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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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第29話 分散という答え

 会議室のホワイトボードは、久しぶりに文字で埋まっていた。


「……つまり」


 天城恒一は、ペンを握ったまま言う。


「俺が

 全部を“最初から見る”のをやめる」


「一次判断を、

 現場と別の人に任せる」


「で、

 俺は最後だけ確認する」


 黒岩と南條が、向かい側で腕を組んでいる。


「理屈としては、

 正しい」


 南條が言った。


「現場判断、

 一次評価、

 最終確認」


「責任を

 一人に集中させない」


「……でも」


 黒岩が続ける。


「問題は、

 “誰が一次判断をするか”です」


「……ですよね」


 恒一は、苦笑した。


「俺みたいに

 見える人は、

 いません」


「ええ」


 黒岩は頷く。


「完全な代替は、

 不可能です」


 恒一は、少し考えてから言った。


「……じゃあ」


 ホワイトボードに、

 大きく丸を書く。


「“見えない前提”で

 作りませんか」


「……?」


「俺が見てきた

 “見え方”を」


「全部、

 言語化して」


「ルールにして」


「当てはまったら、

 危険」


「当てはまらなかったら、

 即GOじゃなくて“保留”」


 南條が、目を細めた。


「……完璧じゃない」


「はい」


 恒一は、はっきり言う。


「でも、

 “足切り”にはなります」


「俺が見る前に、

 “怪しい案件”を

 減らせる」


 黒岩が、静かに言った。


「……一次フィルターですね」


「そうです」


 恒一は、ペンを置いた。


「俺は、

 最後の確認だけをする」


「全部を

 直接見ない」


 沈黙。


 だが、それは否定ではなかった。


「……やりましょう」


 南條が、決断した。


「現場統括として、

 責任は私が取る」


「……ありがとうございます」


「ただし」


 南條は、真っ直ぐ見る。


「あなたは、

 逃げるわけじゃない」


「分かってます」


 恒一は、即答した。


「……中心には、

 残ります」


---


 その夜。


 恒一は、配信をつけた。


【特別配信:天城恒一(重要発表)】

 視聴者数:96,402


「……今日は、

 大事な話があります」


 コメント欄が、静まる。


「俺、

 一人で全部見るの、

 やめます」


【コメント】

・え

・引退?

・どういうこと


「引退しません」


 即答だった。


「むしろ、

 続けるための話です」


 画面に、

 簡易フロー図を映す。


「これからは」


「①現場

 ②一次判断チーム

 ③俺」


「この順番で

 判断します」


【コメント】

・分散判断

・ネットワーク化

・やっと来た


「俺は、

 最後にしか

 判断しません」


「でも」


 一拍置く。


「最後は、

 必ず俺が見ます」


【コメント】

・逃げない宣言

・責任重い

・でも安心する


「……正直」


 恒一は、少しだけ笑った。


「怖いです」


「俺が

 “全部見てない”状態で

 判断するの」


【コメント】

・人間だな

・それでもやるのか

・応援する


「……でも」


 画面を、まっすぐ見る。


「俺が壊れたら、

 もっと止まらない」


「だから」


「壊れないために、

 分けます」


 コメント欄が、

 ゆっくりと流れる。


【コメント】

・それでいい

・一人じゃない

・中心にいろ


「……中心には、

 います」


 恒一は、静かに言った。


「ただ」


 一拍置いて。


「独りじゃ、

 やりません」


---


 配信終了後。


 黒岩が、端末を閉じながら言う。


「……世間の反応ですが」


「はい」


「好意的です」


「……意外です」


「“人間らしい”と」


 恒一は、苦く笑った。


「それ、

 褒め言葉ですかね」


「ええ」


 黒岩は頷く。


「少なくとも、

 “英雄”扱いよりは」


 その言葉に、

 恒一は少しだけ肩の力を抜いた。


 分散という答えは、

 万能ではない。


 ミスも出る。

 遅れも出る。


 それでも。


 一人で潰れるより、

 遥かにマシだった。


【次回予告】

『それでも、中心にいる』


 分けても、

 逃げても、

 最後に残る場所は――

 変わらなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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