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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第8章 太陽とビキニと夏の陣
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EPISODE141:騒がしい朝

 ――その頃、京都では。



「ぐう……ぐう」


 京都駅前のアパート・『みかづきパレス』の一室。そこでは三人の男女が寝ていた。そのうち男性は茶髪の青年が一人だけで、あとの二人は女性。片方は白い長髪に長身の大人で、太すぎず細すぎずのほどよい体つきをしていた。とくに胸が大きい。

 もう片方は青紫の髪に身長120cmほどの幼い子供。華奢だが将来有望だ。元々この子供は癖毛だが、寝癖のおかげで髪の毛が凄いことになっていた。

 そんな三人の周りには、荷物が詰め込まれた大きなカバンが三つ。これから旅行にでも行こうとしているのだろうか。また、閉められたカーテンの間から外の光が射し込んでいた。もし開ければ部屋中にまぶしい光が射し込んで一気に明るくなるだろう。


「……う、う〜ん」


 三人のうち、青紫の髪の子供が目を覚ます。まだ少し眠たそうだ。白い長髪の女性も少し遅れて目を覚まし、子供の方が四つん這いで彼女に近付く。

 「お兄ちゃん、まだ起きてない?」と小声で白い長髪の女性に訊ねた。「まだ起きとらんの……」と女性は気だるげに小さな声で、古めかしい口調で答えた。


「そうだ、ちょっとおどかしてやろう」

「えっ、どうやって?」

「それはのぅ……ゴニョゴニョ」


 小声で話し合う二人。白髪の女性が顔を近づけ、青紫の髪の女の子の耳元でささやく。彼女の言葉を理解した女の子は口を細めたあと笑った。何をしようとしているのか、それはすぐに分かる。


「Zzz……」


 布団に入り、すやすやと寝息を立てている茶髪の青年。妖艶に微笑みながら、白髪の女性が微睡みの中にいる彼にそっと這い寄る。そして耳元で優しく、こう囁く。


「――健くん♪」


 彼女が耳元で青年の名を呼んだ刹那、ビクッ! とひきつられるように飛び起き、キョロキョロと辺りを見渡す。真横に白髪の女性がいたのを見つけると唾を飲んで


「あ、あああ、アルヴィー……さん……? な、なななんでまたそんな積極的な、あ、あ、アプローチを?」

「なあに、ちょっとビックリさせてやろうと思っただけだ。のう、まり子」

「やだぁ♪ 相変わらずエッチねぇ〜、お兄ちゃんったら」


 「え? ええーーーーっ」と茶髪の青年がうろたえる。彼は名を東條健(とうじょう たける)という。京都市の役所に勤めているアルバイターだ。だが、それは表の顔。

 裏では特殊能力を用いて戦う戦士『エスパー』として白髪の女性――アルヴィーと共に町中、いや世界中にはびこる怪物『シェイド』を退治している。

 近頃になって新たに蜘蛛のシェイドが化身した青紫の髪の少女・糸居まり子も仲間に加わった。ただ、少し怪しいところが彼女にはあるのだが――。


「それに私もれっきとした女だぞ。たまには女らしくしても……い・い・で・しょ?」

「や、やだなぁ。そんな大きなおっぱい寄せないで……ッ!? は、はううううっ!! たまらああああああああああああああああああああん!!」


 アルヴィーが健の腕に抱きつく。その豊満な胸を寄せながら。二つの柔らかで暖かい感触に包まれて健は思わず興奮。今にも顔を真っ赤にし鼻血を噴き出して倒れそうだ。健全な日本男児なら仕方ない。


「本当なら全身から抱きつきたかったが、そんなことをしたらみゆき殿に悪い」

「や、や、やめて、仮にそんなのされたら僕悶え死んじゃうよ」

「? なぜだ?」

「想像するだけでも気持ちよすぎるからだよーーーーッ」


 興奮冷めやらぬ健。言っていることは真面目だがその目付きは少しおかしかった。興奮しすぎて目が回っていたからだ。どちらにせよスケベにはたまらないシチュエーションであることは確か。


「ねーねー、朝っぱらからそんなにエキサイトしちゃっていいの?」

「へ?」


 まり子が割り込むように健へ告げる。


「今日はみんなで海行くんでしょ〜? 朝から興奮しっぱなしだったら、お兄ちゃん鼻血の出しすぎで死んじゃうよ」

「海……ハッ! そうだ! 白峯さんやみゆきたちと一緒に海行くんだった!」


 まり子のその言葉で健はあることを思い出す。それは先日のことだった――。以前自分ひとりだけ海洋博覧会に行かず、勝手にバカンスへ行ってしまったお詫びとして白峯が「そろそろお盆だし海まで泳ぎに行かないか」と健やみゆきたちにバケーションに行く話を持ちかけてきたのだ。

 もちろん「NO」と答えられるはずがなく、二人は承諾。かくして太陽がまぶしい海辺へバカンスしに行くこととなったのだ。なので昨日は帰ってきてから大急ぎで準備をした。なので三人とも疲れはてて昨晩はぐっすり眠れたというわけだ。ちなみに水着は健とみゆきは予め用意してあり、他は白峯が用意する予定だとか。


「うあおーっ! 着替えは用意できたから、あとはお茶と朝ごはんだ! アルヴィー、どいて!」

「え? ああ……うん」


 早く準備しなければ、と思い立った健は速やかに行動を開始する。まずは布団を畳んで仕舞い、次にお茶を三人分ペットボトルに注ぎ、次は肉野菜炒めを作っておわんにごはんを盛り、次はそれらを机に置く。最後はコップに茶を入れてこれで完了だ。


「お茶、みんなの分準備できたよ!」

「う、うん」

「あとはごはん食べて歯みがきと洗顔ね!」

「わ、わかった。そうしよう」


 切羽詰まった様子で健が二人に呼び掛ける。手を合わせて「いただきます!」と言ったあと、健はさっさと食べ出した。アルヴィーとまり子に「さっさと出来ない人は置いてくよ!」と催促を入れながら。


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