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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第7章 近・江・乱・舞
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EPISODE125:うなれ剛剣! 伊東、必殺の刃

 伊東が持つトランスメタルが次に形を変えたのは――両手持ちの剛剣。当然大振りだがこんなものが直撃すれば――間違いなく真っ二つだ。その剛剣を片手で引きずり地面で摩擦させながら、伊東が不破と市村に接近する。


「おんどりゃああ!!」


 右足で踏み込み大きく、豪快に剛剣を振り下ろす。二人は何とかその一撃をかわしたものの、剣が振り下ろされた地面がえぐれた。見た目を遥かに上回るパワーだ。「ちっ……外してもうたか!」と伊東が舌打ちする。


「な、なんちゅう威力や!」

「こんなもんが直撃したらぺしゃんこだ。早いとここいつを倒した方が良さそうだぜ……」


 二人とも剛剣の恐ろしい破壊力を前に額から汗を流す。ここは短期決戦に持ち込んだ方が良さそうだが、相手はすぐに倒れそうにはない。むしろまだまだ余裕がありそうだ。


「しゃべっとる場合か!?」


 伊東が剛剣を大きく振りかぶる。しゃがんでかわしたが、間髪入れずに二撃目が入った。今度はその場で跳んで回避し、そのまま反撃。市村は跳躍しながらの銃撃を浴びせ、不破は斜め上から伊東に突撃をかました。


「ぬおっ!」


 左手に持った剛剣に引っ張られるように伊東がよろめく。だがすぐに体勢を立て直し、大きく横に薙ぎ払う。今度は回避が間に合わず二人は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。


「きゃぁっ! い、イッチー! おっちゃん!」


 アズサが悲鳴を上げた。伊東と死闘を繰り広げる二人を見ていたたまれなくなったか、今にも泣きそうな声色だった。


「大丈夫やアズサ……わしやったらまだ大丈夫や。そない心配せんでええ」

「そうだ、オレたちはこんなやつには絶対負けねぇ!」


 悲しげなアズサにそう言い聞かせながら二人は立ち上がる。実のところまだ27なのに『おっちゃん』呼ばわりされて、不破は正直嫌な気分になっていた。だが、今はそれどころではない。目の前にいる(いとう)を倒さねば!


「のんきに話しとる場合か? 勝負はまだ終わってへんで!」


 二人が立ち上がったのを見て、空気を読んで黙っていた伊東が攻撃を再開。自分に向けて振り下ろされたランスを剣の腹で受け止め、力押しで無理矢理弾き返す。そのまま不破をたたっ切りひるませる。血しぶきを上げた不破だがすぐに立ち上がって、「今のは痛かったぜ」


「……相手の攻撃を力で強引に押し返す。それがお前の戦法か!」

「せや!」

「くッ!!」


 ランスと剛剣による切り合いが続く。やがてつばぜり合いが始まった。単に力が強ければいいのではなく、ある程度技量と気迫が必要となる。とくに相手に気迫で負けたらそのまま一気に押されて負けてしまう。なので時には相手の力を逆に利用するということも重要となってくるわけだ。


「どないしたワレェ! 腕の筋肉は飾りけぇ!?」

「へっ、てめえこそ! 背ェばっかり高くてあとはひょろひょろじゃねえか!!」


 パワーではどうやっても相手が有利だ。スピードも互角。ならばあとは今までに培ってきたテクニックを活かすしかない。


「そういやいたっけな、お前と似たような戦い方をするヤツが」

「あ゛ァ?」

「ま、そいつはお前と違って守りもしっかりしてたけどな!!」


 相手の力を利用し、そこに気合を上乗せして押しきった不破。息を荒くする伊東に連続突きを浴びせ、更にそこから上空へ打ち上げ自身も跳躍。力強い一撃を浴びせて伊東を地べたへ叩き落とした。


「痛いやないか……」

「はいバババーンとぉ!!」


 うめきながら立ち上がる伊東。その隙を狙って市村がビームを連射し爆風で伊東を吹き飛ばす。


「にゃろォォォ!!」

「おっと、動いたらあかん」


 突っ込んでくる伊東を銃で牽制しつつ後ろへ下がる。そしてエネルギーを充填し、発射。――だが標的は伊東ではなく彼の頭上。


「ノーコンめ、お前の目ェ節穴か!」

「節穴ぁ? 上をよう見てみぃ!」


 市村がとった妙な行動を嘲る伊東。だが彼が言うように上を見上げると、上から鉄骨が落ちてきたではないか。気付くのが遅かった為避けきれず、伊東は鉄骨の下敷きとなった。だがすぐに鉄骨を吹き飛ばして立ち上がり剛剣を構える。頭から血を流していたが、それでもまだまだ体力は残っていそうだ。


「クソッ、こーいうことかい!」

「そういうこっちゃ!」


「またひとつお利口さんになったわァ!」


 腰を深く落とし剛剣を振りかぶる伊東。斬撃をかわし射撃を行う市村。そのうち苛立ってきた伊東が、「えらい鬱陶しいのう」


「こうなったら……」


 腰を落としてどっしりと両手で剛剣を構え気合いを溜める。何をする気だ、と彼を見つめる二人をよそに伊東は回転しながら激しく斬りかかる。


「わいの必殺、大回転斬りを受けてみぃ!」


 回転しながら斬りつけるだけという至極単純でわかりやすい技。だが得物である剛剣がとにかく大きいため、その範囲は極めて広い。よって回避も防御も困難であり、不破と市村は攻撃をかわしきれず――吹き飛ばされてしまう。


「ッ! はぁっ、はぁっ……」

「こ、こいつ、つええ……」


 地面に膝を突き、息を切らす二人。伊東が剛剣を担いで左肩に乗せながらゆっくりと二人に歩み寄る。


「勝負ありましたなぁ、お二人さん。あと一撃で俺の勝ちや。楽しかったでぇ? 久々に楽しませてもうてなあ」


 伊東が勝ち誇ったように言い放つ。彼が喋っている間に市村は、大型の銃――ブロックバスターにエネルギーを充填する。


「……往生せい!!」


 目を見開いた表情で伊東が剛剣を大きくゆっくりと振り上げる。己の勝利を確信した笑みだ。だが、それは誤算だった――。その隙を突いて市村が充填していたビームを発射し爆風で伊東を吹き飛ばす。壁に叩きつけられた伊東は吐血し、地面へ落下した。


「し、しもうた……そういう狙いやったんか!」

「もう遅い! 出番やで、おっちゃん!」

「おっちゃんじゃない!」


 市村が身をかわした後ろには、ランスをまっすぐに構えた不破が待っていた。そのまま突撃していきそうな格好だ。その円錐形の穂先には電気が集中している――。


「……行くぜ! サンダーストライクッ!!」


 溜めていた力を解放し不破が一気に突撃。「こんなもん!」と言わんばかりに伊東は剛剣を構えそのパワーで押し返そうとするが、その高い貫通力の前には抵抗もむなしく――そのまま貫かれ絶叫を上げながら爆発した。


「決まったぜ!」


 口元を吊り上げながら不破が笑う。ようやく勝てたという達成感に満ち溢れた、少しキザな笑い方だ。


「やった! イッチーと不破さんが勝った!」

「勝ったったでぇ、アズサ! これで一安心やな」

「うんっ!」


 不破と市村が伊東に勝った! 子どものようにはしゃいで大喜びするアズサに近寄り、市村はアズサとハイタッチをかわす。

 その光景を少し離れたところから見ていた不破は、「青春……してるなあ」と優しく微笑んだ。だが、喜んでいる三人の後ろでゆらめく炎の中から人影が現れた。――伊東だ。フラフラとよろめきながら近寄る伊東を、不破が「まだやる気か!」と叫びながら牽制する。


「まいった!」

「……はい?」

「まいりました! 俺の負けや! 約束通り新藤の居場所教えたる」

「あ、ああ……頼む」



 勝者は知る権利をその手につかみとり、敗者は何も知らぬまますべてを失う――。不破と市村との戦いに敗れた伊東は、戦う前に交わした約束通り新藤の居場所を話す。


「……新藤の奴やったら用水路の方に逃げていきよったわ」

「どこの用水路だ?」

「こっから先の道を曲がったとこや」


 伊東が親指で自分の後ろを指差す。「今もそこでジッとしとるかは知らんけどな」と付け足した。


「すまねぇ、恩に着る。でもいいのか? 雇い主の居場所を話しちまって」

「別にええ。わいは新藤のヤツに金で雇われただけやからのう」

「ほうか、つまり新藤がやろうとしとる事には興味あらへんってことかいな」

「せや。そもそもわいはあいつがどうも気に入らんかったからなぁ。雇われたんもつい最近や」

「そうやったんや……やっぱりあの新藤って人、あかん人やったんやな」

「お嬢ちゃんのおっしゃるとおりやな」


 ――他にも伊東は『近江の矛』が起こした暴動には参加していなかったことや、新藤が肝心なときに限って違う用事があって居ないことがあったことも話した。洗いざらい話せてスッキリしたか、「追うんやったら早い方がええよ。ほな、また」と言い残して去っていった。


「……用水路か……」

「行くんやったら早いに越したことは無い。行きまひょ」

「いや、あんたはアズサちゃんと一緒に帰ってくれ」


 自分も一緒に行くという市村の好意を突っぱねるように不破が告げる。


「……なんでや?」

「こっから先は危険だ。それにアズサちゃんは一般人だろ、あまり危険に巻き込まない方がいい」

「……」


 ――考えてもみよう。今回一番辛い目にあったのはアズサだ。市村のところに遊びに行っただけなのにいきなりチンピラのような風貌の男にさらわれ、その先では不破と市村がボコボコにされる姿を見せつけられ――。

 二人とは比べ物にならないほど苦しかったはずだ。それで今から一人だけ置いていかれようものなら、なお心細い。家に帰るどころではない。誰かがアズサを守ってやらねば――。


「……わかった、わしがアズサを守る!」

「イッチー……でも、新藤さん追わんでええの?」

「心配いらん。新藤やったらデカのおっちゃんに任せといたらええ。のう、おっちゃん?」

「だから、オレはまだおっちゃんじゃねえってばよ……」


 何度もおっちゃん呼ばわりされては正直、辟易するというもの。だが今はそんなことでくよくよしている場合ではない。一刻も早く新藤を止めなければ――。


「……まあなんだ。オレは今から新藤のくそったれを止めに行く。あんたはアズサちゃんをしっかり守ってやりな」

「もちろんや! ほなアズサ、一緒に帰ろか」

「うん! 二人ともホンマにありがとう!」


 ブロックバスターを仕舞うと市村はアズサと手を繋ぎ、二人一緒に帰っていった。微笑みながら二人を見送った不破はその表情を険しいものに変え、用水路へ向かった。


Q&Aコーナーだよー


Q:伊東さんの名前の由来はなんですか?

A:剣豪の伊東一刀斎からだよー。エスパー伊東からじゃないよ


Q:え?エスパー伊東じゃなかったの?

A:いや、そういうシャレをいっぺんやってみたいなあとは思ってました。でも違うのよ、これホント


Q:白峯さんはまだバカンス中ですか?

A:多分今帰宅中だと思います。


Q:みゆきは何してんの?

A:おうちのお手伝いやってます。もしくはバイトに行ってます。

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