表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第2章 敵は非情のセンチネルズ
19/394

EPISODE17:いろいろと楽じゃない

「盗んだバイクで走り出す~、なんつってなぁー♪」


 ファミレスから出た不破は、バイクにまたがり再び何処(いずこ)へと向かおうとしていた。食後の運動といわんばかりに、更なる鍛錬を積む気だ。健のように家でのんびりしているわけではない。


「む……あいつは」


 道路沿いのスーパーマーケットを横切ったところで、何の偶然か不破と健がばったり出くわしてしまった。不破はギロリと鋭く、健を睨んでいた。


「ほぉ~、誰かと思えばずるい東條じゃねえか」

「ず、ずるいって何が!?」


 不破が憤った。バイクから降りて健に一発ブチかますと、そのまま胸倉を引っつかむ。


「とぼけるなよ。オレはな、血のにじむような努力を重ねてエスパーになったんだ。だがお前はどうだ? まぐれで強いシェイドに会って契約して強力な能力も手に入れてよ……。まるで無駄な努力と否定された気分だった。それが嫌だったんだ! てめえみてェなクソガキでも頭使えば分かることだろ!」


「そ、それは違う。確かに強いかもしれないけど、まだ扱いこなせてるわけじゃない。だからどっちにしても不破さんのほうが僕より……」


「うるさい黙れ! 三下(アマチュア)が口答えするな!」


 健をまくし立てた末に地面へ叩きつけると、バイクへまたがった。エンジンを鳴動させ、マフラーから煙を噴かせる。まるで不破の怒りに呼応するかのような激しさだ。まるでバイクではなく、鼻息荒い暴れ馬のようだった。


「いいか! よーするに、いきなり上位のシェイドと契約できるなんて普通じゃありえねえってことだ。よーく覚えておけ、じゃあなクソガキ!!」


 怒り爆発のアクセル全開で、不破は疾風のごとく走り去っていった。


「……悪い事、しちゃったのかな。ま、いいや。買出し行こーっと」


□■□


 スーパーといえば、特売。スーパーといえば、半額。スーパーといえば、争奪戦。


「ラッキー、空いてる♪」


 健は今、おばちゃ――もとい、奥様方の戦場へと足を踏み入れた。とはいえ、今は昼時。この時間帯なら比較的空いており、品定めもやりやすい。だが、問題は夕方である。主婦たちが一斉に駆け込んでくるのだ。そうなってしまえば、ひとたびスーパーマーケットは文字通りの戦場と化す。少々大げさだが、事実である事をあえて言っておこう。


「どれにしようか……? あ、アレとか良さそうだね」


 買い物というのは意外と迷うものだ。なるだけ安いのを見つけたり、品物の分量を見て買うか買わぬか判断をしなければならない。値段だけではなく、分量も見て買うことを心がけるべきである。この頃はごちそう続きで食費がかさばっていたため、健はすぐに食べられるようなものや比較的安いものをカートへ入れていた。バイト代が高いとは言えども、使いすぎは厳禁なのだ。


「440円になりますー♪」


 レジではかわいらしい女性店員が出迎えてくれた。健が買ったものは、鶏のからあげのしょうゆ味が1パックと栄養ドリンク1本、そしてバナナの束。それぞれ194円と88円、158円。割と安上がりだ。健は笑顔をレジ打ちの女性に振りまくと、買ったものを袋に詰めてスーパーを去っていった。


□■■


「ただいま~」


「おぅ、早かったな」


 健が玄関のドアを開けリビングへ入ると、アルヴィーがリモコンとヌンチャクのようなコントローラーを持ってゲームを遊んでいる姿が目に留まった。今日の彼女は白いワイシャツに黒いミニスカートを穿いており、例によってボタンが弾けそうなほど胸が突き出ていた。更に、スリットから太ももが見えそうで見えない。きわめて扇情的なスタイルだ。それはネクタイをぶら下げたゴリラと、ぼうしを被って服を着たチンパンジーのゲームだった。リモコンやヌンチャクを振って地面を叩いたり息を吹きかけたり、転がったりするようだ。


「風呂場、洗っておいたぞ。5時以降に沸かしてくれんかの」


「わかった、サンキューな!」


 手洗いうがいと着替えを済ませると、棚にしまったおいたビスケットを取り出しテーブルへ。アルヴィーもゴリラのゲームを中断し、イスに座った。


「今日は何か変わったことはなかったかの?」


 健は今日の出来事を洗いざらい説明した。スーパーに行く際に、不破に出会って非難されたことだ。


「そうか、そういうことがあったのだな」


「どうしよう? 僕、不破さんにとって悪いことしちゃったのかな……」


「そう気にすることもあるまいて。恐らく不破殿は頭に血が上っているのだ。彼の気が済むまで、言いたいことを言わせてやればいい。ほとぼりが冷める頃には、お主の事を許してくれるはずだ」


 そう聞いて健もホッとしたのか、胸を撫で下ろした。辺りがすっかり寝静まった頃、アルヴィーは眠れずにいた。爆睡中の健の横で、考え事をしていた。


 

 ――不破殿はなぜ健を罵倒したのだ? 単にひがんでいただけだろうか。彼自身はとくに弱くはないはず。むしろ今の健より強いと思うのだが。そんなに健が上位のシェイドである私と契約(ディール)したのが気に入らなかったのか?だが、あの能力は、確かに強力だがクセがあって使いこなすのは困難だ。それに比べたら、超高速で動ける不破殿の能力のほうがシンプルで使いやすいし、どういったモノかも覚えやすい。それに上級だからといって、必ずしもその能力が強いとは限らない。むしろ通常のシェイドの方が能力が使いやすいことも少なからずある。いろいろ考えたが――結局はただの嫉妬、なのだろうな。だが、その嫉妬から健への殺意に駆られることも出てくるかもしれない。いずれにせよ、不破殿と付き合うには用心がいるだろう。


「いかん、ムラムラしてきおった……んんっ。お主、寒かろう…………私があたためてしんぜよう」


 考え事をして体が興奮してきたのか、アルヴィーはおもむろにその透き通るような白い乳房をはだけた。そしてそのまま、健に抱きついた。翌日。健が目を覚ますと、すぐ隣で豊満な胸をさらけ出したアルヴィーが自分に抱きついていて興奮してしまったという。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ