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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第12章 東條健は許されない
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EPISODE234:うろたえるな!!


 ――翌日、健はまり子やみゆきを連れて西大路にある白峯とばりの家に訪れていた。彼女の家は広々とした庭がついており、二階建てでガレージに地下室も完備という豪邸だ。洋館をモダンにアレンジした外観も特徴的。


「……なんですって、アルヴィーさんが? それホントなの?」


 居間にて事情を聞いた白峯がティーカップ片手に驚く。


「そうなんです、ファンタスマゴリアっていうおばけみたいなシェイドに捕まって……いま捜索中なんです」

「これまた厄介なことになったわね」


 戦力低下を狙ってきたということか。そのファンタスマゴリアとかいうのはなんと卑劣な奴なのだろう――ティーカップをテーブルに置いて、指を顎に当てた白峯が難しそうな顔で呟く。


「それだけじゃないの。機械仕掛けの怪物が、健お兄ちゃんを狙ってきたそうなの」

「はい、そうなんです。僕が妨げになるだのなんだのとしつこく……」

「怪物、機械仕掛け……? そいつシェイドじゃなかったの?」

「そう、ですね。シェイドサーチャーが反応しなかったし」

「んー……」


 腕を組んで更に難しそうな顔で思考する白峯。


「みんな書斎に来てくれる?」

「え、いいですけど……はい」


 ――悩んでいたかと思えばすぐに何かひらめいたような明るい表情で、健たちに三人にそう告げて書斎まで連れていく。書斎は大きな本棚がいくつもならんでいて、しかも二階まで吹き抜け状になっている構造だ。まるで図書館を彷彿させる。それだけでなく天井にはシャンデリアや床には上等な敷物が敷かれていて、格調高い雰囲気も漂わせていた。


「白峯さん、何か調べるんですか?」

「健くん、剣か盾持ってるかしら? ちょっと調べさせてほしいの」


 ちょうど持ってきていたので、健はエーテルセイバーとヘッダーシールドを白峯に手渡す。白峯は重たそうにしながらノートパソコンが置いてあるデスクまで二つの装備品を持っていった。

 ――シェイドはその影や隙間から通じる異次元空間を辿って人間界に現れるという性質上、いつ襲ってくるかはわからない。ゆえにエスパーにとって武器やシェイドを感知するサーチャーは必須といえるだろう。戦いは決して楽しくないし辛い。普通はそうだがそこに快楽を見出だせる好戦的なものも少なからず存在している。毎日のように命のやり取りが繰り広げられ、命を落とすものも多い。非日常の世界で生きるというのはそういうことだ。


「ちょっと待っててねー、すぐ終わるからねー」


 そう健たちに呼びかけた白峯は解析に専念する。ノートパソコンの傍らではエーテルセイバーとヘッダーシールドがコードに繋がれている。蓄積された戦いの記録や、または付着した生物の細胞や金属片――それを調べようというのだ。


「……これは……!」


 やがて白峯も思わず目を見張るようなものが映し出された。それはシェイドあるいは動植物と、金属片。その二つが分子レベルで融合したものだった。


「とばりさん、何かわかったの!?」


 まり子が白峯の近くに寄り、驚く。健とみゆきもパソコンの画面を覗き込み、二人とも驚きから表情を凍らせた。


「あからさまに人の手で作られた感じね。機械の精巧さと生物の柔軟さ……矛盾してる二つの要素が合わさってるわ」

「えっ、じゃあ……」

「シェイドの細胞使ってるけどシェイドじゃない。機械的だけどロボットでもない。例えるならサイボーグとか、メカ生命体……ってトコかしら。信じられないわ」


 一同に緊張が走る。とくに健は顕著であった。サーチャーが反応しなかったことから予想はついていたが、やはり――不気味だ。ますます得体が知れなくなった。



「実物を見たわけじゃないけど、東條くんが戦った機械仕掛けのバケモノを生み出した人はある意味天才かもね」


 冷静沈着に見える白峯だが、彼女も内心ではかなり衝撃を受けていた。


「とばりさん、すごーい……そんなことまでわかるなんて」

「大学のとき、理工学部行ってたもん。機械のことだけじゃなくて、生物学も学んだわ」


 感心するまり子だったが、マッドサイエンティスト的な白峯の姿を連想してしまい「ぬ、濡れなぁぁぁい!」と悲鳴を上げた。


「濡れない?」

「あ、あ、いやなんでもないんです! お気になさらず!」

「そ、そうです、独り言! 独り言よねまり子ちゃん?」

「ホラーすぎて濡れないのおおおおお!!」


 白眼をむいて絶叫するまり子を必死に取り押さえてごまかす健とみゆき。苦笑いを浮かべた白峯は咳き込んで、「とにかく、今後もさっき言ったメカ生命体と戦うかもしれないから気をつけた方が良さそうよ」と健に告げる。「重々承知です!」と、健は威勢よく返す。


「濡れるッ! とか、濡れないッ! とか言わないの!」

「だってそういう年頃だしぃ……」

「あんた大人でしょーが!」


 取り押さえたまり子を落ち着かせるみゆき。本当は大人なのに何を子供じみたことをぬかしているのだと、そう思ったのかやや怒っていた。


「あ、そうだ」

「なんでしょうか!?」


 急にかしこまる健たち。上から糸でも吊るされたようにまっすぐに立っていて、面白おかしい。


「そんなかしこまらなくてもいいのよー。あれから黄金龍の伝承について更に調べてたんだけど、なかなか面白いことがわかったの!」

「なかなか面白いことって何ですか!?」

「なになに!?」

「教えてー!!」


 伝承の時代に世界を救った英雄が力を貸してもらっていたという黄金龍について今度は何を調べたのだろうか? 三人とも興味津々な様子で、目をキラキラと輝かせて白峯に近付く。


「アメリカの歴史博物館から特別に許可をもらって借りた資料を調べてたんだけど、黄金龍は七つの力を持っていたみたいなの。火、氷、土、風、雷、光、そして闇……。ひょっとしたらオーブと何か関係あるかもしれない」

「言われてみれば、土と光と闇以外はみんな手元にありますね!」


 調べたことを人差し指を立てて語る白峯に健がそう告げる。これまでに手に入れたオーブは四つ。最初から持っていた火と氷、途中で手に入れた雷と風だ。だが雷は――。


「でも雷の力はとばりさんが作ったんでしょ。お兄ちゃん、この前そう言ってたよね?」

「そうね、私が不破くんと協力して作り上げたのよ。伝承の時代では雷は神の力とされていたから、当時は恐れ多くて作られなかったのかもね」

「神様なんて所詮は二次元にしかいないのにねー。でも当時の人たちってそれだけ敬虔だったってことよね」

「そりゃ敬虔だったんじゃないの。神様が絶対視されてた時代だろうしねー」


 神が実在していたのか否かはともかく当時の人々が敬虔で神に対して厚い信仰心を持っていたのは確かだ。教会の関係者など一部のものは、神から力を授かり魔術めいた何かを操っていたとされている。


「そうそう、二次元といえば黄金龍は次元を渡る力も持っていたそうよ。一次元、二次元、三次元、そして四次元……あらゆる次元に!」

「「「に、二次元!?」」」」


 あらゆる次元に行けると聞いた健たち三人が驚いたあまり表情を崩す。声がハモったことから三人とも互いを見つめあった。一瞬だけ。


「二次元に行けばヒーローになって悪いやつらいっぱいやっつけたり、綺麗なお姉ちゃん侍らせて酒池肉林のハーレム作ったり、ポケモンマスターになったりできるじゃん!」

「それだけじゃないわ。新撰組や不思議の国の住人とロマンスできたり、アイドルになって歌って踊ったり、あたしだったらお姫様になったりもできる!!」

「うらやましい! 黄金龍うらやましいぃ〜〜〜〜っ!!」


 二次元にあんなことやこんなことが出来る! こんなに素晴らしいことはそうそう無い! ハイテンションになった三人はそれぞれが抱いている憧れや二次元に行けたらやりたいことを思い浮かべ、盛り上がる。


「白峯さん! ここは是非とも二次元に行けるマシンを!!」

「わたしからも是非!」

「わわっ……」

「お願いします!」


 黄金龍の話から脱線して二次元に行きたいという話題になってしまった。対応に困った白峯は咳払いをすると息を深く吸い込み――



「うろたえるなガキどもォーー!!」

「ぎゃぴりーーーーん!!」

「うぎゃぴいぃーーーー!!」

「ぐもオオオオオォ!!」


 オーラをまといながら両手を上げて三人を思い切り空中へ吹き飛ばし、地面へと叩きつけた。吹っ飛ばされた三人は顔を上に向けており、頭から落下していた。


「みんな落ち着きなさすぎよ。妄想もほどほどにしろっぴ。(ぴっ)! (ぴっ)!」

「の……のりぴー……」

「わたしたちって、マンモス憐れ……」

「反省します……ガクッ」


 人間少しくらいはどこかおかしくたっていいものだ。要するに度が過ぎなければいいのだ。そう、度が過ぎなければ。


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