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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第7章 近・江・乱・舞
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EPISODE124:衝撃のエクスチェンジャー


 先に攻撃を仕掛けたのは伊東だった。すさまじい瞬発力であっという間に不破へ詰め寄り、腰を深く落としてアッパーカットをしかけ彼を上空へ打ち上げる。

 不破が上空から地面に落下し叩きつけられる様を見届けると、彼を踏みつけ顔面を思い切り殴って追い討ちをかけた。後ろへ宙返りして不破から離れると、


 「おいおい、えらい弱っちいやないの」


 ――と挑発。不破は立ち上がり、武器を構え直して反撃。ランスを激しく振り回し伊東を切りつける。火花と赤い血が少し飛び散った。


「油断しとった……」

「オレもずいぶん甘く見られたもんだ」

「えらいすんまへんな!」


 ランスとナックルがぶつかり合い、激しく火花を散らす。巧みに防ぎ、巧みに攻め――その中で伊東が繰り出した鋭い回し蹴りが襲いかかる。だが、不破はそれを宙返りでかわした。


「今だたこ焼き屋!」

「たこ焼き屋やない、市村や!」


 市村が不破の背後で銃を構える。不破が横っ飛びで彼の射程圏から離れると、市村は待ってましたと言わんばかりにビームを乱射。


「ヘッ、こんなもん!」


 伊東はそれをナックルの手甲で受け止める。しかし、表面から香ばしく焼き上がるような音がして――。伊東が冷静になって手甲を見つめると、溶けていた。しかもかなり熱い。すぐに熱が伊東の手から全身へ伝わり、


「あっちぃぃぃぃぃぃィィィ!!」


 あまりの高熱に悶える伊東。手を振って取り乱しその勢いでナックルの片方を放り投げる。幸いもう片方は無事だったようだ。ナックルが外れた方の手に伊東はフー、フーと息を吹きかけ冷やした。


「もらったぜ!」

「ガハッ!」


 そこへすかさず不破が一撃入れる。ランスが脇腹をかすり、傷口から血が流れ出た。かすり傷だったため傷は浅かったが、右手で出血を押さえ左腕を天へ上げながら伊東は「もどれッ」と叫ぶ。伊東の掛け声に呼応してナックルは液状化し、彼の左手に装着された。不破と市村は思わず我が目を疑った。だが驚く間もなく伊東が反撃に出る。


「よそ見しとる場合かァ!?」

「ぶへっ!!」


 強烈な右ストレートが不破の頬に炸裂。不破の体は浮かび上がりすぐに地面へ落っこちた。更に伊東は立て続けに市村へドロップキックをかまし蹴っ飛ばす。


「イッチー! それから……警察のおっちゃん!」

「へへっ、こんくらい何ともないわい……」

「お、おっちゃんだと!?」


 敵はあまりに強大。二人がいたぶられる光景を見ていたたまれなくなったアズサが叫ぶ。だが、二人はまだ大丈夫だった。そこに拳を鳴らしながら伊東が近寄り、二人を見てほくそ笑む。


「てめえェェ……」


 唸りながら不破が起き上がりランスを携える。その後ろで市村も銃を構えていた。


「何度も何度も形を変えて……お前が持ってるそれはなんだッ!」

「こいつは『トランスメタル』。持ち主の意思に応じて変幻自在に形を変えるステキなアイテムや」


 巻き舌を上手にまじえながら、おもむろに伊東が語り出す。やはりアレは、ラーメン屋などが出前に使いそうなただの四角い金属製の物体ではなかった。あらゆる形に姿を変える魔法のような金属だったのだ。妙にユーモラスで、親切かつ丁寧な説明であった。


「せやからいろんなことに使えるんや。たとえば……」

「ん……?」


 ニヤリと伊東が笑う。左手をかざすとナックルが液状化してその形をダガーナイフに変え――


「こんな風にのォ!!」

「うッ!!」


 不破の腹に突き刺した。すぐさまダガーを引っこ抜き、腹を押さえる不破を蹴り飛ばし倒れた彼にサマーソルトで追い討ちをかけた。


「あんたもジッとしてんと!」

「ぐっ」

「ちっとは動けや!」

「のわっ!!」


 一発、二発、三発――。荒々しくも鮮やかなステップを踏みながら伊東は市村をナイフで速やかに切りつけていく。血しぶきが飛び散る中で舞うように動く伊東の姿はある種の美しさを感じさせる。立て続けに攻撃を受けた市村は、あえなく転倒してしまう。


「きゃあっ!」

「ん……すまんのう、ネエちゃん。そう怖がらんでもええよ、すぐにでも終わらせたるさかいのう」


 いるだけでも心強かった二人が簡単に蹂躙されていく――。アズサは身の危険と、とてつもない恐怖、そして仲間を失うかもしれない絶望感――その三つを同時に感じていた。優しく語りかけてくる伊東も何がしたいのかわからないし、怖い。あの二人を殺したあとで自分のことも殺すつもりなのでは? アズサの中では恐怖心がどんどん膨れ上がっていた。


「終わらせたるやと……?」


 だが、まだやられるわけにはいかない。立ち上がった市村は伊東に、もう何度目かわからないが銃口を向け


「それは! こっちのセリフじゃ!」

「あぐうッ!?」


 至近距離からビームを放って爆発させ、伊東を吹き飛ばした。彼の意思に呼応するように不破も立ち上がり、超高速で伊東に詰め寄りランスで上空へ打ち上げる。


「さっきはよくもやったな!」


 空中で伊東を切り払い地べたへ叩き落とす。伊東が落とされた付近はくぼみ亀裂も入った。そこへ市村が駆けつけ伊東にビームを乱射。何度も爆発が起き防御するために身構えていた伊東の姿が立ち上る煙幕の中に消えるが、すぐに伊東は煙の中から飛び出して市村に切りかかった。


「やるやないけェ! そう来いひんとオモロない!」

「あんたもわしに接近戦を持ちかけるたぁアッパレやな!」

「さいでっか!」


 鋭いナイフが市村の頬を横切り、メタリックブルーに輝く大型の銃が伊東を殴る。鋭い刃物といかついビーム銃という、おもむきが異なる武器のぶつかり合いだ。ナイフによる斬撃を頑丈な銃身で防ぎ、中距離からのビームをナックルを盾がわりにして弾き――。戦いはますます激しさを増していく。


「まずいのう、ナックルやとガードが難しい……よし、ここは!」


 そのうち市村の銃が弾切れを起こした。彼が弾をリロードしているうちに、伊東は右手にはめたナックルを――バックラーに変形させた。両手持ちの武器を扱う者でも装備できる小型の盾だ。


「今度は盾にしょったな……」

「これでバッチリ! お前のへなちょこビームなんか効かへんわい!」

「熱に弱いんちゃうんか、そのトランスメタルっちゅうんはよォ!!」


 市村がビームを撃ちながら前進。


「アホやなー、効かへん言うたやろうが……」


 勝ち誇った顔でビームを防ぐ伊東だったが、防いでいるうちにバックラーはどんどん熱くなっていき――。


「あっつぅぅぅぅぅ!!」


 先程のように手から熱が伝わった。熱を少しでも冷ますためにバックラーを投げ捨てようとしたが、それを攻撃のチャンスと見た不破が超スピードで近寄り放電。


「うげげェェェ〜〜〜〜っ!?」


 バックラーから全身に電撃が走り伊東は感電した。これにより、今度は熱と電流が同時に襲いかかってくる事態となった。


「……何なんこの人、強いんか弱いんか全然わからん!」

「わしもやアズサちゃん……」

「ダーッ! どっからツッコんだらいいのか見当もつかねェ!」


 ビリビリしびれたり手にフーフーと息を吹きかけたりする伊東を前にして、三人は立ち尽くしていた。正直、どう反応したらいいものか三人にはわからなかった――。やがて伊東が落ち着いた頃、


「うぅ……まさかここまでやりおるとは。正直なめとったわ……」

「どうすんだ、伊東。降参するなら今のうちだぞ?」

「降参やと? くくっ……」

「何がおかしいねん?」

「まだまだ降参なんかするかいな。お楽しみはこっからじゃ!」


 伊東はまだ諦めていなかった。バックラーとナイフを地面に投げ捨てると両手を空に向けてかざし、液状化した金属が合体してひとつとなった。


「!? あれ見て、……めっちゃデカい!」

「ホンマや、これはヤバいで……アズサちゃん!」


 合体したトランスメタルは、ひとふりの刀剣に形を変えた。全長2メートルくらいで、伊東の身の丈をゆうに超えるほどの長さだ。


「俺の自慢の剛剣や。威力はデカイが両手持ち……カタイ鉄でも真っ二つ!」


 頑丈な銀色一色の剛剣――それを軽く振り回して慣らし、伊東は不破と市村にその切っ先を向けた。


「第二試合(ラウンド)じゃ! どっからでもかかって来んかい!」

「……クソッ! やるしかねえのか!」


 相手は変幻自在の金属を操り、さまざまな武器を使いこなす強敵――。果たして市村と不破は、伊東に勝てるのか?


「イッチー、不破さん! 負けたらあかん、がんばって!!」


おまちかね? Q&Aコーナー


Q:伊東の剛剣ってどんくらい長いの?

A:13kmや。……ウソです、2、3メートルくらいあります。伊東の身の丈(182cm)より長くて大きいです。


Q:不破さんボコボコにされすぎじゃね?

A:気のせいだ。あなたが見ているのは不破さんのそっくりさんです。彼のような強豪が伊東みたいなチンピラに負けるはずがない! …たぶん。

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