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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第13章 白き光は誰の手に!?
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EPISODE245:太陽の輝きは悪しき者を焼き尽くす

 『白き光』を自身の体内に埋め込んで、ファンタスマゴリアは大幅なパワーアップを果たした。持て余したその力を電撃として放出し周囲を攻撃する。


「うわァァァッ!」

「ンフフフフフ……そぉりゃッ!!」


 しびれさせた直後に肥大化した左腕で二人を薙ぎ払い、更に健を掴んで柱へと叩きつける。凄まじい怪力で柱は粉砕され健は頭から地面に落下。突き刺さってから倒れた。


「ヤバい、ヤバすぎる……これが『白き光』の力!?」


 あれほどの大技を出した直後だ、健は反動による疲弊から体がうまく動かないでいた。そこに大打撃を受けたものだからなおさら堪えたのだ。白峯からもらったセーフティブレスという腕輪――その力と日々の特訓によって負担を軽減できたとはいえ、やはり大技を出すリスクは大きい。


「えらいこっちゃで。こりゃあ、大技出すんやなかったな……」

「……」


 市村が健に寄り添いパワーアップしたファンタスマゴリアへ銃口を向ける。


「虫ケラが虫ケラ同士でかばい合いか? やめておけ、自分の命を無駄にするだけだぞ」


 嘲笑いながら二人に近付くファンタスマゴリア。二人に杖を向けて、その体を宙に浮かせた。――念動力だ。念動力を会得しそれを使ったのだ。


「そう、こんな風になァ〜〜!!」

「市村さん、ウワッ!」


 ファンタスマゴリアの念動力で宙に浮き上がった二人の体が互いにぶつかって地面に落下。「ファハハハハハ!! すばらしい能力だ!!」と、ファンタスマゴリアは新たな力を得たことで悦に入る。


「おい、立てるか?」

「はい、なんとか」

「あいつに攻撃できそうか?」

「とりあえず……力の限り!」

「よっしゃ、ほな行こか!」


 反動がなくなって、健はようやく動けるようになった。もっと鍛えておくべきだった……と悔やみつつも、余裕の表情で佇むファンタスマゴリアに助走をつけて飛び上がってから斬りかかる。が、杖で攻撃を弾かれてしまった。


「KUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!」

「っ!」


 怯んだ隙を突いてファンタスマゴリアは口から鬼火を吐き出して健を吹っ飛ばす。


「健ッ!」

「このエセ神父!!」


 アルヴィーの悲痛な叫びが教会に響く。その中で市村はブロックバスターを構えて、走りながら敵を撃つ。


「フン……」

「食らえッ!」


 接近した市村はファンタスマゴリアにハイキックをかましそこからブロックバスターで殴って、更にみぞおちに当たる部位を左手で突くが――相手は余裕を崩さない。少なくとも虚勢ではない。超パワーを得たことで自信過剰になっているのだ。


「無駄骨、無駄骨……今の私は無敵だ! 貴様らの攻撃など通じぬわ!」

「なん……やて!?」


 攻撃は一切通じないという敵の言葉に健と市村、そしてアルヴィーに戦慄が走る。いくらあがいても無駄、ここで死ぬ運命だと――そういうことなのか。


「ファッファッファッ! 死ねぃ!!」

「のああああああーーッ!?」


 杖で市村を振り払い、目から熱線を発して爆破。市村はまたも地面に叩きつける。


「ファンタスマゴリア……きっさまアアアアアァーーーー!!」

「バカめ。何をしても無駄だと言うたろうが!」


 怒りの叫びを上げて健はファンタスマゴリアへ突進。斬りかかるが通じず、それどころか瞬間的に転移して健は翻弄される。


「瞬間移動だと!?」

「幻術を操る私からすれば、このくらい朝飯前なのだぁ。ファハハハハハ!!」

「くそっ……」


 連続で瞬間移動を繰り返し翻弄するだけ翻弄した挙句、ファンタスマゴリアは杖で健を殴る。瞬間移動をしながら、何度も。


「キエェーーーー!!」

「ぐわあああああああぁぁぁぁ!!」


 とどめに健を氷の棺に閉じ込め、杖で何度も叩いて粉砕。吹っ飛ばし椅子に叩きつけた。


「ううっ……」


 呼吸を乱して血を流し、床に突っ伏す健。片目だけ開いた状態で周りを見渡す。あったのは、飛び散った自分の血と戦闘中に散らかった瓦礫、自分と同じく倒れかかってうめいている市村と未だに捕まった状態でうなだれているアルヴィー。相手に攻撃が通じないからといって、このままなにもしないでいていいのか。何とかして一矢報いねば――。

 そのとき、健は左腕にはめていた金色の装飾が施されたライトブルーの腕輪に注目する。日々シェイドと戦い続け無茶をしがちな自分に白峯がくれたセーフティブレスだ。必殺技を繰り出す際にかかる負担を軽減し、ダメージを受けた際にはそれをエネルギーに変換し、放出すれば回復や攻撃に転じることが出来るという代物だ。


(そうだ、これがあった。うまく使えば……)



 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 一方、教会の外では葛城とまり子、ヘビーロープ率いる雑兵たちとの戦いがなおも続いていた。実力や経験などの関係上、前者のほうが遥かに有利だ。しかし場合によっては一気に崩されることもありえる。


「ニョロォー、こいつら手がつけらんねえ」

「グララ……」

「観念なさい!」

「いい加減、負けを認めたら?」


 たじろぎ、悔しがるヘビーロープ。相手はどちらも非常に強い上、しかも片方は不死身だ。正攻法では敵わないだろう。だがヘビーロープはあることを思いつき、汚ならしくにやける。


「ニョロー、いいこと思いついちゃったー!!」

「?」


 汚ならしく笑うヘビーロープに対して、身構える葛城とまり子。


「敵は二人、片方は不死身だ。不死身なヤツをいくら攻撃したって何も意味はねえ。だが! もう片方はそうじゃねえ!! お前ら、ピンクのほうに集中砲火だあ!! プップルルルルァァァァ!!」

「グラッ!」


 舌を巻きながら奇声を発し、ヘビーロープは手下たちに号令をかける。銃を持ったグラスケルトンたちが葛城めがけ一斉にビームを放った。


「しまった、あずみさん!?」

「きゃああああああああああああああああッ!?」


 このままではやられてしまう。助けに行こうとしたまり子にもビームが撃たれ、火花が上がる。増援に行く手を阻まれ、はね除けるもその最中に葛城は哀れ、蜂の巣にされてしまった――。


「あ……あずみさあああああああん!?」

「ニョーロニョロニョロニョロ、ざまあねえなぁ!!」


 下卑た笑いがこだまする。知り合ったばかりの仲間を失った怒りと哀しみが沸き上がり――まり子の顔に紋様が浮かび上がる。額には、サイコロの四の目を彷彿させるもの。左目には放射状の蜘蛛の巣の形。彼女の感情が極限まで昂ったときのみ、この紋様が表れるのだ。


「ニョロ?」

「……許さない」

「や、やべ……だ、だがお前ひとりに何が出来る!」

「よくもあずみさんを……許さない!」

「や、ヤれるもんならヤってみろ〜〜!!」


 身の危険を感じても虚勢を張るヘビーロープの姿はどうしようもなく矮小で、威厳もへったくれもない。面では笑っていても腹では怯えきっているのが目に見えてわかるほどだ。



「――ヴァイオレントブロッサムッ!!」


「ニョッニョロ!?」

「この声は!」


 そのときだった。死んだはずの葛城の声が聴こえると、おびただしい数の巨大な草のトゲが飛び出してグラスケルトンたちを次から次へと串刺しにして蹴散らしたのだ。ベクトルは違うが驚くヘビーロープとまり子の前に、煙の中から――葛城が姿を現した。服以外無傷で。まり子は、「よかった、生きてたのね」と表情を穏やかにする。同時に顔から紋様が消えた。


「さっきは良くも……やってくれましたね!」

「き、貴様ぁ〜、なぜ生きてるゥ!?」

「光合成よ」

「なにぃ!?」

「この空の上で太陽が輝いている限り……わたくしは何度でも立ち上がるわ。あなたのような卑劣な輩には負けませんッ!!」


 葛城が契約したシェイドは、バラの意匠がある女騎士の姿をしたクリスタローズだ。上級クラスであるためか知能・戦闘力ともに非常に高く葛城にとって大切なパートナーである。クリスタローズと契約したことで葛城は光合成を行い、太陽の光を浴びて自身の回復と各能力のパワーアップを行うことが可能だ。回復能力は凄まじいもので、どんなに深い傷を負っても太陽の光さえあればたちまち全快してしまうのだ。


「おのれェェェェェ!! 今度こそ念入りにブチ殺してやるゥゥゥ!!」


 ヘビーロープは激しく憤ってグラスケルトンたちを召喚。葛城の息の根を止めようと動き出す。


「まり子さん、わたくしは太陽の光を集めます。あなたは時間稼ぎをしていただけませんか!」

「ええ、任せといて!」


 葛城が左手を天にかざして光を吸収する。まり子は時間稼ぎを行うため、グラスケルトンたちを迎え撃つことにする。丸腰で立っているように見えて実は違う。……『罠』を張っていたのだ。


「グラァァァァ!」

「かかったわね、ストレインウェブ!!」


 まり子は両手を地面に打ち付け周囲に放射状の蜘蛛の巣の形をした青紫の紋様を発生させる。同じ形に毒液の柱が噴出し、彼女に近付いた雑兵たちは一網打尽にされ砕け散った。


「あずみさん、そっちはどう?」

「準備オッケーです、ありがとうございました!」

「どうも!」

「プルッシャアアアアアアアア!!」


 葛城は準備を終えた。彼女の狙いは、奇声を上げて突進するヘビーロープ。


「太陽の輝きを知りなさい! ソーラーフレア――――ッ!!」


 葛城の左手はまばゆいほどの輝きを放っていた。凛とした様子でその掌から――彼女は極太のレーザーを放った。名付けてソーラーフレアだ。悪しきものを焼き尽くしその魂を浄化する――裁きの光なのだ。


「ニョロオオオオオッあっぢいいいいいいいイイイィィ!!」


 レーザーに焼き尽くされて、ヘビーロープは塵芥となった。やがて遠くまで届いて地面を吹き飛ばすほどの爆発を巻き起こした。――小物は倒した、これで残るは大将ひとりだ。


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