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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第2章 敵は非情のセンチネルズ
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EPISODE16:お医者さんなんて……

 不破は川の下流で発見されたあと、緊急で市民病院へと搬送された。

 大きなダメージは負っていたものの一命をとりとめ、現在は病室で入院生活中だ。


「っあ〜…………」


 不機嫌そうに不破が小さく唸る。彼のベッドの近くには、小さめのテレビと棚、窓辺には花瓶が置かれていた。

 入院してから3日。最初は薬品臭くて嫌だった病室にも、今ではすっかり慣れてしまった。


「不破さーん、調子どう? おれは元気だよぅ」

「いいなあ。オレはもう元気ないです……さっさと出たい!」


 同じ病室の入院患者ともうまくいっていた。誰もかも、気さくで話しやすい人ばかりだ。

 しかし不破はいまの状況に不満を持っていた。早く動きたくて体がウズウズしている。だが、まだ怪我は完治していない。このままでは体がくさる。


「速く外の空気が吸いたいなぁ」


 ため息をつきながら外の景色を眺めていると、年季の入った男性の声が聞こえた。担当の医師が入ってきたのだ。

 これに関しても不破は、あまりよく思っていなかった。彼は本当は、かわいいナースか美人な女医に自分を診てもらいたかった。


「お体の具合はどうですかなァ?」


 しかし現実は非情である。彼を診察してくれたのはオッサンだったのだ。それもハゲ頭な上にケツアゴで悪人ヅラをしており、実にうさん臭い。


「せんせェ〜、俺はいつ退院できるんですかァ?」

「そうですね、あと2日もすれば退院できますよ。あなたの怪我ももう、だいぶ治ってきてますし。グヘヘへ」


 不快な笑い声を上げると、医師はカルテに不破の様子を書き込んだ。


(こんなにイライラしたのは、何週間ぶりだろーな……ギギギ!)


 不破のストレスはたまる一方だ。しかし入院生活はもうすぐ終わる。あと少しのがまんだ。もう待ちきれない。早く出せ。こんな薬品臭い部屋とはおさらばしたい。


―翌々日―


「あいたたた……」



 ついに不破は薬品臭いあの病室から脱出できた。

 ランス片手に足を引きずりながら、今日も元気に不破は歩いていた。


「くそッ、何があと2日で退院だよ。まだ身体中そこかしこが痛いっつーの……ヤブ医者め、さてはめんどくさくなって俺をロクに診察しなかったな」


 「ロクなやつがいねえ」と喘ぎながらも、不破は自宅を目指す。やっとこさ、バイクを停めてある駐輪場へ辿り着いた。


「ウチ帰ってさっさと寝よ……」


 きしむ骨に鞭打ってバイクに乗り込むと、そのまま自宅へと直行した。

 もちろん風呂にはキッチリ入浴し、歯みがきしたあとはそのまま寝てしまった。


―さらに翌日―



 鍛練を欠かさない不破は、朝食と支度をすませるとすぐにトレーニング場にしている三丁目の空き地へ向かった。

 まずは鉄パイプをランスに見立て、素振り。次に、なぜかヌンチャクを振り回す。ゲーム機のリモコンにつけて遊ぶやつとはまた違う。あれはストラップのヒモをつけなければ危ない。

 最後に、空のドラム缶をシェイドに見立て必殺技を当てる練習。このあと、近所のオジサンに怒られてしまったらしいが、それはまた別のお話。


「ま、こんなもんか」


 そのとき、不破の腹の虫が唸りを上げた。『I'm HUNGRY!』と。


「早いなあ、もう昼メシの時間だ」


 気付けばもう昼だった。腹が減るのも仕方ない。不破は昼食をとる場所を探しはじめた。途中でガソリンが切れ、ガソリンスタンドの世話になってしまったが。


「いっぺんココ行ってみるかね」


 いろいろ巡った結果、ファミリーレストラン『トワイライト』に決まった。

 みゆきがバイトをしているファミレスで、健もちょくちょく来ている場所だ。


「いらっしゃいませ~♪」


 藤色の髪をサイドテールでまとめた、くりっとした赤紫の瞳がかわいらしいウエイトレスが不破を出迎えてくれた。

 不破は彼女に見覚えがあった。この前サソリのシェイドに襲われていたところを助けた少女、みゆきだ。

 これも運命か、と、呟くと、不破はみゆきに空いている席まで案内された。



「ハンバーグステーキの三点セットで」



 三点セットとは、メインディッシュにライスと野菜サラダを付け加えた組み合わせのことだ。

 この場合は、ハンバーグステーキにライスとサラダもついてくる。



「ハンバーグステーキの三点セットですねー。かしこまりました!」

「ウヒヒ、かわええのう~」


 にこやかに笑顔をふりまき、みゆきは注文の品を受け取りに向かった。

 不破はそんな彼女に見とれてニヤニヤしていた。当然他の客は、そんな彼を気持ち悪がっていた。

 みゆきはバイトの身ながら、ホール担当としては非常に優秀だった。

 一度聞いた事を忘れないようしっかりとメモし、ていねい正確にかつ速やかに注文の品を配っている。その働きぶりから職場の先輩からも好評を得ており、正式採用も時間の問題だとか。



「うーん、あのコ遅いなあ。早くこねえかなあ……」


 不破が暇そうに頬杖をついて窓の外を眺めていたのも束の間、注文していたハンバーグステーキの三点セットがマッハでこっちにやってきた。

 これにはさすがの不破も驚いたようで、目を何度も瞬きしながらハンバーグを凝視していたという。


「う、うめえ! 来てよかった!」


がっつりいただくと、不破はトワイライトをあとにした。


「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております♪」


 みゆきの黄色い声とかわいらしい容姿に、不破はすっかりメロメロだ。健から彼女を奪ってしまわなければいいのだが。

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