかぶったΦゴーレムだが健は攻撃を弾き返し大剣をバターの如くやすやすと切り裂く。大剣を折られたΦゴーレムは左手から電撃を放つが、健は月鏡の盾で攻撃を反射。逆にΦゴーレムをしびれさせた。


「健くん、すごい……! あれが帝王の剣の力なの?」

「いや違う……紛れもなくあやつ自身の力だ!」

「すごい気迫だわ。いける……!」


 健が不死身の敵に対して果敢に挑んでいるなかでみゆきたちはあまりにも圧倒的な力の差に驚いていた。彼にこれほどの力を与えたのは他でもない、人々が抱く愛と勇気、そして希望だ。思いは強さへ変えられるのだ。己が持つ力を正しいことに使うと約束できるのなら。


「はあああああああッ!」

「ウゴオオオォォォッ!!」


 連続で斬りつけた末にパンチを浴びせて、健はΦゴーレムを大きく吹っ飛ばす。Φゴーレムの体は道端に積み上げられていた箱の山に勢いよく突っ込んだ。腰を深く落として雄叫びを上げ、健は全身に力をみなぎらせていく。


「こんな鉄クズ早いとこブッ壊して僕は家に帰る! そして、いつもどおりゆったりとした暮らしに戻るんだああああああァァァッ!!」


 健の激しい闘志に共鳴した帝王の剣の刃に光が宿る。気合いを溜めてから、健は怯んだΦゴーレムめがけて全速力で突進。


「破邪閃光斬りッ!!」

「グオオオオオオ!!」


 そして全力で剣を振るいΦゴーレムをぶった切った。その衝撃でΦゴーレムの体内に内蔵された自己修復装置は破壊され、ダメージを修復しきれなくなったΦゴーレムは「ダ、ダメージコントロール不能……グオオオオオオッ!!」と、火花を撒き散らしながら大爆発した。回復しきれないほどの絶大なダメージを与え、さらに相手の能力を封印する――それが破邪閃光斬りという技だ。


「やったぁ!」

「すごくかっこよかったわ、変なロボットを吹っ飛ばしちゃうなんて!!」

「うむ、よくやった! それでこそ健だ!」


 健を執拗に追い詰めた不死身の追跡者はとうとう息絶えた。うしろに下がっていた三人は大いに喜び、健もガッツポーズをとって「ぃよっしゃあああああああああッ!! ざまーみろっ!!」とはしゃいだ。だが直後、健の体は一瞬唐突にふらついた。


「健!?」

「ちょ、大丈夫?」


 健を心配した三人が駆け寄って介抱する。帝王の剣を振るい必殺技を放った反動か、健は剣を杖がわりにして立っているのがやっとの状態だ。無理もないだろう、まだ使いはじめたばかりなのだから。


「だ、大丈夫。こんなのアルヴィーが受けた傷に比べたら大したことないよ」

「またまた〜、体壊しても知らないからね?」

「気を付けるってばー」


 みゆきから心配された健が笑う。帝王の剣から光のオーブが外れて、その力は眠りについてエーテルセイバーに戻った。光のオーブは無論、アルヴィーの体に戻った。


「じゃ、帰ろっか」

「そうだなっ!」


 ――アルヴィーが無事に戻り、一連の騒動は幕を閉じ平和が訪れた。明日からは、全員いつもどおりの暮らしに戻れるだろう。しかし――新たな戦いの火種はすでに蒔かれつつあった。


「……」


 夕焼けの街並みをビルの上から見下ろすひとりの女怪人。鋭い目を光らせた鳥の意匠がある仮面で目元が隠れていて顔は異様なほど白く、青紫に塗られた唇が目立つ。両手両足に鋭いハヤブサの爪を生やし、人間に近い容姿でハイレグを着ている。異形のものながら凛々しく美しい雰囲気を漂わせていた。一部始終を見ていたその女は背中から生やした翼を羽ばたかせ、雲の隙間へと姿を消した。

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