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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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第4話 ダンジョン庁職員、胃が死ぬ

 その通知は、あまりにも場違いだった。


【ダンジョン庁:監視対象に指定されました】


「……え?」


 天城恒一は、素で間抜けな声を出した。


【コメント】

・公式から直電草

・赤紙じゃん

・終わったなこれは

・国にバレた男


「いやいやいや、なんで!? 俺、今まで一回も規約破ってないですよね!?」


 誰に向かって言っているのかわからないまま、恒一は慌ててスマホを確認する。

 配信はまだ続いている。

 視聴者数は、さらに増えていた。


【探索配信:天城恒一】

 視聴者数:2,846


「増えなくていいから! 今は!」


【コメント】

・冷静にツッコむな

・視聴者増加=危険度上昇

・胃が持たない配信


 そのときだった。


「――天城恒一さんですね?」


 背後から、低く落ち着いた声がした。


「ひゃっ!?」


 情けない声を上げて振り返ると、そこには一人の男が立っていた。

 スーツ姿。ヘルメット着用。胸元には、見覚えのあるロゴ。


「ダンジョン庁、現地管理課の黒岩です」


 男は淡々と名乗った。


「……あ、あの、俺、何かやりました?」


 恒一の声は震えていた。

 心当たりがありすぎて、逆に何がアウトかわからない。


【コメント】

・出た

・胃痛の人

・顔がもう苦労人

・絶対家で酒飲んでるタイプ


「……まず言っておきます」


 黒岩は一度、深く息を吸った。


「あなたを今すぐ処分するために来たわけではありません」


「ほ、ほんとですか……!」


 心底ほっとする恒一。


 だが、次の言葉で地獄が始まった。


「ただし――非常に、非常に、面倒なことになっています」


【コメント】

・あ、終わった

・前言撤回

・胃が死んだ音がした


「面倒って……どのくらいですか」


「昨日から、あなたの映像について、庁に問い合わせが三百件以上来ています」


「多くない!?」


 思わず叫ぶ。


「『あの探索者は何をやっているんだ』

 『ダンジョンの裏側が見えているのではないか』

 『再現性はあるのか』

 ……正直、私も頭を抱えています」


 黒岩はこめかみを押さえた。


【コメント】

・胃薬案件

・この人が一番被害者

・黒岩さん頑張れ


「いや、俺も困ってるんですけど……」


「でしょうね」


 黒岩は、ちらりとスマホを見た。

 配信画面だ。


「……ちなみに、今も配信中ですか」


「え? あ、はい」


 次の瞬間。


「切らないでください」


「え?」


「公式として、現象を確認する必要があります」


【コメント】

・公式公認配信

・神回確定

・逃げられなくなったな


「え、えっと……つまり?」


「今から、私の立会いのもと、同じ現象が起きるか確認します」


 恒一は、頭を抱えた。


「それ、失敗したらどうなるんですか」


「何も起きなければ――あなたはただの“運のいい探索者”です」


「起きたら?」


 黒岩は一拍、間を置いた。


「……報告書が地獄になります」


【コメント】

・黒岩さんの胃が

・本人より可哀想

・胃薬スポンサー付けよう


「俺の心配は!?」


 叫びつつも、恒一は壁の前に立たされた。


 昨日、二度もすり抜けた場所。

 今は、何の変哲もないコンクリートの壁に見える。


「……やっぱり、怖いです」


「当然です」


 黒岩は頷いた。


「では、どうぞ」


【コメント】

・公開処刑

・手汗やばい

・運だけ男、正念場


 恒一は、そっと手を伸ばす。


 ――スッ。


「……」


 指が、沈んだ。


「……あ」


【コメント】

・はい

・再現

・終わりです


 黒岩は、無言でその様子を見つめていた。

 数秒。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「……天城さん」


「はい」


「一つ、聞いていいですか」


「なんでしょう」


「あなた、自分で“何をしているか”理解していますか」


 恒一は、即答した。


「全然わかりません」


【コメント】

・知ってた

・正直者

・だから怖い


 黒岩は、天井を仰いだ。


「……そうですか」


 その姿は、まるで人生を諦めた中間管理職のようだった。


「とりあえず、今日はここまでにしましょう」


「え、いいんですか」


「これ以上やると、私の胃が持ちません」


【コメント】

・胃が主役

・黒岩さん生きて

・次回も胃痛確定


「なお」


 黒岩は、恒一を真っ直ぐ見た。


「しばらくの間、あなたの配信は――

 **公式監視下での継続**となります」


「……それ、自由なくなりますよね」


「ええ」


 恒一は、天を仰いだ。


「普通に生きたいだけなんですけど……」


【コメント】

・もう無理

・諦めろ

・運だけ男の明日はどっちだ


 こうして天城恒一は、

 正式に“面倒な存在”としてダンジョン庁に認識された。


 一番胃を壊している人物を、横に置きながら。


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