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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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16/28

第16話 検証枠として見られ始める

 配信開始と同時に、空気が違うのが分かった。


【探索配信:天城恒一(検証枠)】

 視聴者数:66,215


「……え、また増えてません?」


 天城恒一は、画面の数字を見て思わず言った。

 昨日の配信で事故は起きていない。

 派手な展開もなかったはずだ。


【コメント】

・検証回待ってた

・今日はどこ見る?

・境界チェック頼む

・黒岩さんも来てる?


「来ています」


 黒岩が、画面の端で軽く会釈する。

 腕組みではなく、端末を持った“仕事モード”だ。


「……なんか、

 期待のされ方が変わってません?」


【コメント】

・事故期待じゃない

・判断見に来てる

・今日踏まないでくれよ


「踏まない前提で見られてるの、

 逆にプレッシャーなんですけど」


 苦笑しながらも、恒一は深呼吸した。


「今日は、

 昨日と同じダンジョンですが――

 “異常が出やすいと言われている境界”を

 遠目で確認します」


【コメント】

・検証っぽい

・ちゃんと説明するの助かる

・事故男卒業?


「卒業してないです!

 たまたま事故が多かっただけです!」


 ツッコミを入れつつ、通路を進む。


 床と壁。

 通路と部屋。

 天井と柱。


 恒一は、立ち止まっては確認し、

 決して踏み込まない。


「……ここ、

 昨日コメントで指摘されてましたよね」


【コメント】

・そう

・境界がズレて見える場所

・でも今日は何もない?


 恒一は、首を傾げた。


「俺には……

 今のところ、何も見えません」


【コメント】

・踏まないからだろ

・近づくな

・その距離でいい


「……距離、か」


 その言葉を、恒一は噛みしめる。


(俺がやってるの、

 “踏まない”ことだけだ)


 異常を起こしているわけじゃない。

 解除しているわけでもない。


 ただ、

 “起きる前に止まっている”だけ。


 それなのに。


【コメント】

・今の判断良かった

・止まる判断が一番難しい

・プロでもできないやつ


「……いやいや」


 思わず手を振る。


「俺、

 判断してるつもりはないですからね」


【コメント】

・無自覚が一番怖い

・でもそれが強み

・検証向き


「検証向きって……」


 恒一は言葉を濁した。


 探索は続く。

 今日も、異常は起きない。


 だが、コメント欄は落ち着いていた。

 減らない。

 荒れない。


 数字も、ほぼ横ばい。


【コメント】

・今日はこのままでいい

・事故らなくていい

・観測してる感じが楽しい


「……楽しい、ですか」


 その言葉が、少し意外だった。


 配信終了。


 控室に戻ると、黒岩が端末を閉じた。


「本日の配信ログですが」


「……はい」


「コメント欄の内容、

 かなり質が上がっています」


「質……?」


「煽りが減り、

 仮説と確認が増えました」


 黒岩は淡々と言う。


「あなたは今、

 “何かを起こす人”ではなく」


 一拍置いて、続ける。


「“何が起きるかを見極める人”として

 見られ始めています」


 恒一は、少し考えてから言った。


「……それって」


「はい」


 黒岩は頷く。


「ネタ枠から、

 検証枠への移行です」


「……俺、

 そんなつもりじゃなかったんですけど」


「でしょうね」


 黒岩は小さく笑った。


「ですが、

 視聴者はもう

 “あなたが事故る瞬間”より」


 画面を見せる。


【コメント抜粋】

『ここで止まれるか』

『踏まない判断が重要』

『次はどこを見る?』


「“あなたが止まる瞬間”を

 見ています」


 恒一は、黙り込んだ。


 事故を起こさなくても、

 見られる。


 だがそれは、

 “気を抜けない”という意味でもあった。


 帰り道。


 夜風に当たりながら、恒一は思った。


 期待は、

 形を変える。


 事故の期待から、

 判断の期待へ。


 そしてそれは――

 逃げ場がなくなるということでもある。


 次回予告欄には、

 すでに新しい文字が出ていた。


【次回予告】

『仮説が生まれるコメント欄』


 物語は、

 コメント欄と一緒に

 次の段階へ進もうとしていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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