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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第11章 女・王・再・誕
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EPISODE210:鬼蜘蛛襲来


「行くぞ!」

「来るッ!」


 ヴォルフが凄まじい瞬発力で健に迫る。背後に回り込むと巨大なツメを振りかざして、頸動脈を切ろうとした――その寸前に転がって回避する。起き上がって、健は反撃を加えるもツメでガードされた。


「へへへ、ヴォルフガングさんが来れば怖いもんなしだ!」

「のわあっ!!」


 他力本願なことを口走ると、立ち上がったカルキノスは右腕のハサミからビームを放ち健を攻撃。健が怯んだところでヴォルフは彼を持ち上げ――放り投げる。


「うわあああッ」


 健の体が柵に叩きつけられる。立ち上がってうしろを見ると――すぐそこには湖。琵琶湖だ、波打つ水面の向こうには山々や対岸の街が見える――。そう、健は湖岸まで吹っ飛ばされたのだ。


「さっきはよくも、仕返しだ!」

「うわっ!」


 息を吐く暇もなく、カルキノスが勢い良く健へ突進。そのまま左手のハサミで健を捕まえた。


「捕まえたァ……琵琶湖の藻屑にしてやんよ! 沈めぇ!!」

「ぐわぁッ」


 カルキノスは捕まえた健をそのまま琵琶湖へと放り投げる。が、寸前で白い龍が現れてその巨体で健を受け止める。――本来の姿となったアルヴィーだ。


「なんだと!?」


 「もうすぐで倒せたのに!」と、カルキノスが目を丸くする。


「アルヴィー、ありがとう!」

「やれやれ……相変わらず危なっかしいことをしおるな、お主は」


 アルヴィーから飛び降りて健は地面に着地。彼の背後には白い龍がついており、とてつもない威圧感を感じさせる。しかし、「頑張れよ」とアルヴィーは引っ込み、健は「頑張るよ!」と威勢よく返した。凛とした表情で剣と盾を構えて、健はカルキノスの懐へ走っていく。


「うっぜえな! 腹くくってさっさと死ねってんだよ!」


 カルキノスがいきり立ち右腕の巨大なハサミを振りかざす。一発もらうも、健はすぐさま反撃して仰け反らせる。炎と氷のオーブをセットしていたため、攻撃すると同時に熱い水蒸気が発生してカルキノスを熱したのだ。断熱性のないカルキノスに対しては効果覿面(てきめん)といえる。


「てめええええぇ〜〜ッ!!」

「今だ!」

「あじゃぱああああ!?」


 舌打ちしたカルキノスは健へ突進するが、健はタイミングよく盾を突き出し――カルキノスをぶっ飛ばす。風のオーブを盾にセットしていたため、敵の攻撃を盾で弾き返した際に強風が巻き起こってカルキノスをぶっ飛ばしたのである。


「アオーン!」


 そこへヴォルフが乱入し健にツメを振りかざす。不意打ちのため防御が間に合わず、健は後退する。


「忘れてもらっては困るな、ボウヤ!」

「ヴォルフガングッ!!」


 健が怯んだところへヴォルフは鋭いツメで何度も切り裂いて追撃。健を転倒させた。


「くっ、貴様……!」


 立とうとする健だったが、顔面にパンチを受けて再び倒されてしまう。


「ジッとしてろ!」

「うわあああああッ」


 右手で健の顔を掴むと、ヴォルフはそのまま地面に引きずり回しながら疾走。健を壁に叩きつけた。


「っ……こいつ、やっぱり強い……」


 流石に上位クラスのシェイドだけあってその実力は圧倒的。頭から血を流しながら、健は改めて敵の強さに危機感を覚えた。


「ラァ!」

「えぇい!」

「ぬあっ!」


 ツメによる斬撃を盾で弾き返し、巻き起こった強風に吹き飛ばされて怯んだところを切り払う。以前戦ったときと同じで、相手は氷属性に耐性を持っている。それ以外で攻めなくてはならない。氷のオーブを外し、属性を炎だけにした状態にする。健が右手に握っているエーテルセイバーの刀身が真紅に染まっていく。やがて灼熱の炎をまとった。


「燃えろ!」

「ぬがぁぁぁ!!」


 炎の剣でヴォルフを斬りつけて怯ませる。のたうちまわっていることから、ヴォルフはやはり炎を弱点としていることがわかった。


「ガルルルルッ! やってくれたな……」


 ヴォルフが唸り声を上げながら健を睨む。両手を合わせて冷気を収束させると氷の球体を作り出し、ボウリングの玉でも投げようとしているかのように構える。


(何をする気だ?)

「アイスバースト・ストライクッ!!」


 腰を深く落として身構えている健はヴォルフの様子を伺う。すると、次の瞬間――ヴォルフは氷の球体を地面に転がした。


「なにッ!?」


 ボウリングの要領で投げられた氷の球体が呆気にとられた健に直撃し、爆発。健を凍らせて動きを封じた。


「ヴォルフガングさん、とどめは俺が!」

「よし、殺っちまえ!」


 そこへ駆けつけたカルキノスが右腕の巨大なハサミを健に叩きつけて、氷の破片と一緒に宙へ放り出す。更にジャンプしてアタックの要領で健を地面に叩き落とした。


「ガハアッ!?」


 健が衝撃で吐血する。彼のすぐ近くにあるのは、とどめを刺してやろうと息巻いているカルキノスと指を鳴らしているヴォルフガングの姿――。


「へっへっへ! 人間のひらきにしてやるぜ。癖になるんだよ、どてっ腹にハサミ突っ込むのがさあ!!」

「くそッ……!」


 片目を瞑って苦痛に喘ぐ健。彼を前にしてカルキノスはハサミを鳴らし、健を今まさに抹殺しようとしている。


「死ねぇ!!」


 カルキノスが下卑た笑いと共にハサミを振り下ろす。もはやこれまでか――と、思われたその時。


「……ッ!?」

「ぬわーっ!」


 突如として地面に衝撃波が走り、カルキノスたちを転ばせる。更に健を狙って火の玉が放たれ、健は盾を構えてそれを防いだ。


「ハッハハハハ! こんな小わっぱに手こずるとは、だらしのない連中よな!」

「!?」


 立ち上がった健が目にしたのは、大きな金棒を構えて腰を下ろしている筋骨隆々とした鬼のような姿の怪人だった。頭に獣の頭蓋骨を被っており、大きなツノが頭蓋骨を突き破っている。厳つい体は赤黒く、全身から蜘蛛の脚を彷彿させる突起を生やしている。腕が太く、かなり重量がありそうな金棒を片手で軽々しそうに持っていることから凄まじい怪力の持ち主であることが窺える。


「遅かったじゃないか、オニグモ!」

「あんたどこで道草食ってたんだ!」


 ヴォルフとカルキノスがオニグモを指差して怒る。――オニグモと、確かに彼らはそう呼んでいた。ということは、奴がツチグモとジグモが述べていたクモ族の過激派の『御大将』なのか? 健はそのオニグモを前にして戦慄した。


「こいつが、オニグモ……?」


 凄まじい殺気だ。冷酷さを露にしたまり子や、存在そのものが周囲とは格が違うアルヴィーほどではないが、圧倒的なまでの威圧感も感じる。


「どけ!」


 ヴォルフらと手を取り合うかと思えば、オニグモは金棒を振るって二体をはね除けたではないか。その姿勢からは協調性など微塵も感じられない。


「何をする……?」

「あやつを倒して、女王様を取り返すのは某だ。邪魔をするな」

「貴様、裏切る気か!」

「ふん、某の足を引っ張るなと言うておるのだ!」


 抗議をしてきたヴォルフとカルキノスに再度金棒を叩きつけて黙らせると、オニグモはゆっくりと健へ迫る。手を伸ばせば当たるところまで距離を詰めると、金棒で地面を小突いた。


「貴様か? 我らが女王を連れ去ったというのは」

「違う! 僕はまり子ちゃんを連れ去っても、監禁していじめてもいない!」


 険しい表情でオニグモへ言い放った健。オニグモは金棒を仕舞うと、身の丈ほどもある蛮刀を振りかざして健を払いのける。


「そうか、まあよい……だが、女王様を隠しているなら生かしてはおかん」


 蛮刀を担いだオニグモは、「いの一番に貴様を刀のサビにしてくれる!」と、雄叫びを上げて健へ襲いかかる。


「ハアアアアッ!!」


 オニグモが蛮刀を豪快に振るう。バックに宙返りしてかわしたものの、もし直撃すれば――。とくに今は手負いのため、健は注意を払わなくてはならない。


「逃がさん!」

「うっ!?」


 連戦による疲れから息を乱している健を狙い、オニグモは口から糸を吐き出して健を拘束。――粘着性が強いが、それだけではない。全身が痺れるような感覚に襲われて――そう、オニグモが吐いた糸は電気を帯びていたのだ。


「うわあああああ!!」

「ハッハッハッ! 某の糸は電気を帯びておってな……貴様のような小僧を捕らえることなぞたやすいわ」


 健を嘲笑うと、オニグモは蛮刀を持って接近。健に蛮刀を叩きつけて、更に腹を思い切り蹴飛ばして転がせた。武器を金棒に持ちかえると、地面に倒れている健に金棒を何度も叩きつける。叩かれるたびに健から悲鳴と血しぶきが上がった。返り血を浴びてオニグモは悦に入り、挙句健の胸を踏みつけた。喉には健の血が付着した金棒を突きつけている。


「さあ、吐け。女王様をどこへやった」

「へへ、し、知らない……教えてやんないもんね!」

「しらばっくれる気か。居場所を吐かないなら、うぬを殺してでも聞き出してやるまでよ!」

「誰が言うもんか……ううッ!」


 健を踏みにじるオニグモ。手出しは無用と悟ったか、ヴォルフとカルキノスは黙ってその光景を見ていた。ヴァニティ・フェアにとって最も迷惑な存在を消す、絶好のチャンスにも関わらず。



「どけどけェェェェ!!」



 ――オニグモが頑なにまり子の居場所を吐かない健にとどめを刺そうとしたそのとき、やかましいエンジン音を鳴らしながら一台の黒いバイクがどこからともなく突っ込んできてオニグモを轢いてぶっ飛ばした。自らもぶっ飛んだバイクは急ブレーキをかけて、座席からライダーが颯爽と飛び降りる。


「ケガはないか、東條!」

「……不破さん!」


 バイクに乗っていたのは、ネイビーブルーを基調としたバトルスーツを装着した長身で大柄な男性。左手にはみたび改造された形跡のある、メカニカルなランスを握っている。――不破だ。


「おのれ、何奴じゃ……!」

「罪無き市民と街の平和を守るおまわりさんだ、覚えとけ!!」


 少々格好付けながら不破が名乗りを上げる。絶望的なこの状況において、健には彼が希望の光と共に現れた正義のスーパーヒーローに見えた。実際そうなのだが――。


「東條、立てるか?」


 不破が健に手を差し伸べる。不破の手を取って健は立ち上がり、身構えた。


「不破さん、まだ京都に?」

「まあな。さて、新型バトルスーツのデビュー戦だ!」


 威勢よく宣言する不破。対するは残虐非道なオニグモと、ヴァニティ・フェアの幹部とその出がらし。――果たして、華々しいデビューとなるのだろうか。


「悪党どもめ、かかってこい!」


Q&Aコーナー


Q:オニグモが持ってた金棒、あれどのくらい重いの?

A:100kgの鋼鉄製です。地面に叩きつけると衝撃波が発生するぐらいパワーがあります。金棒というより、正確には棒状の武器と言うべきか。


Q:なぜ一気に湖岸の辺りまで飛んだ?

A:昔の特撮だと吹っ飛ばされたりしたときに採石場に移動してましたよね? それと同じことです。なに、きにすることはない…


Q:クモ子なにしてる! 起きろ! お兄ちゃん死にそうだぞ!

A:ねむねむ…あと、五分…

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