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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第13章 白き光は誰の手に!?
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EPISODE241:再び彼の地へ


 健たちが高天原に着いたのと同時刻――警視庁庁舎内では、シェイド対策課の面々が警視総監と向かい合っていた。


「……それでどうするか、決まったのかね。不破君」

「はい、警視総監。答えは既に出ております」


 大阪府警に転属するかこの東京(まち)に残って今まで通りに戦うか――。不破の覚悟は既に決まっていた。主任の村上や宍戸や要らオペレーター、戦闘部隊の面々に緊迫した空気が漂う中斬夜はひとりだけほくそ笑んでいた。不破が大阪府警に行けばその上官である村上もついていくだろう。主任のポストが空いたときは自分が主任となって、今まで以上に情報を集められる。うまく行けば警察を内側から掌握することだって可能だ。こんなにおいしい話はそうそう無い――。と、斬夜はそんなことを考えていた。



「――ぼくは府警には行きません」

(なにッ!?)


 ――不破はハッキリとそう答えた。シナリオは斬夜が思い描いたようにはいかなかったようだ。さすがの村上や宍戸たち、そして警視総監もこれには驚きを隠せなかった。そして納得の行かない斬夜は、不破に近寄って肩をつかむ。


「どういうことだ不破さん! なぜ府警に行かないんです、僕に任せてくださってもよかったはず! 僕はあなたが思っている以上に優秀で頭もキレますからね」

「お前には関係ないことだッ!」


 いきり立つ斬夜をぶっきらぼうにどかして、不破は今一度警視総監と向き合う。


「……警視総監、目の前の命を救わずによそへ行ってしまうなんてぼくには出来ません。それに関西の方には、信頼に値するエスパーがいます。ぼくが転属しようと思わなかったのはそのためです」

「ふむ……」


 一瞬難しい顔をして顎に指を当てた警視総監の北大路だが、「やはりな。君ならそう言うだろうと思ったよ」と表情を和らげる。


「君の答えは、しかと聞き届けた。今まで通り、シェイドから人を守ることに専念したまえ」

「……ありがとうございます!」


 不破が警視総監に心からの感謝を告げる。そして村上や宍戸らとともに歩き出す。警視総監はその場から去っていった。


「いやぁ、君が行かなくて安心したよ。府警の人たちが手綱を握れるかどうか心配だったからね」

「おいおい! なんだよ、それ!」

「とにかく行かなくて良かったです! でも府警の人たちは大丈夫なんでしょうか……?」

「心配ないさ。関西にはあいつらがいるからな」

「あの子たちか? なるほど、それなら大丈夫だ」


 談笑しながら歩く不破たちを見ながら斬夜は仏頂面を浮かべる。


「警視総監ッ! 僕を村上主任に代わって対策課の主任にしてくださるはずではなかったのですか!?」

「君もわかっているはずだ。物事は、必ずしも自分の思い描いた通りになるわけではない」


 警視総監にすがりつく斬夜だったが、彼に叱責されその場をあとにする。廊下の隅っこに入ったところで、斬夜は必死に怒りを抑え出した。


(信頼に値する人物だと? 東條健か、市村正史か? それとも……どちらにしてもこのままでは済まさん!!)


 またもテレビ番組なら放送禁止を食らいそうないびつな表情で、斬夜はひとりで勝手に猛った。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ひっさしぶりやなー、高天原。あ、でもこの前行ったとこやったな」

「はい、けど……あまり懐かしんでる余裕は無さそうです」

「シロちゃんを助けなきゃいけないからね!」

「って……」

「「まり子ちゃん、なんでここに!?」」


 高天原に辿り着いた健と市村は気合いを高めるが、いつの間にか来ていたまり子の姿を見て仰天。思わず声がハモった。


「フフッ、わたしも手伝うわ」

「そ、それはありがたい……けど、その服あんまし()うてへんのちゃうか?」


 着物の丈があっていないまり子を見て、汗をかき苦笑いする市村。だが健は、「大丈夫ですっ。彼女にはピッタリ合ってますよ」と市村に告げ口する。市村は、「あ、あー……せや! せやったな!!」と納得が行った。


「……それよりお兄ちゃん、サーチャー持ってる?」

「サーチャー?」


 着物のことは置いておいて、まり子から言われた通り健は懐からシェイドサーチャーを取り出す。円形のスクリーンには、北のほうに大きな点がひとつ。更に小さな点がいくつも――。


「北に大きな反応がある。ってことは、まっすぐそこにいけばファンタスマゴリアのアジトに?」

「うん。わたしの記憶が正しかったら、だけどね」


 まり子によれば、ファンタスマゴリアは高天原の町外れにある教会をアジトにしているそうだ。しかし、もう何年も前の話であるゆえ今もそうだとは限らない。しかし今は彼女の言葉を信じるしかない。


 ――そのときだ。健たちがいる場所の対岸からおびただしい数のシェイドたちが走ってきた。武器を携えたグラスケルトンに四つん這いで動いているクリーパー、そして巨大なトンボのような姿をした怪人・レッドヤンマとソルティヤンマ――寄ってたかって健たちの邪魔をしようというわけだ。


「「グラァァァァ〜〜ッ!!」」

「来ましたでー、団体さんが!」

「すごい数だ……けどかまわない。僕たちは、力の限り突き進む!」

「最後のひとりになるまで立ち向かう! そうでしょっ!?」

「ああッ!!」


 ――こんなところで臆していてはアルヴィーに失礼だし、振り向いてももらえない。最後のひとりになっても突き進むだけだ! 健たちは雄叫びを上げて威勢よくシェイドの大群に立ち向かう。


「ザコども! どけ、どけぇぇぇ!!」

「邪魔を、するなああああああ!!」

「……失せろ!」


 ビームが乱れ飛び、剣が切り裂き、念力が吹き飛ばす。立ちはだかるシェイドたちは紫の血を撒き散らしながら次々に倒され、爆発してあるいは消滅していく。


「邪魔だァ!! でぇぇぇぇい!!」

「ウボオオオッ!?」


 健が一体のグラスケルトンのどてっ腹に剣を投げつけて突き刺し、両足でキックして貫く。剣を抜けばグラスケルトンは砕け散った。


「うりゃ、うりゃ、うりゃああああ!!」

「フシューーーーッ!!」


 四つん這いで動き回るクリーパーたちにビームを撃ち込み爆発させる市村。荒々しいがその狙いは正確だ。


「死ねぇっ!」

「グゴォーッ!!」


 触手のようにうねらせた髪の毛を鋭い爪を生やした蜘蛛の脚に変えて、まり子はそれをレッドヤンマやクリーパーに突き立てる。爪からエネルギーを注ぎ込まれた敵は……内側から爆発した。


「そんなにパーティーに参加してほしいのか? できないねッ!」

「わしら急いでるからな! 邪魔するやつはブッ飛ばしたらぁ!」

「さあ、死にたいやつからかかってきなさい!!」


 剣と銃や念力、その他諸々で群がるシェイドたちを蹴散らしながら健たちは快進撃を続ける。工事現場に差し掛かり、町外れに近づいてきたところで水色のトンボ型シェイド――ソルティヤンマが突如として健に飛びかかり突き飛ばす。更にのし掛かられて身動きを封じられた。


「のわあっ!?」

「東條はん!」

「お兄ちゃん!?」

「グエアッ!?」


 振り向いた市村をユキヒョウのような姿の怪人――ゲイルジャガーが蹴っ飛ばし喉元にサーベルを突きつける。更に蹴られた衝撃で銃が弾き飛ばされて手元を離れてしまった。踏みつけられて刃をあてがわれた状態ではとても取りに行けない。素手でも戦えるが危険だ。――大ピンチである。


「くっ、たこ焼き屋さんまで……」

「グラッ!」


 念力でこの逆境を切り抜けようとしたまり子に、数十体ものグラスケルトンたちが一斉射撃をしかける。


「うわああああああ!!」

「まり子ちゃん!?」

「ま、まり子ちゃぁーーーーん!!」


 左手で身を守ろうとするも防げるわけがなく、哀れまり子は幾多ものビームに撃ち抜かれ爆炎の中に消えてしまった。



 ――かに、見えたが。


「グラッ!?」


 煙が立ち込める中で青紫の光が昇り、煙の向こうからゆらゆらと人影が歩いてくる。妖艶な女性の笑い声とともに。


「ぬんッ!!」


 青紫に光った左手を構え、振り払って周囲にいたシェイドを漂っていた煙ごと吹き飛ばす。煙の中から出てきたその女性は蜘蛛の巣の意匠が入った着物を着ていて、胸は大きく腰はくびれており、青紫の豊かな髪はありえないほど長かった。


「今の、結構こたえたわよ?」

「ぶ、無事やった……」

「不死身……だからなぁ」


 首を鳴らしたあと、うろたえるシェイドたちを冷徹な視線で見下ろす――まり子。不釣り合いだった着物も今ではピッタリだ。はだけた胸元の谷間とスリットから見える太ももがまぶしい。


「ぐ、ぐ……グラァッ!!」

「フッ!」


 焦って再び一斉射撃を行うグラスケルトンたちだったが、まり子が手をかざすと彼女に向かって放たれたビームがUターンしグラスケルトンたちに飛んでいく。次々に着弾し、グラスケルトンたちは転倒した。


「下がりなさい」

「ガオッ!?」

「離れなさい!」

「グゲェーーッ!!」


 まり子は市村に刃をあてがっていたゲイルジャガーに回し蹴りを浴びせ、念力でねじ曲げてバラバラに引き裂く。立て続けにソルティヤンマへつかみかかり目潰しをかます。そこから手刀を浴びせてソルティヤンマを真っ二つにした。


「……二人とも大丈夫?」


 邪魔者を捻り潰したまり子は健と市村に優しく声をかけ、念力で弾き飛ばされた市村の銃を引き寄せる。二人はそれぞれまり子に、「サンキュー! 助かったよ!」「すまんなー、しかし着物よぉ似合っとるなぁ!!」と礼を告げた。


「フフッ! いいのいいの!」


 明るく無邪気に笑うまり子。一方のグラスケルトンたちは猟奇的かつ強すぎるまり子の姿に恐怖心を煽られ逃げ出そうとするが――まり子が振り向いた瞬間に動きが止まった。全員、一瞬のうちに金縛りを受けたのだ。更にグラスケルトンのうち一体に手首から出した糸を巻き付けた。


「あれぇ? もう逃げちゃうの? せっかく来てあげたんだから、もっと楽しんでいきなよ!!」


 髪の毛を蜘蛛の脚に変えたまり子は一瞬恍惚を帯びた色っぽい表情を浮かべると、糸を巻き付けたグラスケルトンを投げ縄の要領で振り回して他のグラスケルトンにぶつける。これでまとめて気絶させることが出来た。


「今よ!」

「そこをどけ! まとめて片付けてやるッ!!」


 氷のオーブを剣にセットして健は空気中の水分を凍らせ、滑走しながら敵を斬る。とにかく斬る。これが必殺技――スノウスライドだ。


「はいドッカーンと一発ゥ!!」


 続けてランチャー砲を構えた市村が砲撃。たった一発のみながら凄まじい破壊力を発揮し、グラスケルトンたちを焼き尽くし爆発させた。


「どないや!!」

「さ、早く行きましょ。あんまりシロちゃん待たせちゃ悪いもん」

「そうだね。アルヴィー……無事でいてくれ」


 立ち止まっている暇はない。アルヴィーを救うために三人は走り出した。


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