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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第9章 死神が住む街
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EPISODE168:夜の街は危険がいっぱい PART2

 ぼろ布を纏った幽霊か、ガイコツの神官のような姿をしたシェイド――ファンタスマゴリアとの戦いが始まった。長剣を構えて健は突っ走り斬りつけるが、斬ろうとした瞬間に相手の姿がゆらりと消えてしまう。


「消えた……?」

「ほら、こっちだ!」

「うあッ」


 健のうしろからファンタスマゴリアの声がする。振り向いたときには既に遅く、ファンタスマゴリアは右手に持ったドクロの杖を健に叩きつけた。


「このッ!」


 健は歯を食い縛り反撃する。だが相手はまた消えた。


「まただ。攻撃が当たらない!」

「ハハハ! おまえの目は節穴か? そらそらそらそらぁ!!」


 健を嘲笑いながらファンタスマゴリアが姿を現す。左の手のひらをかざして光を収束させると、紫色の弾を一度に何発も放った。

 紫色の弾の標的はもちろん健。盾を構えてすべて弾き、やり過ごすが――その隙を突かれて背後に回り込まれてしまった。


「ッ……瞬間移動か!?」

「ンフフフフフ。驚いたかね?」


 回り込んだファンタスマゴリアが戸惑う健を左手で殴って吹き飛ばす。地面に体を叩きつけられるも、健はこれしきのことではくじけない。すぐに立ち上がり身構えた。


「健、ヤツの術に惑わされるな。あやつは魔法使いではない。どんなマジックにもタネはある」

「ま、マジック? 確かにあいつの攻撃は魔術かなんかみたいだけど……」

「とにかく、ここは冷静に行こう」


 右手に黄金色に輝くドクロの杖を構えて余裕の笑みを浮かべるファンタスマゴリア。彼を見て健とアルヴィーが話し合う。確かにアルヴィーが言うように、ファンタスマゴリアの使う摩訶不思議な術には何か裏がありそうだ。妖しく輝いているドクロの杖に何か秘密が隠されているのかもしれない。


「死ねえ!」


 ファンタスマゴリアがドクロの杖をかざす。両目から光線が放たれて、周囲を焼き払い爆発を起こした。周りは煙幕に包まれるが――その中を突っ切って健とアルヴィーが飛び出した。


「ぬっ……」

「お返しだぁぁぁぁぁ!!」

「どああああああぁ!!」


 剣を前に突き出して回転しながらの体当たりが炸裂! ファンタスマゴリアを突き飛ばした。


「うぬぬ……少しはやるな」


 築かれた瓦礫の山の中からファンタスマゴリアが起き上がる。法衣についたホコリを手で払うと、「だがこれならどうかな?」と言い放ち――空へと舞い上がったではないか。


「なにっ!?」

「ンフフフ! これでお前らの攻撃は届かぬ」


 いったいどうやって空へ上がったのだ――と、健が狼狽する。対するファンタスマゴリアは空中を浮遊しながら杖から光線を放った。爆発が起き、それに巻き込まれた健は地面を転がる。


「こやつめ、良くも健を!」


 だが、空中を飛べるのはファンタスマゴリアだけではない。アルヴィーは口から青い炎を吐き出してファンタスマゴリアを燃やす。


「ぬおっ! くッ……!」


 法衣が燃える。ファンタスマゴリアは火を消そうと体を激しく回転させ、近くにあった噴水へと突っ込んだ。消火してすぐに水しぶきを上げて飛び上がり、「油断していた……貴様がいることを忘れておったわ」とアルヴィーに言う。


「そうか、あいつ火に弱いのか……いてて」


 健が起き上がって宙に浮かぶファンタスマゴリアを見上げる。彼は頭から血を流しており、頬にも傷を負っていた。


「だが、貴様らなどこのファンタスマゴリアの敵ではないッ!」


 両腕を広げ、ファンタスマゴリアは大の字になって滑空。そのまま健めがけてUの字を描くように体当たりした。


「今だッ」


 だが、これは好機。やるなら今だ。体当たりしてきたファンタスマゴリアを長剣を構えて迎え撃とうとするが、しかし――斬ろうとした瞬間にファンタスマゴリアは煙状になって健の体をすり抜けた。


「……なんだと……!?」

「体を煙に変えた……?」


 驚愕の表情で健とアルヴィーが呟く。健のうしろの、少し離れたところに降り立ったファンタスマゴリアは振り向き、左手に電流を走らせる。


「フッフッフッ……ショックのようだな?」

「くそっ!」

「いい気味だ。絶望を抱えながら死ね!」

「うわぁぁぁぁーーーーッ!!」


 左手から電流を放ち、健を感電させる。「もういっちょ!」と今度は鬼火を放って健に命中させて爆発させる。健の体が衝撃で宙に浮き上がり地面へと落下した。


「ウッ……」

「健、しっかりせい!」

「だ、大丈夫さ。このくらいでくたばってたまるか……」


 アルヴィーが人の姿に戻り健に駆け寄る。彼女に介抱されながらも健は立ち上がり身構える。


「ほう、あれだけの攻撃を受けておきながらまだやる気かね?」

「当たり前だ。お前なんかには負けない!」


 剣の切っ先をファンタスマゴリアに向けて健が叫ぶ。いつものややだらしない彼と違って力強く、何より勇敢だ。


「ほざけッ」


 ファンタスマゴリアがドクロの杖を振り回し放り投げる。すると周囲に激しい稲光が降り注ぎ健とアルヴィーを襲った。健は避けきれずまたも感電。アルヴィーも同様に痺れた。


「お前たちに勝ち目など無いわ! そこで見ているがいい!」

「うあああああああ!!」

「くっ……ああああああああッ!!」


 杖をキャッチして、今度は二人の足元に幾何学的な紋様が刻まれた魔方陣らしきものを発生させる。全身に激痛が走ると、健とアルヴィーは身動きが取れなくなった。


「甲斐崎社長と我々に逆らうものは、死ぬのだ!!」

「き、貴様ぁ……汚いぞ……!」

「ハッ、何とでも言え!」


 苦痛にあえぐ健とアルヴィー。ファンタスマゴリアはにやつき、「冥土の土産に教えてやろう」


「我々はあるものを探していてな。いま仲間がこの街で一番大きくて有名な学校に向かっている」

「まさか……天宮学園高校か!?」

「ンフフフ! ご名答! 私がお前たちと遊んでいる間に、仲間が『風のオーブ』をじっくり探す作戦だったのだ」

「くそ……!」


 作戦のネタをバラすファンタスマゴリア。一方健とアルヴィーは激痛だけではなく激しい疲労に襲われ、地面へと膝を突いてしまう。


「もし止めに行くなら早いほうがいいぞ? まあ、私に構っている時点で既に手遅れだがな」

「うぐっ……」

「はぁ、はぁ……」


 あえぐ二人を見下すファンタスマゴリア。そのガイコツ顔の目が赤く光る。


「さて、次にお前たちをどう料理してやろうか――。鬼火で骨まで焼き尽すか、冷気で魂まで凍らせるか、それとも稲妻で黒焦げにしようか? 迷うところだなあ……フヒヒ」


 左手に薄青色の鬼火を出したかと思えば次は凍てつく冷気を出し、最後には弾ける稲妻を出す。健とアルヴィーを完全にもてあそぶつもりだ。


「ん?」


 ――そのときだった。ファンタスマゴリアの背後から急にエンジン音が聞こえてきたかと思えば、漆黒のバイクにまたがった何者かが突っ込んできて――。


「な、なんだ!?」

「うおらあああああああああァァァァァ!!」

「グアアアアアアアァ!!」


 ファンタスマゴリアを轢いて突き飛ばし、自身も急ブレーキを利かせてバイクを停めた。健とアルヴィーは突然の出来事に戸惑いながらも、ヘルメットを取った謎のライダーの素顔を見て――安堵の表情を浮かべた。


「不破さん!」



「ったく、世話かけさせやがって! 心配してた通りだったぜ」

「不破殿、かたじけない」


 ファンタスマゴリアが大ダメージを受けた影響か魔方陣は消え、健とアルヴィーは身動きが取れるようになった。「ありがとうございます!」「お主が来てくれたお陰で助かった!」と二人が礼を告げると、「よせやい、照れるじゃねえか」と頭を掻いた。


「ところで不破さん、家のほうは?」

「大丈夫だ。みゆきちゃんと白峯さんに留守番を頼んでいる」


 ニッと口元を持ち上げて不破が健の疑問に答える。いらぬ心配だったな、と、健は胸を撫で下ろした。


「――それより、話は聞かせてもらった。ここはオレがやる。お前らは天宮学園に急ぐんだ!」

「だが、敵は上級シェイドだ。お主ひとりだけで太刀打ちできる相手では――」

「いいから急げ! オレの事なら心配はいらない!」


 心配する二人に「早く行け! このままじゃ敵の思うつぼだ!」と叫び、天宮学園へと向かわせようとする。「不破さん……わかりました、よろしくお願いします!」「ヤツは幻術の使い手だ。決して惑わされるな」とあとのことを不破に託して二人は天宮学園へと向かった。



「虫ケラがぁ……」


 気絶していたファンタスマゴリアが起き上がる。


「貴様、学校で先生から習わなかったのか? 今のは立派な交通違反だぞ……」

「今回は相手がシェイドだから良いんだよ」

「ちぃっ!」


 舌打ちし、薄青色の鬼火を地面に走らせるファンタスマゴリア。機敏な動きでとっさに避ける不破だったが、そこに鬼火がもう一発飛んできた。しかもかなりのスピードだ。


「しまっ……ぐはっ!」


 鬼火が弾けて不破が吹っ飛ぶ。起き上がって不破は加速をつけて疾走し、一気に間合いを詰めてファンタスマゴリアに斬りかかる。


「警察の犬め、少しはやるな」

「そりゃどうもッ!」


 メカニカルなランス型の武器と黄金色のドクロの杖がぶつかって火花を散らす。相手の姿勢が緩んだところに一発入れ、もう一発入れようとしたが――ファンタスマゴリアは煙状になり姿を眩ませる。


「なに、消えた!?」

「うしろだ!」


 ファンタスマゴリアは不破の背面をとっていた。杖で殴りかかり、次は反対側に向けて突き刺して吹き飛ばす。吹き飛ばされた不破の右肩からは豪快に血が噴き出していた。


「うぐ……ッ」


 右肩を押さえながら立ち上がる不破。


「流石に上位クラスってだけはあるな……」

「当たり前だ。お前のようなカスに私は倒せん」

「言ってくれるなぁ……!」


 ファンタスマゴリアが不破を嘲る。だが不破はこの程度では屈しない。受けた傷を押してでもランスを手に持ち、激しく振り回して放電する。電流はファンタスマゴリアに命中し、うめき声が上がった。


「貴様のようなゲス野郎は、このオレが断じて許さんッ!」


 果たして不破は、この悪辣きわまりない幻術師を倒すことが出来るのだろうか?


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