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事故を起こさないダンジョン配信者は、なぜか世界の異常が見えてしまう   作者: 相馬カイ


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第1話 底辺探索者、事故で配信を始める

※本作は

「事故を起こす話」ではありません。

「事故を起こさないために、止まる話」です。


主人公は最強でも英雄でもありません。

判断を間違えることもあります。

全部を救えるわけでもありません。


ただ、

進まないという選択だけは、必ずします。


ダンジョン配信 × 現代ファンタジー × 検証要素

コメディから始まり、

徐々にシリアスへと移行していきます。


長編前提ですが、

一区切りごとに読みやすく構成しています。

気軽に読んでいただければ嬉しいです。

 家賃の支払い期限は、今日だった。


「……詰んだな」


 天城恒一は、スマホの残高表示を見て小さく呟いた。

 残高、三千二百円。

 これでどうやって今月を乗り切れというのか。


 探索者。

 ダンジョンが日本各地に出現してから生まれた職業だが、全員が稼げるわけじゃない。

 恒一はその中でも最底辺のEランク探索者だった。


 パーティーには入れてもらえず、ソロ。

 実績なし、スポンサーなし、コネなし。


 そして――


「ソロ探索者は配信必須、か……」


 ダンジョン庁の規約が、容赦なく現実を突きつけてくる。

 無配信探索はライセンス停止。

 探索者を続けるなら、配信するしかない。


「……どうせ誰も見ないだろ」


 そう言って、恒一はスマホを固定し、配信アプリを起動した。


【探索配信:天城恒一】

視聴者数:0


「えー……テスト、テスト。聞こえてたらラッキーです」


 返事はない。

 まあ、当然だ。


 舞台は初心者向けダンジョン《第七管理区・旧地下鉄跡》。

 Eランク御用達、低危険度。

 恒一でも何度か潜ったことがある。


 配信開始から数分後、視聴者数が「3」になった。


【コメント】

・誰

・底辺配信?

・Eランクで草


「え、見てる人いる……?」


 急に緊張して、足元がおろそかになった。


 ――ガンッ!


「うわっ!?」


 床の罠。

 鈍い衝撃音と同時に、天井から魔物の攻撃が降ってくる。


「ちょ、待っ――」


 本来なら即死。

 恒一はそう理解していた。


 だが。


 ズン、と鈍い感触だけが体をかすめた。


「……え?」


 痛くない。

 というか、当たっていない。


 攻撃は、恒一の体の“横”をすり抜けるようにして、床に激突していた。


【コメント】

・今の当たってね?

・え?

・ラグ?


「……初心者ダンジョン、優しいな」


 恒一はそう結論づけて、冷や汗を拭った。

 心臓がうるさい。


「今のは……俺が悪いです。はい。気をつけます」


【コメント】

・いや今のはおかしい

・判定どうなってる

・回避フレーム?


 コメント欄が、ざわついている。


 だが恒一は、それどころじゃなかった。

 生きている。それだけで精一杯だ。


「と、とりあえず進みますね」


 慎重に一歩踏み出す。


 ――スッ。


 壁に触れた指が、わずかに沈んだ。


「……あれ?」


【コメント】

・壁触った?

・今沈んだぞ

・は?


「え、ちょ……」


 恐る恐る、もう一度押す。

 今度は、明確に。


 指が、壁の中に入った。


「……え?」


【コメント】

・壁抜け!?

・は???

・初心者ダンジョンってこんなんだっけ?


 恒一は、ゆっくりと壁から手を離した。


「……バグ?」


 呟いた瞬間、コメント欄が一気に流れ始める。


【コメント】

・バグ踏みおじさん爆誕

・運だけ男

・なんで生きてるんだこいつ


「いや、俺は普通に探索してるだけなんですけど……」


 そう言いながら、恒一は気づいていなかった。


 ――視聴者数が、「27」になっていることに。


 そしてこの配信が、

 切り抜かれて拡散され始めていることにも。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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