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同居人はドラゴンねえちゃん  作者: SAI-X
第6章 ロリータ女王と捨てられぬ矜持
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EPISODE108:プライドと忠誠心と晒せぬ生き恥 PART3

 次の日の朝、健はゆったり眠っていたところを携帯電話から鳴るアラームに叩き起こされた。気持ちよく眠っていたのに無理矢理起こされ、不機嫌そうに彼はアラームを止める。

 そして寝息を立てて二度寝を始めた。三人(そのうち二人は女性)もいれば一人くらいは寝相が悪かったりイビキをかいていたりしていそうだが、不思議なことに誰もそんなことはなかった。皆すやすやと健やかに寝ていたのだ。


「ぐぅ……ふぃー」


 健が二度寝を始めてから小一時間経つと、玄関から誰かがインターホンを押した音が三人の耳に飛び込んできた。気だるげに起き上がり、アルヴィーとまり子を寝かせたまま玄関に向かう。


「こんな朝早くにどちら様ですかー……」


 ドアを開けると、そこにいたのは――白峯だった。健は驚いてそのまま「あッあなたは!?」と大声を上げる。


「おはよう! 昨日言ってたアレ、できたわよ」

「そうなんですか! どうぞ上がってください」


 白峯が言っていた例の『アレ』が早くも完成したようだ。それがどのようなものなのかを確かめなくてはならないし、何よりせっかく来てくれたのを追い返すわけにもいかない。健はニコニコ笑いながら、白峯を部屋の中へ上げた。



「うん……おはよう、健」

「お兄ちゃんおはよー……って、その人だれっ!?」


 寝ていたアルヴィーとまり子を起こし、少し散らかっていた部屋をパパッと片付ける。手早く正確にやったお陰で、お客様が来ても大丈夫な程度には片付けられた。白峯が訪問したことについて、アルヴィーは見慣れているためとくに何も気にしてはいなかった。

 だが、まり子は違った。そもそもまり子と白峯は初対面である。それだけならいいが、問題は彼女の目には健が知らない年上の女性を連れ込んでいるように見えたことだ。当然嫉妬するだろうし敵意も向けるだろう。

 ただもしかすれば、『お兄ちゃん』と敬愛してやまない健を取られないように他の女を殺してしまおうと考え出してしまうかもしれない。まあ、そこまで病んだりはしないとは思われるが――。


「この人は白峯とばりさん。みゆきの知り合いで科学者なんだぜ」

「そーなんだ。みゆきさんの知り合いなんだね」

「すっごく頭が良くて料理上手! 絵もお上手! おまけに美人さんなんだ」

「やだぁ、照れるじゃない、もぉー」


 「きれいだなー、いいなぁ」とまり子はうらやましがる。ところで何故まり子はみゆきを『お姉ちゃん』ではなくさん付けで呼んだのか? その理由は『将来ストレス溜めすぎてしわくちゃになりそう。あと30過ぎたら胸が垂れそう』だからだそうだ。


「しかし、とばり殿がこっちまで来てくれるとは珍しいのぅ。それで、どんなものを作ってきてくれたのかな」

「うふふ。気になる? 気になっちゃうよねー」


 店頭に並んだおもちゃをショーウィンドウ越しに見つめているようなアルヴィーの視線を受けた白峯は、「ちょっと待ってねー」と告げてカバンの中をごそごそと漁る。奥の方にしまっていたのか、出てくるまでにだいぶ時間がかかった。


「昨日東條くんから受け取った腕時計から、こんなの作っちゃいましたぁ〜」


 白峯が三人の前に差し出したもの、それは――腕輪のようなものだった。ライトブルーを基調に金色の装飾が施されており、はめたらちょっとしたヒーロー気分が味わえそうだ。ただ、かつての腕時計としての面影はすっかりなくなっている。


「……これはなんですか?」

「腕輪型余剰エネルギー吸収装置、名付けて『セーフティブレス』よ。3つ同時にオーブを使うようなことをしても、これがあれば大丈夫。身体的な負担を軽減してくれるし、この腕輪に吸収された技の余剰エネルギーを解放して体力回復や攻撃に使うことも可能よ」

「腕輪かぁ……これがあったらバクダン花が抜けるよ! やったねお兄ちゃん!」


 「それは腕輪違いっ」と、健がまり子にツッコむ。腕時計からこんなにも凄いものを作ってしまう白峯の高度な技術力に感銘を受ける一方で、健は嘆いていた。愛用していた腕時計がすっかり変わり果ててしまったことを――。


「ふむ……負担を減らしてくれるのか。確かにすごくいいものだが、何ゆえこれを?」

「みゆきちゃんから聞いたのよね、健くんが無茶してまで自分たちを守ってくれたってことを。自分まで気絶するような技を出したってことも聞いたわ」

「そういえば……」


 健は思い出した。辰巳という包帯を顔に巻いた厚着の男が三つ首の蛇のような怪物に変身し、襲いかかってきたことを。その辰巳は生半可ではない強さを誇り、連戦で消耗していたとはいえ健を追い詰めるほどだった。

 死ぬ寸前まで追い詰められたがその時、ウロコが身代わりとして砕け散ったかわりに体力が全快。逆転するも相手はただの蛇の怪物ではなかった、如何なる傷を受けようと無限に再生してしまうヒュドラだったのだ。

 万策尽きたかに思われたとき、彼はある行動をとった。それが『オーブを3つ同時に使う』ということだった。結果としてヒュドラに大打撃を与え退却させるまでに追い詰めるも、その反動は大きく――健は気絶してしまった。


「……わかりました。これ、使わせてください!」

「どうぞ♪ ただし、ひとつだけ守ってほしいことがあるわ」

「守ってほしいこと……ですか?」

「確かに負担を軽減してくれるけど、だからって過信しちゃダメ。くれぐれも無茶は禁物! それだけよ」

「……はい!」


 とばりと約束を交わし、健は『セーフティブレス』を受け取った。心配になって時計としての機能はないのかどうかを聞いてみたものの、残酷なことに時計機能はないとのことだった。健が頭を突っ伏して落ち込んだのは言うまでもない。


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