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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第12章 東條健は許されない
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EPISODE233:助けを呼ぶ声


 東京、その付近に位置する高天原市――山と緑に囲まれた環境豊かな街であるそこは観光スポットも多く、毎年多くの観光客が訪れている。その町外れにある森の中に――教会が建てられていた。外観は古びていて壁には蔦が生い茂っており、そこはかとなく不気味な印象を与える。その中ではアルヴィーが十字架に鎖で縛り付けられていた。しかも、傷だらけの状態で。


「くっ……!」


 健が、いやみんな今頃心配している。早くここから出なければ! 鎖をほどこうともがくアルヴィーだが、固く締め付けられたそれは彼女の力でもほどけない。


「ンフフフフ、ざまあないな白龍(アルビノドラグーン)よ」


 いかにも悪そうな笑みを浮かべて歩み寄るクラーク碓氷、またの名を――ファンタスマゴリア。


「貴様ッ……私を健から引き離して、いったい何をたくらんでいる?」

「お前がついていない東條健などそこらのバカなガキと同じよ。奴があそこまで強くなったのも、大半はお前が力を貸していたからに過ぎん。そのくらい私でもわかるぞ、うん?」


 顔をアルヴィーに近付け、クラークは下卑た笑みを浮かべる。


「健を侮るな。あやつはお主が思っているほどヤワな男ではない! 貴様など一捻りだ!!」

「ふん、だいぶ信頼を置いているようだが果たしてそうかな?」


 あくまで強気な姿勢を崩さないアルヴィーをクラークが笑う。


「奴のことだ、どうせ仲間に泣きついて一緒に乗り込んでくるつもりだろう。来るだけ無駄なことだがな」

「なに?」

「ンフフフフ……これを見ろ」


 不敵に笑うクラークは、懐から白い輝きを放つ宝玉を取り出す。大きさはピンポン玉〜ビー玉くらいだ。「オーブか!?」と、アルヴィーは目を丸くする。


「これなるは『白き光』。かの黄金龍が隠し持っていた秘宝だそうだ!」

「黄金龍の……? 貴様、どこでそれを!」

「三千年前のことだ、私があるケチな盗賊を殺して奪い取った! 以来私の切り札だ、ワハハハハ!!」


 『白き光』をいかにして手に入れたのか? その経緯を語り慢心して大笑いするクラーク。


「これさえあれば私は無敵!! 何人来ようが一網打尽だ、お前の目の前で全員塵芥にしてくれよう!!」

「健たちを殺して、何をする気だ!」

「そうなる頃にはお前も心変わりしているのではないか? あんな脆弱な人間(クズ)どもではなく、同じシェイドに味方するべきだったとな」


 クラークがあらんかぎりになじり、険しく歯ぎしりするアルヴィーの心をえぐる。


「人の姿をしていようが所詮お前はシェイド、人ならざるものだ。いくら人間を好いていようが人間社会で生きていくことなどできん。我らより遥かに劣る人類と共存することなど絵空事よ!!」

「……!」


 大口を叩いてアルヴィーをなじり続けるクラーク。彼女が人類に肩入れしているのがよほど気に食わないし解せないのだろう。


「無謀にもお前を助けに来たバカどもが目の前で塵芥(ちりあくた)となれば、お前も考えを改めるはずだ」

「黙れクラーク! 塵芥になるのは貴様だ!」

「あ゛ァー? いまなんと言った? 塵芥になるのは私の方だとォ?」


 強気な態度で唾を飛ばしてきたアルヴィーにガンを飛ばして、クラークは右手に黄金色のドクロの杖を握る。



「このメス豚がァ!!」

「ぐっ!!」


 逆上したクラークは杖でアルヴィーの顔を殴る。


「まだわかっていないようだな、今の自分がどういう身分なのか!」

「悪いがクラーク、そんなものわかりたくもない!」

「クラーク様だ無礼者ォッ!!」


 顔に青筋を立ててクラークは再度アルヴィーの顔をひっぱたく。今度は流血したが、それでもアルヴィーは屈しない。


「図に乗るなよこのメス豚が! こうなればガキどもが来る前に貴様をブチ殺してやる!!」


 歪んだ表情でクラークが雄叫びを上げてアルヴィーを威圧する。


「だがその前に、貴様のスケベな体をもてあそんでやらねばなァ……」

「やめろ、汚い手でさわるな!」

「ふへへへ、私に屈しろォ!! 靴をなめろォ〜〜!!」


 下卑た笑い声と共にクラークはアルヴィーが着ていたセーター越しに豊満な乳房を鷲掴みにし、そのまま揉みしだく。――悔しい! でも感じてしまう。だがこのままクラークの犬に成り下がるような彼女ではない。何をされようが言われようが強靭な精神力ではね除ける。



「誰か、助けてくれ……健ッ」


 ――そんな彼女とて誰かに助けを求めることもあるのだ。


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