第23話 配信を続ける意味
その日の配信は、いつもより少し遅れて始まった。
【探索配信:天城恒一(検証枠)】
視聴者数:77,318
「……こんばんは」
天城恒一の声は、いつもより低かった。
【コメント】
・今日は遅め?
・国家会議どうだった
・顔色悪くない?
「……色々、ありました」
それ以上は言わない。
言えない、というより――言うべきか分からなかった。
今日の配信は、通常探索ではない。
検証でもない。
「今日は、
ダンジョンに入りません」
【コメント】
・また遠隔?
・雑談回?
・判断配信?
「半分、雑談です」
そう言って、恒一はカメラを正面から見た。
「……正直に言います」
少し、間を置く。
「俺、
この配信を続ける意味が
分からなくなってきました」
コメント欄が、一瞬止まった。
【コメント】
・急に重い
・やめないで
・どうした
「配信してると、
見られてる感じがします」
「でも、
配信してないところで」
国家会議のことが、頭をよぎる。
「もっと重い判断が、
勝手に進んでる」
【コメント】
・国家案件だからな
・配信外は怖い
・でも配信してくれてるから分かる
「……それなんですよ」
恒一は、ぽつりと笑った。
「配信してると、
コメントがある」
「賛成も、反対も、
無責任なのも」
「全部、
俺の前に出てくる」
【コメント】
・逃げ場ないな
・でも見える分マシ
・透明よりいい
「……見える分、マシ」
その言葉が、胸に残った。
そのとき。
【コメント】
・朝霧ルナです
・今、いい?
「……本人?」
コメント欄がざわつく。
【コメント】
・本物?
・青バッジついてる
・来た
「どうぞ」
少し緊張しながら答える。
【朝霧ルナ】
・非公開の判断、怖いでしょ
・誰にも見られない判断って
・一番、人を壊す
恒一は、画面を見つめた。
「……はい」
【朝霧ルナ】
・だから配信してるの、
・間違ってないと思う
・見られることで、
・一人にならない
【コメント】
・それ
・一人で決めさせるな
・配信やめたらダメ
「……」
恒一は、深く息を吸った。
「俺、
正しい判断ができるとは
思ってません」
「でも」
言葉を探しながら、続ける。
「配信してると、
誰かが見てる」
「誰かが、
“それは違う”って言ってくれる」
【コメント】
・言うぞ
・止めるぞ
・一緒に考える
「……ありがとうございます」
それは、初めて
“視聴者”に向けて
はっきり言った感謝だった。
「だから」
恒一は、少しだけ姿勢を正す。
「俺は、
配信を続けます」
「事故を見せるためじゃなく」
「判断を、
独り占めしないために」
【コメント】
・それでいい
・検証枠の意味
・配信の価値出たな
その瞬間、
視聴者数が少しだけ増えた。
数字よりも、
空気が変わったのが分かる。
配信終了。
画面が暗転する直前、
恒一は小さく呟いた。
「……見られてる方が、
まだマシだ」
それは、
覚悟というより、
選択だった。
【次回予告】
『一度、間に合わない』
どれだけ見られていても、
届かない瞬間は、
必ず来る。
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