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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第7章 近・江・乱・舞
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EPISODE126:銀ピカの侵略者

 伊東から教えてもらった情報の通り、曲がり角を曲がるとそこには用水路があった。ここに新藤がいることに間違いがないのなら奴に見つからないよう慎重に、ゆっくりと行動する必要がありそうだ。


「……いた!」


 誰かの足音がしたので物陰から覗くと、そこにいたのは――新藤。より慎重に、より警戒心を強め不破は新藤を追跡する。カニ歩きは少々カッコ悪いが、今は手段を選んでいる場合ではない。新藤を追い続けていると、やがて水路の岸で新藤は腰を下ろして座った。懐から携帯電話を取り出した新藤は誰かの電話番号を入力する――。


(誰と話す気だ? まさか奴には協力者がいるっていうのか?)


 柱の影に隠れながら不破は新藤の様子を伺う。――行動を起こすにはまだ早い。新藤が誰と連絡をとるのか、しっかりと聞いておかねば。


「……ええ、お陰様で順調です。大阪の連中、思ってた以上にバカなヤツばかりで仕事が捗りましたよ」

「そうか。幹部への昇進が約束されているだけあって気合いが入っているようだな」

「もちろんでさぁ」

「その調子なら心配はいらなそうだな。……だが、油断するなよ」

「なんでですかい?」

人間(やつら)を甘く見ない方がいい……もう何人も仲間がやられている。次はお前の番かもしれんぞ?」

「まさか。この俺がやられるわけないでしょー」

「大した自信だ。……今回の作戦にはお前の昇進だけではなく、会社の威信が懸かっている。絶対に成功させろ。今回の作戦は先に殉職した者達への手向けでもあるからな」

「……了解!」


 何者かと連絡を取り合う新藤。敬語を使っていたことが察するに、彼の協力者だろうか? それとも――。物陰で一部始終を聴いていた不破は、にやつく新藤に歩み寄り


「手を上げろ!」


 不破が拳銃を構え新藤を威嚇する。突然声をかけられたかと思えば銃を向けられていた為、新藤はやむを得ず両手を上げた。


「話は聴かせてもらった! 署まで同行願おう。それともこの場で取り調べしようか?」

「そんなの誰が……!」


 額から汗を流しながら新藤が舌打ちする。ひどく焦りを感じている表情だった。


「それより聞きたいことがある」

「あ゛……?」

「お前が話をしていた相手は誰だ? 答えろ」

「ヘッ、誰が教えるか」


 しらばっくれる新藤。教えないどころか不破に殴りかかり転倒させる。銃を仕舞って立ち上がり、不破は「何が狙いだ!」と身構えながら訊ねる。


「俺の知ったことじゃない! ……盗み聞きされた以上生かしちゃおけねぇな」


 新藤が鉄パイプを携え不破を殴る。それを受け止め不破は鋭いキックで反撃。腹部に命中し、新藤は腹を押さえながら後退。


「ハアアアアアア……!!」


 少し気合いを入れながら新藤が唸る。みるみるうちに新藤の体が液状化し、その姿を変えていく。


「……やっぱりな。最初っから怪しいとは思っていたが……」


 不破が戦慄する。彼がいま対面している新藤の姿は凶悪な歯牙をむき出しにして笑うイカの怪人のような姿に変わっていた。体は白く、顔はガイコツのような凶悪な面構えで大きな眼が黄色く光っていた。そのびっしり生え揃った歯牙も合わせて凶悪さは三割増しだ。

 両腕は太くガッシリしており、触手をいくつもぶら下げていた。その身には銀色の軽装の鎧をまとっている。全体的に銀ピカで良く目立つカラーリングだ。ある意味では「俺は強いから近寄らない方が身の為だぞ」と言いたげな警告色かもしれないが。


「こうなったら武力行使だ。力ずくでもお前を止める!」

「警察の犬が吠え面かきやがって。返り討ちにしてやるぜ!」


 不破はランスとバックラーを携え、新藤は鉄パイプを握り――戦いの火蓋が切って落とされた。まず新藤が先に攻撃をしかけ鉄パイプを振りかぶる。不破はそれを防ぎ弾き返す。攻撃を弾き返されてひるんだ隙に不破はランスで相手を切り上げる。しばらく激しいぶつかり合いが続き、その中で新藤の鉄パイプがポキッと折れた。


「ちっ! やっぱりこれじゃ不利か」


 舌打ちして不破を殴り飛ばす新藤。どこからともなく新しく武器を取り出すと思い切り荒々しく振り回して不破を威圧。――その武器は槍で、穂先がイカの腹のような形をしていた。色はやや赤い。まるで獲物の返り血がこびりついたように――。


「だが、これならどうだ! うらああああ!!」

「ッ!」


 両手で槍を構えた新藤が連続で突きを放つ。目にも留まらぬ速さだ、急に繰り出されたため防ぎきれず不破はその連続突きをまともに受けてしまう。


「やってくれるな……ゲソ野郎!」


 左肩を押さえながら後ずさりする不破。刹那、新藤の突き刺し攻撃を跳んでかわし空中から飛び込んで反撃。新藤を突き飛ばした。立て続けにランスを激しく振り回して周囲に電撃を流す。電撃は見境なく周囲を破壊し、新藤の頭上から瓦礫が落下。新藤は間一髪でそれを回避するが、油断したところに「そこかッ」という掛け声と共に飛んできた電流を浴びて感電した。


「どうだ!」

「やりやがったな……」


 紫の血を流しながら新藤が立ち上がる。所々黒焦げになっていたがまだピンピンしていた。笑いながら「いい武器持ってんじゃねえか」と呟くと新藤は両脇から垂れ下がった触手を伸ばし、「少し借りるぜ!」と唾液を飛ばしながら叫ぶ。


「なにッ!」

「へへへっ……」


 汚ならしく新藤が笑う。不破から奪ったランス――イクスランサーを豪快に振り回して周囲に電撃を放ち不破を遠ざける。更に新藤は、電撃が収まったところでイクスランサーを取り戻そうとする不破に嫌がらせするように口から墨を吐き出す。


「ぐっ」


 一見何の変哲もない墨。だがそれは爆発し不破の目を眩ませた。


「ハハハ! どうだ、俺様の墨爆弾の味は!」

「ああ……『最悪』だッ!!」


 不破へ向けて次々と墨爆弾を吐き出す新藤。不破はその中を超スピードで駆け抜け、新藤の懐へ一気に詰め寄る。ヌメッとして気色悪い新藤の顔を殴り、「返せ! そいつはお前が勝手に振り回していいもんじゃない!!」と怒号を浴びせた。


「うるせェ! この、権力の犬が!」

「イカメシ野郎がッ!!」

「ヒーロー気取りが!」

「スルメ野郎がッ!!」


 両手が塞がっている新藤は頭突きをかまし、更に足で不破の下顎を蹴り上げる。血のしぶきが少し宙に舞った。だが不破はめげずに膝で新藤の腹を蹴り上げ、更に腹に強烈な右ストレートを浴びせる。口から墨と紫の血が混じったグロテスクな液体を吐きながら、新藤は後退した。


「うっぜェ!」


 歯ぎしりする新藤。いきり立った彼は勢いに身を任せて不破が持っていたイクスランサーを投げ出した。当たる寸前で身をそらして転がり不破は回避。立ち上がって振り向くと、柱にイクスランサーがでかでかと突き刺さっていた。もしかわし損ねていたら恐らくは――。少し力を入れてイクスランサーを引き抜くと、不破は「ずいぶん手荒な返却だな!」と啖呵を切った。


「ふんっ!」

「へっ!」

「このッ」

「おらよッ!」


 真正面から斬りかかり、新藤にぶつかり合いを挑む不破。何度も火花を散らすが連戦による疲労から不破はどんどん押されていく――。一瞬でもよろめいた隙を突かれ、不破は新藤の反撃をみすみす許してしまう。


(やべぇ、さっきの戦いで消耗しすぎた……ッ!)

「うらっ!」

「ッ!」


 槍で右肩から左脇にかけて斬られ、


「生ゴミめ!」

「ガハッ!」


 腹を思い切り強く蹴られて血を吐き、


「ごく潰しめ!」

「うぐっ!」


 頭突きで顔面を強打され鼻をくじかれ、


「警察の飼い犬め!」

「ぐおッ!!」


 左肩を突き刺され血を豪快に噴き出し、


「その顔をグチャグチャに潰して肉団子にしてやる!!」

「うがああああ!!」


 挙句の果てに顔を掴まれて地面に押し倒され、馬乗りで何度も刺されたり殴られたりした。


「泣け! 叫べ! そして死ね!!」


 身動きがとれない不破。それをいいことに新藤は立て続けに不破へ殴る蹴るの暴行を加える。こうなったらもはや――勝負どころではない。殴りに殴って気がすんだ新藤は不破の首をつかみ上げるとほくそ笑み、


「グヘヘへッ! いい顔だ。あとで鏡でも見てみな、きっと驚くぜェ?」


 皮肉を言って新藤が嘲笑う。不破の顔は傷だらけでその上血まみれで、唇は腫れて右目には青アザが出来ていた。更に服もボロボロで血がこびりついており――とても外には出歩けないようなみじめな格好にされてしまった。


「っ……」

「今さら止めようとしたってムダだぜェ? 刑事さんよォ」


 不破を壁に押し付けた状態で新藤が言い放つ。片目を大きく見開き不気味な笑みを浮かべていた。


「……この大阪はもうじき俺たちのものになるゲソ!」

「なにっ!? そんなことはさせねぇ……!」

「おーおー、勇ましいねェ」


 嘲笑う新藤。少し気合いを入れ――不破を殴って壁ごとぶち抜いた。吹き飛ばされた不破は瓦礫が散乱する中で胸を押さえて悶える。


「そこで指をくわえて見てな! この大阪が侵略されるのをなぁ! イーカッカッカッカッカ!!」


 新藤が下品に、汚ならしく笑い声を上げる。そのまま彼は用水路を流れる水の中に飛び込み、その場から泳いで去っていった。


「く、クソッ……」


 ――激しい戦いが繰り広げられ、その最中に荒れ果てた用水路。そこに残されていたのは瓦礫の山と二色の血の痕、そして重症を負った不破だけだった。


なぜなにQ&Aコーナー


Q:エスパーの武器は他人が持っても能力は使えますか?

A:使えないよ


Q:でも新藤がイクスランサーを奪って電撃出してたけど、あれはどういうことなの?

A:電撃発生は武器の機能です。なので赤の他人であるイカメシが振り回しても使えたというわけです。不破さんが持ってたときは、その上に不破さんの能力(雷を操る)が上乗せされていたというわけですな。


Q:じゃあ健やイッチー、伊東さんの武器は?

A:使えます。が! その3人の武器全てが使えるかどうかはわかりませんよ


Q:そもそもイカメシはなんで他人の武器を奪おうとするの?

A:新藤ことバイキングラーケンは卑怯者で、勝つためなら手段を選ばない人です。なので他人から武器を奪うようなことも平然と行います。


Q:要するに、エスパーの武器は特殊能力より『機能』のが多いって事ですか?

A:そうなりますね。


Q:あれ? Vol.4の辺り読み返してたら新藤と似た格好の人がいたんだけど

A:もしかして三谷をイジメてたりした人ですか? 実はその人と新藤は同一人物です

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