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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第7章 近・江・乱・舞
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EPISODE135:戦いに備えて

「ただいま~っ」

「おお、お帰り。早かったのぅ」

「あっ! お兄ちゃん! おつかれ~っ」

「一服してからごはん作るから、それまでちょっとだけ我慢してね」

「はーい」


 あのあと健はとくに問題も無く自宅アパートに帰ることが出来た。バイト先でいつも親切にしてもらっているOL三人娘から週末に橋上府知事が大阪駅前で演説をするという情報を教えてもらえた彼は、

 打倒新藤の為に少しでも戦力を集めようと思い、ある行動に出た。それは――自分をライバル視しているエスパー・市村に協力を呼びかけることだ。

 帰ってくるなり腹を空かせて待っていたアルヴィーとまり子に食事を我慢するように言った健は手洗いうがいと着替えを済ませ、以前市村と交換し合った電話番号を入力し電話をかける。


(これであってたかなー……)

「あれ? 何やってるの?」

「ん……ああ、ちょっと市村さんと電話で話したい事があるんだ」

「そうなんだ」


 上目遣いであどけなく聞いてきたまり子へ健が微笑みながら答える。一見すれば明るくかわいらしい少女だがその内面には恐るべき残忍性と身も凍るような冷酷さが潜んでいる。下手をすれば殺される。

 不破が何度も言っていたように今後は彼女の動向に気をつけたほうがいい――のだが、今のところとくに害はない。妙に警戒する必要はなさそうだ。妙にキャラを作ったような言動が気になるところではあるが――。


「ちゃんとかかるかなー」



◆◇◆◇◆◇◆◇



「今日の映画ごっつオモロかったなぁ~!」

「うんうん! レッドが命懸けで敵のボスからみんなを守るシーンとかめっちゃカッコよかった!」

「せやろぉ? わしもう3回ぐらい見に行ってるけどあそこが一番燃えるわ!」

「ウチもそう思う~!」

「どや、たまにはヒーローものも悪くないやろォ?」

「うん! また連れてってな!」

「モチのロンや!」

「もぉー、ふーるーいー!」

「かんにん、かんにん」


 ――その頃、市村は古巣である大阪でガールフレンドの逢坂アズサと楽しいひとときを過ごしていた。誰にでも息抜きして楽になりたいという気持ちがある。彼も今日はたこ焼き屋を休んで一日中アズサと遊んでいた。

 それだけでなく、長いこと会っていない実家の両親にも顔を見せに行ったり世間話をしたりもした。映画も見れたしおいしいものも食べられたしで充実した一日であった。そんな彼のもとに一本の電話が入り――携帯電話が振動した。


「ん……」

「イッチー、どうしたん?」

「電話や。東條はんからやな」

「東條はんって確か……イッチーの友達やったっけ?」

「せや。実際は友達っちゅうかライバルやな」


 携帯電話を手にしながら市村が答える。ちなみに彼の携帯電話の色は、ハデ好きな彼らしくゴールドだ。メーカーはSoCoMoで家族間でのメールや通話が無料らしい。画面を確認すると、電話をかけてきたのは東條健だった。いったい何があったんや、と、彼は電話に出る。


「もしもし、市村やけど」

「あ、市村さんですか!? いやぁよかった繋がって!」

「どないしたんや、そない慌てて?」

「聞いてください! 橋上府知事が土日に駅前で演説するらしいですけど知ってましたか?」

「ああ、知っとるで。それがどないした?」

「新藤率いる『近江の矛』がそのときに橋上さんに奇襲するらしいんです!」

「説明ご苦労さん……って、な、なんやてェ!?」


 あの『近江の矛』がよりによって大阪の政権のトップである橋上府知事を狙っている――。最初はすました顔で聞いていた市村だが、東條からそう聞くと一転して驚きを隠しきれなくなった。動揺したまま彼は「そ、それホンマかいな!?」と訊く。


「ホントです! とにかく、新藤のやつは橋上さんを襲って殺害するつもりです」

「やりすぎちゃうんかソレ! 連中なに考えとんねや! そんなことされたら大阪全体が混乱してまう!」

「そういうことですから土日に備えて準備をしておいてください。不破さんが新藤にやられた以上、あなた以外に協力をお願いできる人がいないんです。どうかお願いします!」

「おっし、わかった。土日やな! 任しとき、あのアホどついたるさかい!」

「本当ですか? ありがとうございます!!」


 「では当日はよろしくお願いします!」と健は市村に礼を告げ、電話を切った。彼と市村は互いに馴れ合うような関係ではない。お互いに切磋琢磨しあうライバルだ。とはいえ、そんな彼が形相を変えて必死に自分に協力を要請していた以上断るわけにはいかない。東條の言葉から『人々を守りたい!』という意志を感じ取った市村は、彼に力を貸してやることに決めた。


「……なんて言ってはった?」

「『近江の矛』っちゅうアホらしい連中がおるやろ? あいつらよりによって橋上のおっちゃんハジいて革命起こそうとしとるらしいわ」

「か、革命!? でもハジくって殺すってことやんな。それは流石にアカンのとちゃうん?」

「せや。――正直わしも橋上はんにはええ印象ないねんか。せやけどあのアホどもほど極端やないし、殺そうとも思ってへん」

「え?」

「うん? ちょっと難しかったかいな」


 戸惑うアズサ。そんな彼女に市村は「要するにわしは『近江の矛』っちゅうアホの集団から橋上はん守ろうと思うとるっちゅうことや」と優しく語りかけた。そっか、とアズサは笑顔を浮かべて納得する。


「……確か土日やったね?」

「ああ。今日は水曜日やさかい、まだ時間はたっぷりあるわ」

「イッチー、ガンバってな! 悪いやつらにやられんよう、ウチあんたのこと応援するわ!!」

「ほ、ホンマか? ありがとうなー!」


 緊迫した空気が和らぎ、ほんわかした空気が二人の間に漂い始めた。デート再開、と言わんばかりに歩き出す二人。市村は良い歳してスキップしており、まるで子供時代に戻ったようだった。



◇◆◇◆



「……ふぅ。なんとか用件は伝えられたぞ」

「お疲れ様~」


 携帯電話を閉じた健が安堵の息をつく。無理もないだろう、先程までものすごい勢いでまくし立てるように喋っていたのだから。疲れるのも当然だ。


「それでたこ焼き屋はなんと?」

「協力してくれるって!」

「やったな、健! 相手は手強いが……たこ焼き屋が来てくれるのなら怖いものなしだ」

「うんッ!」


 健とアルヴィーが笑顔を浮かべてハイタッチする。続けてまり子もハイタッチ。正直不安ではあったが希望が持てた。これで夜も安心して寝られる――。そう思ったところで、三人の腹の虫が鳴った。


「……あ、そういえばゴハンまだだったね」

「ねえ、今日はなに作ってくれるの~?」

「そうだねー……すぐ出来るうどんにしよう」

「やったー!」

「うどんか……この前ご馳走になったが、まあ良しとしよう」

えーと、その…皆様、申し訳ございません。

一度上げて前に登場したある人物を登場させました。

なんですが…あとで思い返してみて「これじゃ高揚感がない」と感じ、

泣く泣く該当する部分を編集してその人物の登場シーンをなくしました。

よって、その人物が出てくるのはあとになると思います。

大変申し訳ございませんでした。

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