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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第12章 東條健は許されない
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EPISODE230:追・跡・者


「だいたい何が言いたいんだ。僕が、妨げ? 許されない? ……勝手に決めつけるのはやめてくれ!」

「ゴオッ!」

「ウワアァッ!?」


 必殺技をぶちかまして、機械仕掛けの怪物を打ち破った――かと思えば敵は復活し、わけのわからない言葉を口にして再び襲いかかってきた。そうやって自分を混乱させようとしている敵の作戦なのだと健は思ったがどうもそうではなさそうだ。どちらにしてもこのままでは殺される。囚われのアルヴィーを救い出すことも叶わなくなる。それだけは、それだけは絶対に――避けたい!


「何度モ言ワセルナ。オマエハ 邪魔者、許サレナイ者。許サレザル者ニハ死アルノミ!」

「うッ!」


 機械仕掛けの怪物――Φゴーレムが右腕を大振りの剣に変えて健を斬りつける。よろめいたところへ飛びかかりながら斬りつけ、更にその攻撃をもう一発命中させる。ガードする暇もなく健は大ダメージを受けた。


「くそっ……何なんだよ、何なんだよお前は!」


 焦燥を覚えた健は剣を振って炎を放ち、Φゴーレムに命中させ炎上させる。その間にオーブを入れ替えて青いオーブをセット。エーテルセイバーの刀身が瞬く間に青くなり、周囲に輝くほど冷たい冷気を発生させた。


「スノウスライドッ!!」


 空気中の水分を凍らせて道を作り、滑走。波に乗ったような勢いで敵を斬る。とにかく叩き斬る!


「グウッ」

「凍ってろ!」


 Φゴーレムが怯んだ隙に、健は左手から冷気を放ってΦゴーレムの足元を凍らせる。その間に逃げてしまおうという判断だ。真正面からぶつかっても倒せない以上、今はそれしか道はない。凍結も一時しのぎでしかなく、相手が凍っているのはしばしの間だけだ。


「……今日はこのくらいで勘弁してやるっ」


 足元が凍って身動きが取れないΦゴーレムを指差し、強い口調で捨て台詞を吐いて健は逃亡する。Φゴーレムは健を追おうとしてもがくも、思うように動けない。やがて咆哮を上げると同時に氷が砕けて動けるようになった。


「逃ゲテモ無駄ダ……」


 目を光らせたΦゴーレムはアスファルトのひび割れへ溶けるように消えていく。――そう、逃げても意味はない。健がどこまで逃げ延びようともΦゴーレムは徹底的に追い詰めるだろう。たとえそこが地平線の果てだろうと、容赦なく――。



 Φゴーレムの動きを封じた隙に健は京都駅の付近にある車両倉庫まで逃げ込んでいた。ここには廃棄された電車や貨物列車に積むコンテナ――などなど、様々なものが置かれている。身を隠すには最適だ。


「はぁッ……はぁッ……」


 息を荒くしつつ健は廃電車の隙間に身を隠す。ここなら安全――だが、相手は血に飢えた野獣のように獰猛なΦゴーレムである。見つかるのは時間の問題。もし見つかったのならそのときは戦うしかない。何より隙間と物陰は――安全であると同時にシェイドが涌き出る危険地帯でもある。警戒を怠れば最後――命を落としてしまう。


「だ、大丈夫だ……流石のあいつもここまでは追ってこない……よね?」


 壁づたいにカニ歩きで移動しながら様子を伺う健。今のところ奴の姿は見当たらない。安堵の息を吐いて、健は腰かけたサブリュックに仕舞っていた袋を取り出す。――中身はコンビニで買ったカレーまんとヤング向けの雑誌だ。前者は腹を空かせたまり子の為に買ったもので後者は自分へのご褒美。ちなみに同じ袋には入れておらず別々である。


「ははっ、ちょっと冷めちゃってる……」


 カレーまんは冷めかけていた。だがこんなものはレンジで温めればすぐホカホカになる。


「アルヴィーが捕まってる間、あの子はひとりぼっちだ。僕がそばにいてあげなきゃ……」


 ――ひとり寂しく家で待っているまり子は今、どんな気持ちなのだろう? 自分が家に帰ってきたとき、まり子は笑顔で出迎えてくれるだろう。しかしそれは心の底からのものではない。何かが足りないのだ、そう、アルヴィーの存在が。アルヴィーがいないと心からは笑えない。にも関わらずまり子は無理に笑顔を作って辛い気持ちをごまかしている。そうやって自分に嘘をついているのだ。それは自分も同じだ。だから、早くファンタスマゴリアのアジトまで乗り込んでアルヴィーを救い出さなくてはならない。――真剣な表情で健は決意を新たにする。



 そのとき――金属音が混じった不吉な足音が向かい側から響いてきた。


「!」


 カレーまんが入った袋をサブリュックに仕舞って壁を伝って辺りを見れば――そこには健を探しているΦゴーレムの姿があった。許されざる者である健を殺すべく、気配を嗅ぎ付けてここまでやってきたのだ。


「お……追って来たのか……!?」


 Φゴーレムに見つからないようにしながら健は隠れる場所を変えようと移動する。壁づたいに歩いて、少し広いところに出て山積みになったコンテナのうしろへ移動した。迂闊に物音は立てられない。存在を嗅ぎ付けられたら一環の終わりだ。冷や汗をかきながら健は周りの様子を伺う。金属音を立ててΦゴーレムが健がいる方向まで接近してきた。このまま隠れていれば見つからないし戦うこともない。ヤツが通り過ぎるのを待とう。そうしたかった健に想定外の災いが振りかかる。


(でっ電話!? 誰さ、こんなときに!)


 ――電話だ。懐から着信音が鳴り響く。職場を出て、電車もバスももう乗らなくて良いためマナーモードを解除してあった。電話をかけてきた相手は風月みゆき――健の幼なじみだ、『トワイライト』というファミレスで働いている。笑顔が眩しい天真爛漫な少女だ。


「もしもし……みゆき?」

「あ、健くん。今度の休み空いてる?」

「とくに予定無いけど……」

「じゃあさ、帰帆島レイクパラダイス行かない? たまには息抜きしましょうよー」

「待って! 今それどころじゃないんだって!」


 刹那、背後にあったコンテナが吹き飛ぶ。健とみゆきと通話しているところを発見したΦゴーレムに攻撃されたのだ。やられるわけにはいかない健は携帯電話を片手に健は全力で走る。


「え、なんで?」

「いいから切って!!」

「う……うん、わかった」

「悪いけど、じゃあ!!」


 必死の形相で伝えた結果通話はそこで切れた。背後には目を光らせて金属音を鳴らしながら追いかけてくるΦゴーレムがいた――。


「ウゴクナ!!」

「ッ!!」


 Φゴーレムの左手から電撃が放たれるも、健は横へ宙返りして回避。エーテルセイバーを空中で抜いて斬りかかる。


「ハッ!」


 健はΦゴーレムに斬りかかり怯ませる。追撃で袈裟斬りと唐竹割りを立て続けに繰り出して転倒させ、雷のオーブをエーテルセイバーの柄にセットする。辺りに激しい稲妻が降り注ぎ、エーテルセイバーの刀身が金色に変わっていく!


「グゴゴ!!」

「うぐっ……そう来るか」


 Φゴーレムが全身に張り巡らせたコードを触手のように伸ばし、健を絡めとる。体を締め付けられてうめき声を上げる健だが、左手でコードを掴むと右手に持ったエーテルセイバーで切断。


「ヴウッ!」

「はっ、でやっ!」


 右腕を大振りの剣に変形させ斬りかかってきたΦゴーレムの攻撃を弾き、つばぜり合いへと持ち込む。


「我ラヲ 邪魔スルモノハ、生キテイテハナラナイ。死ネ……許サレザル者ヨ……!」

「許されない許されないって、しつこいんだよッ!!」


 冷徹で鋭い眼光を健に浴びせるΦゴーレム。健は険しい表情で相手を威圧し力強く押しきる。


「でぃやああああぁぁぁぁ!!」

「グゴオオオオッ!!」

「くたばれッ!!」


 稲妻をまとった剣で斬って、斬って、ひたすらに斬りまくる。怯んだところに盾で殴りかかり、キックで追撃。


「追って……来るなあああああああぁぁぁぁぁ――――ッ!!」

「グオオオォォォォ!!」


 剣に気合いをこめて飛び上がった健は、稲妻をまとった剣でΦゴーレムを一閃。Φゴーレムは転倒し爆炎を上げた。カメラアイが異状をきたし、体からは火花を散らす。


「えぇぇぇいッ……」


 凛とした表情でエーテルセイバーの柄にはめた黄色いオーブを緑色のオーブと交換し、刀身を爽やかなエメラルドグリーンに変えると健は行きたい場所を念じる。風のオーブの力で、テレポートを行うのだ。住んでいるアパートの前に行きたいと念じて――健は吹き荒れる風と共に姿を消した。



「ガ……ガシャ」


 残り火がくすぶる中、健の必殺技――ライトニングフラッシュを受けて気絶していたΦゴーレムが体内の自己修復装置を作動させて蘇る。カメラアイも完治し車両倉庫の景色を映し出した。


「ターゲット、視界カラ 消失。ドコヘ 消エタ?」


 ――健が逃げたところで追跡者(ファイゴーレム)はあきらめようとしない。許されざる者を抹殺するという与えられた任務を成功させるまでは。


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