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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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34/35

第34話 最後の大歪み

 それは、警報より先に“嫌な感覚”で来た。


 天城恒一は、椅子から立ち上がる。


「……来ます」


 黒岩が端末を見る前に、言葉が出ていた。


 次の瞬間。


【全国ダンジョン警戒レベル上昇】

【同時多発歪み反応】


 モニターが一斉に赤く染まる。


「……数は」


 南條の声がわずかに強張る。


「二十七地点」


 黒岩が即答する。


「過去最大です」


 恒一の視界が、重なる。


 点ではない。


 線でもない。


 ――面だ。


「……全部、繋がってる」


 喉の奥から、言葉がこぼれる。


「同時じゃない」


「引っ張り合ってる」


 鷺宮が低く言う。


「縫い目全体に、

 張力がかかっている」


「どこか一つが裂ければ、

 連鎖する」


 神代が即座に判断する。


「干渉案は凍結中だ」


「やることは一つ」


 全員の視線が、恒一に向く。


「止める」


 恒一は、深く息を吸った。


---


 配信は、つけない。


 これは娯楽じゃない。


 検証ネットワークが、総動員される。


【一次判断:保留多数】

【危険タグ急増】


 恒一は、目を閉じる。


 “見る”。


 境界が、波打っている。


 重なり合った層が、擦れている。


 ――ほどける。


「……動くな」


 低く言う。


「全部、止めて」


 南條が指示を飛ばす。


『全地点、進行停止!』


 だが。


 止めただけでは、足りない。


 歪みは、動いている。


 内部から。


「……俺が、

 全部を見る」


 黒岩が顔を上げる。


「天城さん、それは――」


「直しません」


 恒一は、はっきり言う。


「干渉もしない」


「ただ」


 一拍置く。


「裂ける方向を、見ます」


 視界が、拡張する。


 二十七の地点が、重なる。


 頭が軋む。


 だが、止まらない。


「……北西、二番」


「そこが、一番薄い」


『了解、完全撤退!』


 次。


「中央五番、圧縮が強い」


「人を減らして、負荷を下げて」


 現場が動く。


 歪みが、少しだけ静まる。


 だが、別の場所が揺れる。


「……南東、三番」


「壁面に触るな」


『間に合わない!』


「触るな!」


 その瞬間。


 境界が、波打つ。


 だが――裂けない。


 引っ張られない。


 動きが、止まる。


 全地点。


 徐々に。


 静かに。


 張力が、落ちていく。


---


 数分後。


 警報が、順番に解除される。


【重大被害なし】

【負傷者軽微】


 会議室に、重い沈黙が落ちる。


 誰も、すぐには言葉を出せない。


 恒一は、椅子に崩れ落ちた。


「……直してません」


 かすれた声で言う。


「ただ」


「引っ張らせなかった」


 鷺宮が、小さく頷く。


「それでいい」


 神代も、静かに言った。


「英雄は不要だ」


「最悪が起きなければ、それでいい」


 恒一は、天井を見上げる。


 世界は、縫い合わされたままだ。


 ほどけていない。


 直ってもいない。


 だが。


 裂けなかった。


---


 夜。


 恒一は、配信をつけた。


【探索配信:天城恒一】

 視聴者数:138,912


「……今日」


 一拍置く。


「ちょっと大きく揺れました」


【コメント】

・知ってる

・ニュースやばかった

・大丈夫だったの?


「大丈夫です」


 はっきり言う。


「直してません」


「でも」


「裂けませんでした」


【コメント】

・それでいい

・十分だ

・今日も止まったな


「……俺は」


 画面を見つめる。


「世界を直しません」


「でも」


 一拍。


「今日も、

 境界に立ちました」


 コメントが流れる。


【コメント】

・立ち続けろ

・一人にするな

・明日も頼む


 配信を切る。


 窓の外は、いつも通りの夜景だった。


 特別な光も、

 崩れた空もない。


 世界は、

 まだ、ここにある。


【次回・最終話】

『境界に立つ人』


 英雄ではない終わり。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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