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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第11章 女・王・再・誕
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EPISODE205:しらみねけ、おかわりっ


 華やかな白峯邸に隠された研究室。それは地下にあり、書斎にて白峯が「せーの!」と机をずらせばその下には入口が。地下室へと続く階段だ。


「おー、ここが入口か! なるほどかっこええやん」

「これには毎度ビックリさせられるなあ」

「さあ、こっちよ。ついてきて」


 きょとんとした顔の市村を連れて白峯と健は階段を降りていく。降りるにつれて周囲の雰囲気も変わっていき、きれいな白い壁からいつしか機械仕掛けになっていた。


「着いたわよ! ここが地下の研究室」


 地下一階にある白峯の研究室。ラックには何に使うのかよくわからない癖のある発明品や薬品の数々が並び、ガラス越しには実験場が見える。ホワイトボードには資料や開発中のツールの設計図などがところ狭しと貼られている。


「なんやろう、言葉が浮かばへん……わしゃあそんくらいたまげてまっせ」

「どうも♪ こういうのってちょっと子供っぽかったかしら?」

「そんなことないです。むしろワクワクします!」

「わしも同感や。ハラハラドキドキしてますさかい、なあ東條はん!」

「はい!」


 談笑する三人。やがて男性の凛々しい声が聞こえてきた。掛け声だったので、恐らく――素振りやシャドーボクシング、千本ノックなどといった特訓をしているのだろう。実験場の方へ移動するとそこにいたのは――ネイビーブルーを基調とした装着式強化外骨格(バトルスーツ)に身を包んだ何者かだった。バイザーは赤色で、耳に当たる部分には先端が尖ったパーツがついていて、肩にも同様のパーツがついている。ボディがネイビーブルーであるため、バイザーの赤色はいいアクセントとなっている。何よりデザインが全体的にカッコいい。


「すっげえ、メタルヒーローみたい!」

「ホンマや、かっこええなー! 中に誰か入ってるんかいな」

「高岩さんがいいなー」

「いやいや、次郎さんやろ」

「伊藤さんも捨てがたいなー」

「永徳さんもええで!」


 男二人がはしゃぎ出す。とくに健は今も忘れていない少年の心と正義のヒーローを愛する血が騒ぎ出したか、目を輝かせていた。


「うふふ、警察のシェイド対策課で使われているバトルスーツよ。それの新型なの」


 このヒーローが着ていそうなスーツが何なのか白峯が簡単に説明する。「で、オレが動作するかどうかテストを行っているというわけだ」と、バトルスーツを着ていた男性がメットを脱いだ。黄土色の髪で肌が浅黒くやや人相が悪い。


「不破さん!」

「なんや、刑事さんかいな」

「なんだよその言い方は! それはないだろー」


 目を丸くする健と、不機嫌そうにして不破に目を向ける市村。市村は不破がバトルスーツを着ていたことの何が気に食わなかったのだろうか。例えるならば、ヒーローまたはヒロインが着ていたスーツの中に、ヒーローまたはヒロイン役の俳優ではなく見知らぬオッサンが入っていたようなものだろうか。きっとそうであろう。


「市村さん?」

「イッチーでよろしい」

「じゃあ、イッチー……何か嫌なことあった?」

「そりゃー決まってるやないですか。なんでこんなオッサンがかっこええスーツの中に入っとんねんちゅうだけのハナシですわ!」


 市村から呼び方を訂正するように言われてその通りにした白峯、やはり不満げに不破を指差す市村。「腹立つわー! 納得いかへんわー!」と、しきりに市村は不満を口にしている。


「市村ァ!!」


 不破が怒りに任せて市村の胸ぐらを掴む。健や白峯は思わず動揺し、市村は表情を険しくしたままだ。


「なんぼでも言うたるわい! あんたみたいなオッサンがスーツん中入っててガッカリしたってなあ!」

「なんだとこのタコ野郎!」

「ちゅーちゅータコかいなー!」

「にゃろおおおおおッ」


 白熱する口喧嘩とにらみ合い。両者ともに凄まじい剣幕で他者を寄せ付けない。だが、そんな二人の喧嘩に割って入った勇気ある女がひとり――白峯だ。


「やめなさいよ!」

「ゲエェ!?」

「ゴフッ!!」


 喧嘩両成敗。白峯が二人の襟をつかんで頭と頭をぶつけ合わせたのだ。頭にたんこぶが出来て頭の上では星が回り出し、二人は気絶した。



「――ワープに超高速移動に空中浮遊?」

「はい、風のオーブを装填している間はそんな能力が使えたんです」

「なかなか汎用性が高いわね、風のオーブって」


 ひとまず落ち着いたところで健は白峯に風のオーブが自分にどのような力をもたらしたのか洗いざらい説明した。地上を高速で走れるようになり、空中を浮遊できるようになり、挙句行ったことがある場所へワープすることも可能になり――汎用性は非常に高い。

 今は亡き烏丸元基の言葉を借りるなら、まさに『万能の力』といったところか。もっとも今の健には、烏丸ほど強い力も高度な技術も備わっていないわけであるが。純粋な風使いではないからだ。そして雷のオーブと同じで、本来持っていた力ではないからだ。


「超高速移動だと……オレと被るじゃねえか」

「でもずっと走ってたら疲れちゃいます」

「せやな、東條はんが使いこなせるようになるまではそこのオッサンの出番はなくならんやろな」

「嬉しくねぇし! つかオッサンじゃないし!」


 出番がなくなると危惧する不破に市村が言葉をかける。彼なりに不破のフォローをしたつもり――だった。実際はフォローにすらなっていなかった。


「どのくらいの時間まで走れるのか、念のためこっちでテストしてみましょ」

「はい、とばりさん!」


 一行は再び実験場へ移動する。そこにはルームランナーが設置してあり、白峯は「じゃあこの上でダッシュして。時間計るから」と健に指示を下す。


「わかりました、やってみます!」


 健は風のオーブを長剣の柄にセット。剣が爽やかなエメラルドグリーンに染まり、そこから全身に風の力が伝わった。白峯の指示通りにルームランナーの上に立ち――白峯がストップウォッチを押すと同時に走り出す。


「うおおおおーーーーッ!!」

「ッ!?」

「な、なんや!? めっちゃ速いぞ!」


 あらぶるコンベアの流れに逆らうように走り続ける、健。その速さと来たら目視が効かないほどだ。「一秒、二秒、三秒……!」と、白峯は時間をカウントしながら健のスピードに驚いていた。そして十秒を切ろうかというそのとき――


「っ」


 健の体を著しい疲労が襲った。無情にもルームランナーは止まらず突っ伏した健の体を押し流した。


「あちゃー、限界来てもうたか」

「超高速で移動できるのはジャスト十秒……十秒を超えちゃったらそれ以上は走れないわね」

「へ、ヘトヘトになる……ってことですよね?」

「ええ、今そうなってるわね」


 健が試しに走ってみてわかったことはひとつ。超高速で走れるのはぴったり十秒間だけということと、走り疲れてふらついているところを突かれて敵に攻撃されたら危険きわまりないということだ。もしかすれば、今後の特訓次第で克服できるかもしれない。そうなれば超高速で移動している状態を保ったままで戦えて、敵をほぼ完封できるだろう。――あくまで克服できたらの話だが。

 その後、新型バトルスーツの動作テストを手伝うこととなったのだがその前に休憩を取ることとなり、健も不破も一階のリビングで思い切りくつろいだ。市村はただ見ていただけなのでとくに疲れてはいなかったが、ついでということで喜んで一服した。休憩中にマニュアルを渡されたので健と市村はそれを読んだ。一見複雑そうだがやろうと思えば必ず出来る。そう考えながら。



 そして休憩が終わり――動作テストが始まろうとしていた。



「おっ! まるでビーフ○イターだ!」

「ホンマやな、でもわしにはギ○バンかブルースワ○トっぽく感じるけどなぁ」


 スーツを装着した健と市村は手元を見たり、ストレッチをするなどして待機していた。もう少し重たいイメージがあったのだがいざ着てみれば意外と軽く、むしろぴったりフィットしている。白峯によれば、素材に軽くて頑丈な金属を使用しているからだそうだ。二人が装着しているこのバトルスーツは、不破が装着していたものとほぼ同じデザインである。だが指揮官である不破のスーツと区別をつけるためかメインカラーはグレーになっており、バイザーは青緑。


「準備はいい?」

「はい! いつでもオッケーです!」

「わしもや!」

「オレもバッチリです!」


 白峯の掛け声に威勢よく返事する三人。健は右腕を前に出して拳をギュッと握りしめ、市村は愛用の大型銃・ブロックバスターを勢いよく回す。不破は既に身構えて臨戦態勢に入っている。



「では……はじめッ」



 動作テストが始まった。まずは実験場の中をスーツを装着したまま何周出来るかを競い(※ただし特殊な能力は使用せず)、その次は砲丸投げを、更にその次は取っ組み合いを行った。意外なほど機敏に動けたためか、それとも各々の持ち前の実力のお陰か取っ組み合いの際はそれぞれ互角に渡り合えた。しかし、三人の中では経験の差から不破が一歩リードしていたようである。――こうやってバトルスーツを装着して戦うのも悪くはないと、健と市村は実感した。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「とばりさん、今日はありがとうございましたー!」

「忙しいところ来てくれて本当にありがとう! 伝承についてわかったらまた連絡するねー」

「はい、お邪魔しました!」

「また来てネ〜」


 白峯邸で過ごしているうちに時刻はいつの間にか十六時過ぎになっていた。白峯に別れを告げて健は白峯邸を去っていく。行き先は無論みゆきの家だ。


「さて、私も頑張んないとね!」


 健を見送ると白峯は玄関からリビングへ移動。ソファーであぐらをかいて眠りこけていた市村と不破の懐へ行くと、「起きてっ」と大声を出して二人を驚かす。そのまま二人は飛び起きた。


「突然なんですのん、ビックリした〜……」

「やっと寝られると思ったらこれだぜ、くっそー」


 市村はキョロキョロと辺りを見回し、不破は頭をかきながら愚痴をこぼす。


「市村さん、何か用があってここに来たのよね?」

「ん……ああ、そうでんな。白峯はんを一流の科学者と見込んで頼みがあんねん」

「頼みって?」


 白峯に頼みたいことがあってここまで来たという市村。それを聞いて白峯は表情を真剣なものにする。



「いきなりですまんけど、新兵器……作ってもらえんやろか?」

「えっ?」


Q&Aコーナーだ!


Q:高岩さんとか次郎さんとか永徳さんとか言ってたけど、あれはどういう意味?

A:とあるヒーロー番組のスーツアクターさんの名前です。みんなすごい人ばっかりですよ。とくに次郎さんは動きのキレが半端じゃない!


Q:ギ○バンってメタルヒーローなの?

A:いいえ、宇宙刑事です。ギンギラギンでかっこよく見えません?


Q:バトルスーツは装着までいくら時間がかかりますか?

A:わずか0.05秒に過ぎない。もう一度ご覧いただこう。

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