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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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第28話 検証枠の限界

 朝から、頭が重かった。


 天城恒一は、コーヒーを一口飲んで、そっと机に戻した。

 味がしない。


「……今日、何件目ですか」


「午前中だけで、七件です」


 黒岩の声は、いつも通り冷静だった。

 それが、逆に現実感を強める。


 七件。

 すべて別の地域。

 すべて“軽微だが無視できない”異常。


 モニターには、同時に五つの映像が映っている。


「……ちょっと、待ってください」


 恒一は、片方の画面から目を逸らせなくなった。


「そこ、

 一回止めてください」


『了解』


 別の画面が動く。


「……いや、そっちは進んでいいです」


『え?』


「大丈夫。

 今は、

 こっちの方が嫌な感じがします」


 言いながら、こめかみがズキリと痛んだ。


【内部ログ】

・判断遅延:0.8秒

・反応誤差:増加傾向


「……天城さん」


 黒岩が、低く声をかける。


「少し、

 休憩を――」


「まだ、

 大丈夫です」


 反射的に答えてしまった。


 大丈夫じゃない。

 分かっている。


 でも、

 止まれなかった。


---


 午後。


 配信はつけていない。

 だが、状況は配信以上に過密だった。


「……次」


 画面が切り替わる。


 地下型ダンジョン。

 狭い通路。


「……ここは」


 言いかけて、言葉が止まった。


 “見える”。

 だが、弱い。


 これまでの境界歪みとは、違う。


「……判断、

 保留してください」


『保留?』


「今、

 俺の中で

 整理が追いついてません」


 沈黙。


 その数秒が、

 致命的になりかけた。


『……っ、

 小規模崩落!』


「……!」


 幸い、怪我人は出なかった。

 だが、現場は騒然とする。


 恒一は、椅子に深く座り込んだ。


「……俺」


 喉が、からからだった。


「今、

 遅れました」


 黒岩は、すぐには否定しなかった。


「……はい」


 正直な答えだった。


「致命的ではありません」


「……でも」


「限界が、

 近い」


 黒岩の言葉は、淡々としている。

 だが、はっきりしていた。


---


 その夜。


 恒一は、久しぶりに配信をつけた。


【探索配信:天城恒一(状況説明)】

 視聴者数:82,114


「……今日は、

 検証じゃないです」


【コメント】

・顔色やばい

・無理してない?

・件数多すぎだろ


「正直に言います」


 画面の向こうを、まっすぐ見る。


「……限界、

 近いです」


 コメント欄が、ざわついた。


【コメント】

・は?

・やめるの?

・一人で抱えすぎ


「やめません」


 即答だった。


「でも」


 一拍置く。


「このままじゃ、

 いずれ、

 大きな判断ミスをします」


【コメント】

・分かる

・限界ある

・人間だぞ


「……だから」


 恒一は、深く息を吸った。


「俺だけで

 全部見るの、

 やめたいです」


 コメント欄が、一瞬止まる。


【コメント】

・どういう意味

・代わりいるの?

・無理じゃね?


「代わりはいません」


 はっきり言う。


「俺の代わりは、

 いない」


「でも」


 続ける。


「俺の“補助”は、

 作れるはずです」


【コメント】

・補助?

・分担?

・ネットワーク?


「そうです」


 頷く。


「俺が

 全部判断するんじゃなくて」


「誰かが

 一次判断をして」


「俺は、

 最後に見る」


 それは、

 逃げではなかった。


 生き残るための、

 選択だった。


「……一人で

 背負い続けるのは」


 声が、少しだけ震える。


「無理です」


 コメント欄が、

 ゆっくりと流れ始めた。


【コメント】

・それでいい

・一人にするなって言った

・仕組み作ろう


「……ありがとうございます」


 恒一は、頭を下げた。


 配信を切ったあと、

 椅子に深く沈み込む。


 怖かった。

 自分の限界を

 認めるのが。


 だが同時に、

 少しだけ――


 呼吸が、楽になった。


 検証枠には、限界がある。


 だからこそ。


 一人で立つのを、

 やめなければならなかった。


【次回予告】

『分散という答え』


 壊れないための選択は、

 孤立を手放すことだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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