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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第11章 女・王・再・誕
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EPISODE218:放て! マキシマムキャノン


 肉体が変異を起こし、凶悪な姿になったカルキノスが唸りを上げて接近する。


「バァッ!!」


 口から強酸の泡を吐き散らし、弾けさせる。爆発を起こしたことで健たちの目を眩ましその隙に不意打ちしようというわけだ。


「おりゃ!」

「うううッ!」


 様子を窺っていた健の懐へ飛び込んで、カルキノスは右腕の巨大なハサミを叩きつける。大きく吹っ飛ばされた健はベンチに衝突して転倒する。


「なんてパワーだ、あれがあのカプセルの力……うっ」


 頭から血を流しながら、健が戦慄を覚える。実力はさほど高くはなかったカルキノスが、あのおかしなカプセルを摂取しただけであそこまで強くなっていた。まさか、以前に三谷やアンドレが使ったあの怪しい薬と似たようなものなのだろうか? だとしたらこの先暴走する可能性は大いにありうる――。


「はははっ! 往生際の悪いヤツめ。返り討ちにしてくれる!」

「あ゛ん? 蚊でも止まったかぁ?」


 オニグモがカルキノスに金棒を叩きつける。だが硬い甲羅はオニグモの一撃を通さず、カルキノスはハサミを交互に叩きつけてオニグモをぶっ飛ばした。いい気分になったカルキノスは調子のいい笑い声を上げる。


「もいっこぉ!! いや、一気に行くぜぇ!」


 気前よく(?)カルキノスは懐から先程服用したカプセルをいくつも取り出し、いっぺんに頬張り噛み砕く。


「嫌な予感しかしない……」

「まり子ちゃん……それどういう意味?」

「あのままだとあいつは……確実に暴走する。そうなれば誰にも止めることは出来なくなっちゃう!」


 負傷した健に寄り添っていたまり子が不吉な前兆を感じ取る。


「効くぜー!」

「こうなりゃ、真っ二つに割ってやる!」


 いきり立ったオニグモが蛮刀を持ってカルキノスに叩きつける。だが左腕の盾がついたハサミに弾かれると同時に、またも吹っ飛ばされてしまう。


「ヒャッハ〜〜ッ!!」

「ぐぬぅ!」


 カルキノスはオニグモに体当たりをかまして追い討ちをかけ、更に道沿いに生えていた木を剛力で真っ二つにへし折ると、「最高だぜこのパワー!」と、うぬぼれるあまりがに股でダブルピースをやってのけた。マヌケだが、この状況でそれをやられたらかえって恐ろしい。


「っ!」

「健、よせ!」

「黙って見てられるかっ!」


 立ち上がった健はそのまま、全力でカルキノス強化形態のもとへ走る。


「なんだぁ? まだやられ足りねえのか!」

「うっさい!」

「のおおおっ」


 神経を逆撫でするような口調で話しかけてきたカルキノスに、健は風のオーブを装填したエーテルセイバーを振りかざす。重量級のカルキノスの体が風で舞い上がり、地面に叩きつけられた。


「にゃろおおおお!!」


 怒ったカルキノスが右腕のハサミを叩きつけて土埃を衝撃波のごとく走らせる。身をかわすもカルキノスに蹴り上げられ健の体が宙に舞い上がった。地面に叩きつけられて、健は起き上がる。片目を瞑り歯を食い縛って。


「言っとくが止めようとしてもムダだぜ。今の俺様は何者をも凌駕している! 誰にも止められやしない!! ひゃっはははははははははは!!」

「くッ!」

「ひゃはっ……はうっ!?」


 何度倒されても立ち上がる健を嘲る、カルキノス。だが――急に異状をきたしたか、一瞬黒い電流が走り、片腕を押さえて苦しみ出す。


「なんだ!? カルキノスに何があった?」

「ツケが回ったのよ。あのおかしな薬を使いすぎたツケが!」

「まさか……!」


 まり子が感じ取った嫌な予感は的中していた。急激に肉体が変化しようとしている為の苦痛に耐えられずにあえぐカルキノスを見て、眉をひそめるアルヴィーと健。


「ふん、化け物が……」

「しまった!」


 恐れをなしたか、それとも面倒を健たちに押し付けたか。オニグモは鼻息を鳴らすと、再び逃走する。追おうとした健だったが、カルキノスを放置しておくわけにはいかない。やむを得ずその場にとどまった。


「や、やめろぉ! もう十分だ! これ以上はいらない! 俺が俺じゃなくなるううう!!」


 もがき苦しみながら必死に訴えるカルキノス。その体は黒い煙を吹き出しながら膨張し、背中や膨張した箇所からは節がいくつも飛び出ていてグロテスクなこと極まりない。皮肉にも、自分が言った通りに誰にも止められない状態になってしまったのだ。


「多良場さん!?」

「くそッ、誰があんなものを……!」


 ――物陰から密かに見ていた、鷹梨と辰巳が驚きあるいは憤る。二人はオニグモの動向を探りに来ていたのだ。その結果、見つけたのは暴走したカルキノスとやはり最初から裏切るつもりだったオニグモ。カルキノスはあのようになってしまった以上、もはや手の打ちようがない。異変に早く気付けなかった自分たちの不甲斐なさとあのカプセルを渡した人物に義憤を感じながら、鷹梨と辰巳はいずこへ消える。


「やめてくれ、誰か……助けてくれぇぇぇぇぇ」


 悲痛な叫び声は誰にも届かず、その叫びを最後に彼の中からカルキノスという存在は消えた。煙が収まった頃には残された肉体は理性と知性を失った――ただの醜悪な怪物と化していた。


「ウゴオオオオオオオオオオォォ!!」

「ッ!」


 ――つい先程までカルキノスだった怪物が雄叫びを上げ、健たちを震撼させる。その姿は8mはある巨大なカニで、全身はトゲが生えた堅牢な甲羅で覆われている。巨大なハサミが四つ、脚も四つ。その姿はまさしく、ギリシャ神話に登場する化けガニ――カルキノスのようだ。顔面をよく見ると、額には人型をしていたカルキノスが埋まっている。だが、もはやそれは機能していない。


「ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「伏せろっ!!」


 危機を察知したアルヴィーが叫ぶ。しゃがんだ健たちは、暴走したカルキノスが目から光線を放ち遠方のビルに命中させた光景を目撃。一瞬にしてビルは崩れ去ってしまった。


「……なんて威力だ。このまま街の方に行かせたら……!」

「ああ、街がメチャクチャにされてしまう。人々の命も――」

「でもオニグモを放っとくわけにもいかない。けどオニグモを追えばその間にあいつが暴れまわる――どうすればいいんだッ!」


 冷静に状況を分析するアルヴィーに対し、健は敵の強大すぎるパワーを眼前に頭を抱えてこの上ない焦燥を覚えていた。


「来るっ!」

「うわぁぁぁっっっ!」


 カルキノスが唸り声を上げると共に健たちへ迫る。まり子が呼びかけるが、間に合わず健たちはハサミで薙ぎ払われてしまう。


「ウグオオオオオオォ!!」


 目だけではなくハサミからも光線を放ち、暴走したカルキノスは周囲を見境なく破壊する。地面がえぐれるほどの怪力にすべてを焼き尽くす光線。近づくことさえ困難だ。このまま東京が焦土へと変えられてしまうのを黙って見ていろというのか。否――出来ない!


「くっそおおおおおッ!!」


 健は雄叫びを上げると立ち上がり、破壊の限りを尽くす巨大なカルキノスめがけて疾走する。


「健、無茶をするな! いま突っ込んだところで命を落とすだけだぞ!」

「指をくわえて何人もの命が奪われるのを見てろっていうのか!? そんなの僕は嫌だッ!!」


 健を制止しようとするアルヴィーだが、健は話を聞かずに前進を続ける。途中で炎のオーブを装填し盾に風のオーブを装填すると、ある程度近づけたところで健は力強くジャンプしてカルキノスの背中に飛び乗った。


「せいやぁああああああああああああああ――――ッ!」


 何としてでもこいつを止める! 渾身の一撃を繰り出す健だが、攻撃は弾かれてしまいそこから振り落とされる。地面に衝突して健は悲痛な叫びを上げた。


「健! だから無茶だと言ったんだ、このバカ者!」

「ご、ごめん……」


 健の行いを叱責しつつ、介抱するアルヴィー。


「くそっ、どうすることも出来ないのか!」

「悔しいが……、もうおしまいだ」

「……」


 止めなくてはならないのに止めることなど出来ない理不尽さ。襲いかかる絶望。うなだれる健たち。もはやこれまでなのか――。



 だが、希望はまだ残されていた。



「ゴオオオオオオオオオオオ!!」


 突如として巨大カルキノスに撃ち込まれるミサイルとビームの嵐。砲撃をしかけるは青い巨体を持った機械的なシェイド。その上に立つのはランチャー砲を構えた男。


「市村さん!」

「たこ焼き屋さん! なんでここに?」

「さあな! 祭り囃子が聞こえたんでなァ!!」


 思いもよらないところに助っ人が駆けつけてくれた。驚いて喜ぶ健たちに、市村は威勢よく返事をする。


「しっかしまり子ちゃん、しばらく見んうちにべっぴんになって! わしゃあ嬉しゅうてしゃあない!」

「フフッ、どうも」


 大人の姿になったまり子を見て市村がにやつく。すぐに真剣な表情になって、市村はランチャー砲を遠くに吹っ飛んだカルキノスに向ける。


「こいつはわしがブッ飛ばす! あんたら早よ街行けや!」

「はいっ!」


 市村の好意を受け取り、健たちは街の方へ疾走。これで市村はカルキノスと戦うことに集中できる。


「好き放題暴れよって、わしの目が黒いうちはお前の好きにはさせへんで!」


 咆哮を上げて突進してくるカルキノスに市村はありったけランチャー砲をぶっぱなして攻撃。硬い甲羅に守られていない関節を狙って砲撃する。


「ウゴオオオオオオオオオオオ!!」

「おっしゃ!」


 度重なる砲撃により巨大カルキノスの脚やハサミがちぎれて吹っ飛ぶ。もがき苦しむカルキノスに脇目を振らず市村はイセエビ型の巨大メカのようなシェイド――ブルークラスターの背中から地上に飛び降りる。武器を大型銃のブロックバスターに持ち変えて、尻尾の付近にある穴へ差し込んだ。


「次はこいつや! 行くでぇ、ファイナルフルブラストォ!!」


 ――市村が引き金を引いたのを合図に、ブルークラスターの全身に備わった重火器という重火器からおびただしい数のミサイルやビームがカルキノスに放たれる。次々に命中して大爆発を起こし、巨大カルキノスは怯んだ。


「――ははっ、流石にタフでんな。せやけど、甲羅にヒビぐらいは入ったやろ」


 すべての弾薬を撃ち尽くしてパートナーが佇んでいる傍ら、狙いはもちろん、対岸にいるカルキノスだ。満身創痍で態勢を崩している相手へ一気に近づいて、市村はブロックバスターを両手で構える。


「これでご自慢の甲羅ももう意味あらへんな。トドメや!」


 銃口に収束している光がだんだん輝きを増して大きくなっていく。チャージが最大限まで達したとき、市村は口元を吊り上げて己の勝利を確信した。


「行くでぇ! マキシマムキャノンッ!!」


 そして、銃口から極太のビームが放たれる。限界ギリギリまで達したエネルギーを一気に放ち、敵を消滅させる必殺兵器。その名も――マキシマムキャノンだ。 


「あ、じゃ……ぱアアアアアアアアアアアアアアァッ!!」


 極限の閃光が、暴走して巨大化したカルキノスの体を滅ぼしてゆく。断末魔の叫びを上げて、巨大で醜悪な化け蟹はそのまま塵芥となった。


「ひょー、す、すっげえ……こりゃあ人に向けて撃たれへんなあ」


 市村は、マキシマムキャノンのあまりの威力に自分でも呆然としていた。地面が軽く削れるほどの破壊力。その辺にあるビルや、果ては岩山なども簡単に吹き飛ばせそうだ。逆に言えば、そのくらいの力を使いこなさなければシェイドを討伐して世界を平和にすることなど出来ないということだ。それだけのものを彼は持っているのだ。


「……さて、あいつら大丈夫やろか。東條はんイマイチ頼れんしなあ……」


 オニグモを追って街に向かった健の身を案じて、市村は空を見上げる。澄み渡る青い空に陰りが見えていた。まるで、これから起きることの予兆のようであった。

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