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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第2章 敵は非情のセンチネルズ
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EPISODE12:バイトサボりはほどほどに

今回予告!


 ゆるりと、時々シビアに過ごす健とアルヴィー。

 そんな彼らとは裏腹に、不破は自主トレにケンカとハードな生活を送っていた。

 京都を放浪する彼に、謎の男〝浪岡〟の魔の手が襲いかかる!?

「でさ~、ヤスヒロがさぁ~……」

「へぇ、あのヤスがねェ」


 不良たちが屯する夜の高架下。時間帯なぞお構いなしにどんちゃん騒ぎしている不良たちの真っ只中へとやってくる、金髪の黒ずくめの男。


「君たち……」


 サングラスをかけ、黒いロングレザーコートに黒いインナー、黒いズボン。黒いブーツ。不良たちの小物臭いそれとは違う、異質で邪悪な雰囲気。190cmに近い身長も、170~180弱ぐらいまでの不良たちより大きい。


「強くなりたいとは思わないか?」


 サングラスの下には、紫色に光る妖しい瞳。身の程知らずの不良たちが、黒ずくめの男に絡み始める。


「あァ゛? 誰だオッサン? 俺らに何か用?」

「君らの中にエスパーの素質を持った逸材がいるとしよう。私はその逸材をヘッドハンティングしにきたのだよ」

「なにワケわかんねーこと言ってんだよ、ゴルァ!」


 黒ずくめの話を理解する気がない不良たちは下品に笑い飛ばし、殴りかかってきた。

 男は、余裕たっぷりにその拳を受け止めると不良の腹に蹴りを入れた。更に、黒ずくめが指を鳴らすと不良の一人がその場で燃え出した。


「ふふふ……残念だなぁ。こんなところでくすぶっていないで私のところへ来れば、更なる力を手にすることが出来たというのに」


 火だるまになった不良グループの一人を背に、男は残りの連中にも睨みを利かせる。


「ひ、ひぃぃ……!」


 未知の恐怖におびえる不良たちなど眼中にない男は、右の掌で火の玉を形成していた。不敵に笑いながら。サングラスの下から、不気味な紫の瞳がのぞいていた。


「ご両親からよ~く聞かされたのではないかな? 人の話はよく聞くものだと!」

「ば、化け物……!」

「いやだああああ! 俺ぁまだ死にたくねえよお~~~!!」

「地獄で悔い改めるがいい、虫ケラどもめ!!」


 非情にも火の玉が放たれた。それも1つだけではなく、いくつも。成す術もなく残った不良グループのメンバーは消し炭にされてしまった。


「いかんな、また殺ってしまった……」



 火の中に佇む黒ずくめの男は、狂ったように高笑いを上げていた。


■□■□■


 翌日。アパート『みかづきパレス』の自室で、健は朝食の支度をしていた。

 惣菜パンと牛乳――だけでは足りないので、体を温めるカップめんと野菜不足を補う野菜ジュース。更に、朝の栄養補給には欠かせないバナナ1本とおいしいみかんが2個。

 一通り並べ終わると、健はTVを電源を点けた。流石に19歳になって、特撮やアニメは見ても教育番組は見ない。


「ひゃー、高架下で原因不明の焼死!? おっかないなあ……火の用心、火の用心っと」


 昨晩、高架下で不良グループのメンバーが全員原因不明の焼死を遂げたというニュースが入った。普通、何の脈絡もなしに人が焼け死ぬなどありえない。超常現象の類だろうか。それとも――。


「健~、おはよう……といえばいいのよな?」


ほどなくして先に起きていたアルヴィーが新聞を持ってきた。


「うん。あ、新聞サンキューな」


 健が朝食を食べる傍ら、アルヴィーは新聞を読みふけっていた。まずは番組欄、次に見出し。見出しを読むだけでもかなりの情報量が得られる。


「健、バイトとシェイド退治の両立は難しいぞ。バイト先には連絡しておいたかの?」

「えっと、今後は毎日来れるかどうか分かりませんって副所長さんに言っといたヨ」


 苦渋の決断だった。月~金はバイトがある。自由な時間は土日しかない。

 そんな状況でシェイドを討伐するのは簡単なことではない。だが、バイトしなければ生活費はためられない。シェイドを倒しても金は出ない。あれこれ健なりに考えた結果、バイトに行く回数を減らすという結論が出たということである。シェイドを倒せば金がもらえる仕事があればいいのだが。


「これで平日も休みだぜ~♪」

「平日も休めるからってエロ本ばかり読んだらいかんぞ?」


 胸を寄せながら健の図星を突くアルヴィー。アルヴィーの巨乳に頬を押されて、健もどこか嬉しそうだ。現に鼻血が出始めていた。


「え、エロ本? 何の事かな……」

「引き出しの一番下に隠しておっただろう? そんなものより他の事にゼニを使うとか考えられないのか?」


 おしくらまんじゅうはなおも続いた。あまりに長時間押し付けられたので、流石の健も鼻血を流しながら気絶してしまった。


「ふふふ、お主もウブよのう」


 『やれやれ』と言わんばかりの視線を健に送るその表情は、まるで母か姉のようであった。


「あ、アルヴィーさんこそ……ウヘヘヘ」


 健にとってはさぞ至福だったことだろう。人一倍性欲が強いというだけのことはある。

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