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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第7章 近・江・乱・舞
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EPISODE138:ひとまずの別れ

 新藤を倒した健たちはすぐに伊東やアズサたちがいる大阪駅の付近へと向かった。まだ戦闘中かもしれない。だとしたらのんびりしている暇は無い――加勢しに行かなければ。そう思いながら駅前の広場へと疾走する四人だったが――


「遅いやないけェ、あんたら……」

「伊東! あんた……どうしたんや、その傷!」


 そこにいたのは傷だらけで血まみれになっていた伊東と少しおどおどしているアズサ。いったい何があったのだろう。まさか、対処しきれずにやられてしまったのだろうか? 心配になった健は駆け寄って「ふ、二人とも大丈夫ですか? それで町のみんなは……?」と訊ねた。


「安心せぇニイちゃん。シェイドの群れ、全員ブッ倒したったわ。わいと藤吾とでのう……」

「藤吾? 藤吾ってまさか……祇園藤吾さん?」

「せや……なんやその藤吾っちゅう奴、顔あわせんのが恥ずかしいからってさっさと帰ってまいおった」

「そうか、そんなことが……って、その祇園藤吾って誰やねん?」


 近くで健と伊藤の話を聴いていた市村が首を傾げる。彼は『近江の矛』のリーダーであった新藤とは面識があったが、祇園藤吾とは面識が無い。「知っとるか、アズサ」とアズサに訊ねるも当然アズサは藤吾のことなど知らず「ごめん、ウチもその人知らん」と返事をした。


「はは、藤吾さんのこと知らない人多いんだな……」

「ねえお兄ちゃん、その藤吾って人誰なの?」

「ん、ああ、藤吾さんはね……」


 藤吾の事を聞いてきたまり子に健が答える。藤吾が『近江の矛』の一員であることと、新藤に騙されていた事を親切かつ丁寧に教えた。その話は市村やアズサももちろん聞いていた。伊東は先程シェイドの群れと戦ったときに、アルヴィーは以前健が藤吾と戦ったときにそれぞれ面識があったので聞き流していた。だが、アルヴィーはどちらかといえば見守っていたようにも見える。


「へぇ、そういう人だったんだ。ちょっとかわいそう……」

「ホント、嫌なヤツだった。……あっ、いけない。こんなことしてる場合じゃなかった!」


 話し終えたところで健は伊東が戦いで重傷を負ったことを思い出し、救急車を呼ぼうとしたが――「待てやニイちゃん」と伊東に止められた。


「え? でもそのケガ……」

「ホンマや。あんたこのままやったら死んでまうで」

「そないな心配いらんわい。病院、すぐそこやさかい」

「近ッ!」


 心配する健と市村を前にして伊東が笑う。彼が指を指した方向には病院があった。ちょっと都合が良すぎないかと、全員がズッこけた。だが善は急げ、である。健たちは伊東を急いで近くの病院へ連れて行く。かくして伊東は入院することになった。しかしながら元気そうだったので早めに退院できるだろう。傷もすぐに治りそうだ。



「しっかし、今日も大変な一日になってもうたなあ」

「まあまあ、こうして何とか無事に終わったやん」

「そうですよね。終わり良ければすべて良し! なんちって……」


 その帰り、健たちが談笑しながら歩いている頃にはすっかり日も暮れていた。茜色に染まった空と夕陽を背に受けながら帰路を辿る気分はなんというか、家に帰る途中の遊び疲れた子供のようであった。

そんな中、突然アズサが立ち止まる。彼女にあわせて他の四人も止まると、アズサは


「そういえばまだ、名前聞いてへんかった。お兄さんとお姉さん、それからお嬢ちゃん……名前なんていうん?」


 健たち三人の名前を教えてもらおうと、そう訊ねた。本来なら「名乗るほどのものではない」と格好つけてみたいがそんなひねくれた事はできない。簡単なものでいいからアズサに自己紹介をしようと、健から順に名乗ることにした。


「東條健です。市役所でバイトしてます、よろしく」

「アルヴィー……と呼んでくれ」

「糸居まり子っていいます。よろしくね!」

「健クンにアルヴィーさんにまり子ちゃんやね。ウチ、逢坂アズサっていいます! こっちこそよろしく♪」


 アズサが心から思い切り笑う。元気いっぱいな彼女ならではの満面の笑みだ。これで彼女も健にとって欠かせない仲間の一人となった。その光景を見守りながら「頼むからとらんといてや……」と市村は不安げに呟いていた。

 というのも、健の周りにはどういうわけかやたらと女性が集まる。まるで磁石のS極がN極に、N極がS極に引き寄せられるように。ハーレムでも築き上げんばかりの勢いだ。そんな健にガールフレンドのアズサをとられたくないと、市村は不安になっていたのである。


「それじゃ、また!」

「健クンたちも元気でな~!」


 健たちとアズサ(と市村)はお互いに手を振り、別れた。きっとまた会える日がやってくるだろう。


「……あいつら行ってもうたな。ほな、わしらも行きまひょか」

「うん!」


 ――『近江の矛』のリーダーとして府民を欺いていた新藤は死に、こうして大阪、いや関西一円を巻き込んだ一大事件は幕を閉じた。新藤に指示を出していた黒幕は滅んではいないが――これにて一件落着。

どうも、SAI-Xです。

今回で第7章はおしまい! 結構長くなりましたね。

割といい人だったアンドレと違って新藤は最後までとんでもないくそったれ、

いいやイカ野郎でした。一人のキャラとしてはともかく、

悪役としては結構いいキャラしていたんじゃなイカ……と思います。


では、次章をお楽しみに!


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