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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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18/26

第18話 仮説検証:ズレは境界で起きる

 その日の配信は、開始前から静かだった。


【探索配信:天城恒一(仮説検証)】

 視聴者数:72,441


 数字は高い。

 だが、コメント欄は落ち着いている。


【コメント】

・今日は検証回

・境界一点集中

・事故らなくていい、確認してくれ

・黒岩さん、ログ準備OK?


「準備できています」


 黒岩は端末を掲げ、短く答えた。

 冗談もない。

 空気が、完全に“実験”だった。


「……正直、緊張してます」


 天城恒一は、カメラに向かって正直に言った。


「今日は、

 俺が何かする日じゃありません」


【コメント】

・知ってる

・近づくな

・立ち位置固定で


「……固定って言われると怖いんですけど」


 苦笑しつつ、恒一はダンジョン内部へ入る。


 今日の検証ポイントは一つ。


 ――通路と部屋の境界。


「前回、

 コメント欄で出た仮説を整理します」


 恒一は、簡易マップを表示した。


「ズレは、

 “床そのもの”じゃなくて」


 指でなぞる。


「“区画が切り替わる境界”で

 起きているんじゃないか、って話です」


【コメント】

・それ

・区画遷移説

・ロード境界説


「難しい言葉やめてください!」


 だが、否定はしなかった。


 境界から、三メートル手前。


 恒一は、ぴたりと止まる。


「……ここまでです」


【コメント】

・近づくな

・その距離で

・深呼吸しろ


「深呼吸は余計です!」


 言いながらも、呼吸を整える。


 視線を、境界に向ける。


 ――何も起きない。


「……今は、

 何も見えません」


【コメント】

・未発生

・距離足りない?

・でも踏むな


「踏みません」


 恒一は即答した。


「今日は、

 “踏まない前提”で

 できることだけやります」


 そう言って、

 体の向きを少し変えた。


 境界を、斜めから見る。


「……あ」


【コメント】

・何

・見えた?

・言語化頼む


「……重なって見えます」


 恒一は、慎重に言葉を選ぶ。


「床と、

 その先の床が」


「紙一枚分だけ、

 ズレてる感じです」


 コメント欄が、一瞬止まる。


 次の瞬間。


【コメント】

・出た

・微小歪み

・境界一致


「……黒岩さん」


「確認します」


 黒岩が即座に端末を操作する。


「……ログに反応あり」


 声が低くなる。


「“未定義干渉”、

 発生レベル1」


【コメント】

・公式反応

・でもレベル低い

・事故未満!


「……今、

 俺は一歩も動いてません」


 恒一は、はっきり言った。


「見てるだけです」


【コメント】

・観測だけで出る?

・近づいてないのに?

・でも踏んでない


「……踏んでない」


 その一点が、重要だった。


 恒一は、ゆっくりと一歩後ろに下がる。


 ――ズレが、消えた。


「……消失確認」


 黒岩が言う。


「“歪み未発現終了”」


【コメント】

・成功

・止めた

・仮説合ってる


 恒一は、息を吐いた。


「……今のが、

 事故になる前、だったと思います」


【コメント】

・事故未遂

・これが境界仮説

・踏んだら終わり


「……踏まなかった」


 恒一は、呟く。


「それだけです」


 探索は、その後も続けられた。

 同様の境界を、三箇所確認。


 結果は同じ。


 ・近づく

 ・歪み発生

 ・踏まない

 ・後退

 ・消失


「……再現性、ありますね」


 恒一が言うと、黒岩は深く頷いた。


「はい」


 そして、静かに続けた。


「公式ログとして、

 採用可能です」


【コメント】

・公式採用

・検証枠完成

・事故男じゃなくなった


「……事故男、

 そんなに嫌われてたんですか?」


【コメント】

・嫌いじゃない

・でも今の方が好き

・安心して見れる


 その言葉に、

 恒一は少しだけ救われた。


 配信終了。


 控室。


「……終わりましたね」


 恒一は、椅子に座り込んだ。


「事故は、

 起きませんでした」


「はい」


 黒岩は、端末を閉じる。


「ですが、

 今日の検証は」


 一拍置いてから、言った。


「事故を“防いだ”回です」


 恒一は、黙って頷いた。


 次回予告欄に、

 新しい文字が表示される。


【次回予告】

『公式が、真似を始める』


 世界は、

 ようやく追いつこうとしていた。


 ――だが、

 同じことは、

 誰にでもできるわけじゃない。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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