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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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第21話 国家が、正式に動く

 その連絡は、あまりにもあっさりしていた。


『国家ダンジョン研究局より、

 天城恒一氏に正式な面談要請があります』


「……国家?」


 天城恒一は、スマホを持ったまま固まった。


 数秒遅れて、隣にいた黒岩がため息をつく。


「……来ましたね」


「“来ましたね”で済ませないでください。

 国家って、あの国家ですよね?」


「はい。

 テレビに出てくる方の国家です」


「最悪だ……」


 逃げ場はない。

 それはもう、分かっていた。


---


 会議室は、やけに静かだった。


 配信機材は一切なし。

 カメラも、コメント欄もない。


 ただ、長机と資料と、人。


「……落ち着かないですね」


「でしょうね」


 黒岩は、恒一の正面に座っている。

 今日はスーツ姿だが、どこか張り詰めている。


 そして。


「初めまして」


 一人の男が立ち上がった。


 年齢は三十代後半。

 表情は穏やかだが、目が冷たい。


「国家ダンジョン研究局・特別顧問、

 神代ユウです」


「……天城恒一です」


 名乗りながら、恒一は直感的に理解した。


 ――この人、

 俺を“人”として見てない。


「本日は、お忙しいところありがとうございます」


 神代は淡々と話し始める。


「単刀直入に言います」


 資料を一枚、机に置く。


「君の判断能力は、

 すでに国家レベルの被害抑止に

 影響を与えています」


「……」


「先日の遠隔検証。

 あれによって、

 複数名の探索者が助かりました」


 恒一は、言葉に詰まった。


「……結果論、です」


「ええ」


 神代は即答した。


「ですが、

 国家は“結果”で動きます」


 空気が、少し重くなる。


「我々の提案は、こうです」


 神代は、はっきり言った。


「天城恒一。

 君を、

 国家危機対応判断者として

 位置づけたい」


「……は?」


 一瞬、意味が理解できなかった。


「判断者……?」


「簡単に言えば」


 神代は、感情を挟まず説明する。


「重大ダンジョン異常発生時、

 君の判断を

 最優先参考情報とする」


「……俺が?」


「はい」


 恒一は、思わず黒岩を見る。

 黒岩は、目を伏せていた。


「……そんなの」


 声が震える。


「俺、

 ただの配信者ですよ」


「肩書きは問題ではありません」


 神代は、淡々と続ける。


「事実として、

 君が“見て、止めた”ことで

 被害は減った」


「……」


「逆に言えば」


 一拍置く。


「君が判断を誤れば、

 被害は増える」


 その言葉は、

 脅しではなかった。


 事実として、

 突きつけられただけだ。


「……俺に」


 恒一は、喉を鳴らして言った。


「そんな責任、

 背負えません」


 沈黙。


 だが、神代は首を振った。


「背負うかどうかは、

 もう問題ではありません」


「……?」


「君はすでに、

 “判断している”」


 神代は、真っ直ぐに言った。


「そして、

 世界はそれを利用し始めている」


 恒一は、言葉を失った。


 そのとき。


「……少し、

 言い方が過ぎます」


 黒岩が、低く口を開いた。


「天城さんは、

 人です」


「承知しています」


 神代は、即答した。


「だからこそ、

 壊れないように

 枠組みを作る」


 恒一は、唇を噛んだ。


「……俺は」


 絞り出すように言う。


「人を助けたいとか、

 世界を救いたいとか」


「そんな立派な理由で

 やってきたわけじゃない」


 神代は、黙って聞いている。


「事故が怖かっただけです」


「……」


「だから、

 止まった」


「見ただけです」


 それでも。


 神代は、静かに言った。


「君の判断一つで」


 一拍置いて、続ける。


「被害が、

 百人単位で変わる」


 その言葉が、

 胸に重くのしかかる。


 会議室を出たあと。


 廊下で、恒一は立ち止まった。


「……黒岩さん」


「はい」


「俺、

 もう普通に戻れないですよね」


 黒岩は、すぐには答えなかった。


 だが、やがて静かに言う。


「……ええ」


「ですよね」


 恒一は、苦く笑った。


 配信アプリを開く。


 いつもと同じ画面。

 いつもと同じ名前。


 だが、その裏側で。


 国家が、

 本気で動き始めていた。


【次回予告】

『守るための判断は、切り捨てを含む』


 天城恒一は、

 知らないうちに

 “選択を迫られる側”に

 立たされていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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