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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第13章 白き光は誰の手に!?
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EPISODE242:気高きバラの騎士!


 シェイドサーチャーが示し出した方角を頼りに、健たちは群がるシェイドたちを蹴散らしながら町外れにある教会――ファンタスマゴリアのアジトへと向かっていた。


「反応がさっきよりだんだん大きくなってる。この先だなっ!」


 工事現場を抜けて道路を経由し、獣道から森の中へ。サーチャーの音はだんだん大きくなっている、つまり近づいているということだ。


「グラーッ!」

「どけっ!」


 道の脇から斧を持って飛びかかってきたグラスケルトンを切り払い消滅させると、更に奥へ奥へと走っていく。


「あっ! ……まり子ちゃん、アレかな!?」

「アレよ、あの教会! まだあったのね」

「ちゅうことはあの中にファンタグレープが隠れとるわけやな!」

「ファンタスマゴリアですっ!」


 やがて古びた教会が見えてきた。まり子が言っていた教会はここのことだ。早くアルヴィーを助け出すべく、門を蹴破った敷地の中に入ったところで――花壇の隙間から蛇のような形のアームが飛び出して健たちに襲いかかる。そしてそれは戸惑う健たちの体に巻き付けられた!


「っ!」

「うっ……ぁあああッ!」


 しめつけられて動けず苦痛にあえぐ健たち。次の瞬間地面が爆発し、地中から「プルッシュワアアアアアア!!」と、耳をつんざく奇声を上げながら蛇のような姿の怪人が姿を現した。


「誰やお前!?」

「ニョロロローン! おれさまはヴァニティ・フェア最強の戦士、ヘビーロープだ! ファンタスマゴリア様の命令によりここから先は通さーん!!」


 ヘビーロープと名乗ったシェイドは背中から伸びた蛇のようなアームで健たちを振り回して地面や柱に叩きつける。


「ニョーロニョロニョロ……」

「このっ!」

「ぶげっ!?」


 まり子が瞳孔を閉じてその目を紫に光らせ、念動力でヘビーロープを浮かせてあちこちに叩きつける。


「ニョロォー! 女王様気取りが、調子に乗りやがって!!」

「しま……っ!」

「お前らにも、もういっちょ!!」

「うわっ!?」

「げえっ」


 いきり立って、ヘビーロープは再び背中からアームを伸ばして噛みつかせる。更にビームでムチを作ってそれを荒々しく何度も打ち付けた。


「うわぁっ!!」

「ぐへえッ!!」


 吹っ飛ばされて血を流す三人。まり子は不老不死であるゆえすぐに傷が再生したが、ほかの二人はすぐには治らない。エスパーは戦士ゆえ、一般人に比べれば傷が治りやすいが――さすがに一瞬では治らない。


「あいつ、思ってたより強いで!」

「でもあいつをやっつけなきゃ先には……」

「ニョロニョロニョロ……死ねェ!!」


 勝利を確信し金切り声を裏返してまで叫ぶヘビーロープだったが、そのときだった。



「……リーフストーム!」


「ニョロ! な、なんだ!?」


 凛々しく気高い少女の声が響いたかと思えば、風に乗った花びらと葉っぱが鋭い刃のようにヘビーロープを切り裂いていく。


「なに、今のは……?」

「あの声、あの技……まさか」

「知ってるの?」

「ああ、忘れはしない。間違いなく『あの子』だ!」


 健には先程の技と声に心当たりがあった。彼が忘れるわけがない。『あの子』とは、そう、かつてとある高校で健が知り合ったある少女のことだ。それは……。


「すさまじいパワーを感じる。サーチャーが反応を示していたのはここで間違いないわね。……お久しぶりです、健さん。はじめまして、知らない人」


 シェイドサーチャーを取り出して大きな反応を感知していたことを確認すると、健たちを助けに入った少女は凛としていて気品のある口調で微笑みかけた。その少女瞳が青くバラ色の髪を一本の三つ編みにしてまとめており、全体的にすらりとした体つきで胸はなかなか大きい。肌は色白で、服は白と黒のツートンカラーをしたチュニックワンピース。右手に茨の意匠が入ったレイピアを、左手にはバラの紋章が描かれたクリアパープルの盾を持っていた。


「やっぱりそうだ、葛城さん!」

「なんやて、あの子がこの前言うとった葛城あずみちゃんか!?」

「……きれいね〜」


 歓喜する健。彼の傍らで市村は腰を抜かさん勢いで驚き、まり子はきょとんとした顔で葛城の美貌に見とれていた。


「か、葛城ィ!? ひいぃっ、や、やべえ……」

「見たところお急ぎのようね。ここはわたくしに任せて、皆さんは先に行ってください!」


 なぜか異様に驚いているヘビーロープを切り上げて転ばせ、葛城あずみが健たちにそう呼びかける。「ありがとう、葛城さん! 恩に着るよ!」「間一髪やったわ、ほな!」と、健と市村は先を急ぐ。だが、まり子は行かなかった。疑問に思った葛城は、「あなたは行きませんの?」とまり子に問う。


「あなたひとりだけで大丈夫なの? だから手伝おうかな〜、って」

「お優しいんですね」

「えっ、そうかな?」


 葛城ひとりだけでは心もとないだろうと心配したまり子は、彼女に加勢しようと判断し健についていかなかった。しかも、たった今知り合ったばかりの相手を助けようと思ってのことだ。二人とも表情を険しくし、ヘビーロープを睨んだまま身構える。


「ニョロロロロ……なめんじゃねえ! グラスケルトンッ!!」

「グラァーーッ!」


 立ち上がったヘビーロープに呼ばれて、柱や塀の隙間から何十体ものグラスケルトンたちが飛び出す。


「……うおおおおおおおお!!」

「ハアアアアアアアアッ!!」


 葛城が地面にレイピアを突き立てて地中から茨を出して敵を突き上げ、まり子は鋼より硬くしなやかな糸でムチを作り出して薙ぎ払う。気高き女騎士と美しくも禍々しい女郎蜘蛛……かくして異色なコンビの共闘が幕を上げた。


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