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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第8章 太陽とビキニと夏の陣
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EPISODE145:貝殻集めとカニ怪人

「よーし、今日も思い切り遊ぶわよー!」

「おー!」


 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもの。南来栖島に来て2日目、健たちはまたビーチへ泳ぎに来ていた。白峯をはじめ、みんなとても楽しそうだ。健と不破はのぞきの件で十分反省し、一緒に泳ぐことを許してもらえた。ただ、代わりに今後は自重するようにとキツく叱られていたが――。


「それじゃ白峯さん、何して遊びます?」

「そうねー……うーんと」


 健からそう聞かれて白峯が顎に手を当てる。周囲も「何して遊ぶんだろう」と少し落ち着かない様子だった。少し経って白峯が何か思いつき、「じゃあこうしましょ!」


「みんなで貝殻拾いましょ。いちばん多く集められた人が優勝ね」

「あっ、貝殻集めですか? やるやる、やるー!」

「僕も!」

「わたしもー!」

「オレもッス!」

「混ぜて混ぜてー!」

「よし、私もふるって参加してみようかの」


 宍戸、健、みゆき、不破が嬉々として手を挙げる。遅れてしまわないようにまり子とアルヴィーも挙手し、かくして貝殻拾い競争が幕を開けた。


「うし! 大漁大漁!」

「やった、一度に三つも手に入った!」

「貝じゃないけどヒトデ見つけたよ〜!」

「おいおい! それ関係ないから!」


 不破や健のように真面目に貝を探して大量に手に入れるものもいれば、まり子のように貝そっちのけでヒトデを拾うものもいた。この浅瀬には貝殻やヒトデが多い。海中に潜って辺りを見渡していれば嫌でも見つかるのだ。


「いいわね~! みんなその調子よ! けどあたし、でっかいの見つけちゃうんだからね」

「やば……。このままじゃ負けちゃう!」

「じゃあみゆきちゃん、一緒に集めましょ」

「ハイ! よろこんで!」


 もちろんあの三人だけでなく、白峯やみゆきに宍戸も楽しんでいた。白峯は他のものを応援しながら自身も貝殻を掻き集め、みゆきと宍戸は共同戦線を結ぶ。このままでは負けてしまうと、お互いに少し焦っていた。賢明な判断だ。


「こっちはハズレだな。砂利と石ばっかりだ……」


 その一方、アルヴィーは難航していた。確かにこの浅瀬は貝殻が良く流れついている。だが全体に埋まっているとは限らない。中には石ばかりの区域もある。彼女は今、ハズレを引いてしまったので当たりを探しているのだ。


「少しだけでもいい、見つからんかのぅ」


 少し心配になって、アルヴィー。少し深いところに潜れば見つかるかもしれない。そう思いながら彼女は潜る。見つけたのは砂にへばりつくヒトデと海中を流れゆく藻。巻貝や小さな二枚貝も散らばっていた。


「おお……っ」


 砂の中から目(あるいは触覚)だけを出して様子を伺っているような何かもいたが――彼女の興味はそちらには向けられていない。アルヴィーが注目していたのは自分の体より少し大きな貝を背負って歩くカニのような生き物。

 おなじみヤドカリだ。成長するにつれて別の貝を探し、それを背負う。これを繰り返して生きていく個性的な甲殻類だ。まるで玩具屋で面白そうなオモチャでも見つけた子供のように目を輝かせ、アルヴィーはてくてくと底を歩くヤドカリを鷲づかみ。


「ヤドカリ見つけたぞー!」


 ヤドカリはアルヴィーの手から逃げ切れずそのまま捕獲に成功。嬉々とした様子で水面に上がり思わず叫ぶと、皆がいる浅い部分まで向かっていった。


「や、ヤドカリ? すごいじゃない! 見せて見せて」

「ほら、こいつだ。なかなか愛くるしい……」


 手の中でうずくまるヤドカリを白峯が見つめる。「すごーい……確かにカワイイ」と呟いた直後、「アルヴィーさんがヤドカリ見つけたそうよ! みんなも見に来てごらん」と他の五人に呼びかけた。この珍しい体験を一人占めするのは流石にずるいと思ったのだろう。


「すっげーヤドカリだ! 生で見るの初めてなんだよね。やるじゃんアルヴィー!」


 水中メガネを外してヤドカリを見た健が一言。目を輝かせたり飛び跳ねたりなどして、幼少時代に戻ったかのように大はしゃぎしていた。


「しかしヤドカリとはまーた珍しいのを拾ってきたな。いや、海ならどこにでもいるよな……」


 感心を示しながらも顎に手を当てる不破。確かにどこにでもいるが――。


「結構かわいいよね~!」

「ああ、そうだな。このまま飼いたいぐらいだ」

「入ってる貝も大きいし、シロちゃんの勝ちでいいんじゃないかな~?」


 まり子が微笑みながら提案する。隣にいたみゆきは「まず白峯さんに聞いてみましょ。アルヴィーさんの勝ちでもいいですか?」と白峯に持ちかける。「うーん」と少し難色を示すもすぐに笑みを浮かべ、


「うーん。貝の質じゃなくて量で決めたかったんだけどねー……まあいっか! アルヴィーさんの勝ちです、おめでとう!」


 深いところまでわざわざ潜りに行ったアルヴィーを優勝へ導いた。彼女の勝利を讃えるように健たちは歓声を上げ、盛大な拍手をアルヴィーに送った。たまにはちやほやされるのも悪くない――と、アルヴィーはちょっぴり嬉しくなった。

 ――しかし、実はアルヴィーには引っかかることがあった。先程見かけた触覚のような謎の物体だ。アレは新種の魚か何かの目だったのだろうか? それとも――。嫌な予感がしてならない。


「ひゃあ!?」

「ま、まり子ちゃんっ!?」


 予感が的中した。まり子の周囲で急に水柱が吹き上がったかと思えば、その中から何者かが飛び出してきたではないか。何者かはまり子の動きを左腕で封じると彼女の喉に巨大なハサミをあてがい、そのまま人質にする。


「やめてよ……その手を離しなさいよ!」

「フンッ」


 まり子を人質に取ったのは、体の色がオレンジ色で右手が大きなハサミのような形になっているカニのような怪人。全身が鎧のような硬い殻に覆われており少々いかつく、それでいて若干鋭い。頭部からは触覚が生えており、鋭い目は緑色に光っていた。

 標準的な体型ながらも全体的に堅牢かつ重厚な雰囲気を漂わせており、ロボットか、あるいはパワードスーツを連想させる。恐らく先程アルヴィーが見かけた目のような触覚の持ち主だろう。


「誰だお前は!?」

「黙って戦え!」


 健が問う。だがカニの怪人は聞く耳を持たず、右腕のハサミからレーザーを発射。爆風と共に水しぶきを吹き上げ、健たちを遠ざける。


「あいつ、あのチビを連れさらう気か?」

「わかりません。ただ、どっちにしてもほっといたらマズいですよ!」


 いきなり現れたカニのシェイドを前に緊迫しながら、不破と健はどこからともなくお互いの武器を取り出す。不破はランスとバックラーを携え、健は長剣と盾を携えた。準備は万端だ。


「健、気をつけろ。そやつはヴァニティ・フェアかも知れんぞ!」

「わかった。アルヴィー、みゆきや白峯さん達のこと頼んだよ!」

「承知した!」


 みゆき達のことをアルヴィーに託し、健はカニの怪人目掛けて走っていく。もがくまり子を拘束したまま、カニの怪人は右腕からレーザーを発射。その中を切り抜けてカニ怪人の懐に飛び込み、一発斬りつける。


「どうした、そんなものかぁ?」

「何ッ!?」

「おらよ!」


 だがカニの怪人はビクともしない。それどころか健の攻撃を弾き、ひるんだ隙を見計らって右手のハサミで殴り飛ばした。水面に叩きつけられてまり子が「お兄ちゃん!?」と悲鳴を上げるが、健は立ち上がり再び武器を構える。これしきのことでへこたれない健の姿を見て、まり子は安堵した。


「バカめ。そんなナマクラがこのカルキノスに通じると思ったら、大間違いだ!」


 勝ち誇った気になるカルキノス。だが気を抜いた隙に「むうっ」と眉をしかめたまり子に左腕に噛みつかれ、あまりの激痛に悶えている隙に逃げられてしまう。「くそ、逃がすか!」と走り出すカルキノスだが、彼をすれ違いざまに不破が攻撃を加えて妨害する。


「不破さん!」

「勘違いすんな。そこのチビを助けようと思ったわけじゃない。このカニ男を倒したいだけだ」

「フフッ。意地張るなんて素直じゃないのね。そういうとこかわいいわよ」


 健のそばでくすり、とまり子が笑う。「う、うっさい! そんなんじゃねえよ!!」と不破は少し照れながら即座に否定した。


「ちっ! ……今の無防備なお前ら相手ならラクに殺せると思ったんだが、今日は分が悪い。ここはいったん退くか」

「逃がすかよ!」


 舌打ちするカルキノス。不破は退却しようとする彼を超高速で追うが、「鬱陶しい!」とカルキノスはハサミを叩きつけて不破を落とす。更に「これでも食らえ!」と口から大量に泡を吐き出し、それを爆裂させて目くらまし。戸惑っている隙を突いてカルキノスは逃亡した。


「しまった! 逃げられた……」

「まあいいさ。どうせまた出てくるだろ……うっ」


 何はともあれ戦いは終わった。武器を仕舞う二人だが、突然不破が右肩を押さえて悶える。よく見ると右肩から血を流していた。


「大丈夫ですか!?」

「このくらい何ともない。お前はどうなんだ?」

「僕なら大丈夫です」


 「なら安心だな」と、不破。彼の肩を持って健はアルヴィー達の元へ戻る。


「しかしあいつ……何だったんだろう?」

「分からん。ただ、ひょっとするとヴァニティ・フェアが絡んでいるかもしれん。今後も気をつけたほうが良さそうだ」


 腕を組みながらアルヴィーが催促する。しかし健の目線は主にアルヴィーの胸へ向けられていた。無理もない、彼女が今身につけているのは際どいデザインの水着。彼女の豊かな胸元を強調しているのだからどうしても目が行ってしまう。これが煩悩か――。


(しっかし色っぺえなぁ~……ひひひ)

「ん? 健、今の話聞いておったか?」

「え? あ、ああもちろん! ちゃんと聞いてましたよ、ええ! お、おっぱいばかり見てたわけじゃないからね!」


 などと健は供述しているが、バレバレだ。その証拠に彼の目は泳いでいた。聞くところによると、右利きの人間は嘘をついているときに瞳が右上に泳いでいくのだという。健は右利きだ。ということは――いや、それはもう分かりきったことだ。あえて何も言うまい。


「フフッ! そんなこと言っちゃって。バレバレよ、お兄ちゃん」

「ち、違うってば! いやホントに!」

「ははは、こいつめ。顔に私はスケベですって書いてあるぞ〜?」


 まり子とアルヴィーにそのことを見透かされ健は慌ててそれを否定。あまりに必死だった為か不破はバカ笑いし、みゆきと宍戸は笑うのを堪え、白峯は腹を抱えてケラケラと大笑い。このように周囲には笑いの渦が巻き起こっていた。


「ひ、ひどいよみんな……は、ははは」


 苦笑いしながら、健。――と、その時彼の腹の虫が鳴った。健だけではなくみゆきも不破も、宍戸も白峯も、そしてアルヴィーとまり子も。


「……みんな、おなか空いてきた?」


 念のため確認をとる白峯。すると全員が首を縦に振った。考えていることはみな同じということだろうか。


「そっか。それじゃあみんな、海の家行きましょうか♪」

「はーい!」

「ただし、不破くんは先にケガを手当てしてからね」

「へーい……」


水着回はまだまだ続きます。

カニはまだくたばってないからまた出るかもしれない…

あ、人気投票はアルヴィーさんが独走中よん

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