森のダンジョン 〜仕立て屋の魔女〜
登り階段
トン、トン、トン……
ホルド「見えてきた、後少しだ。」
アニヤ「この登り階段、結構あるわね?」
ハーハー
ぶ、物理的にシンドイのは私だけで、装備品の黒猫と死霊は何ともないから、気楽なもんだ。
私「神代エリアは抜けたと思いたい」(ぜーぜー)
最後はバイクで楽しようと試運転がてら走らせてみたが、かえって、そのエンジン音で敵を呼び寄せてしまい、戦う羽目になり、かなり魔力を消費していた。
私『ヘルメーカーは便利だけど、私の魔力には限りがあるからなぁ、どうにかして、継戦能力を高めたい所だ。』
階段登りきった先の眩い光。
それを抜けるとそこは今までとは、うって変わって森のダンジョンで木漏れ日と木の影で鬱蒼とした感じだった。
私「うわぁ、虫とか多そう。」
ホルド「俺はここ(胸の谷間)から降りないぞ。」
アニヤ「寄生虫とかヒルとかのスリップダメージを気をつけなくっちゃ。」
恐る恐る探索を開始する。
しかし、その心配は要らなかった。
私のピチピチボンテージスーツは虫除けの効果があるらしい。
私『食糧があと少しだったから、野生動物とかいたら積極的に狩って、干し肉とかにしたいわ……』
その前に塩がない。岩塩とか見つかるかな?
ガサガサ
ヒョコ!
ゴブリン じー
私「なんだ、ゴブリンか。」
(中立的モンスターにエンカウント)
ここは奴らのテリトリーらしい、ゴブリンは敵対しなければ比較的大人しいと思う。特に女性に対して。
ホルド やんのかステップ
私「ホルド、やめて。胸の谷間で暴れるのは。」『乳首が擦れちゃう。』(ぴくん)
ゴブリン「ウホ、ウホウホ、ウホホ、ホ?」
アニヤ「え?やだ。」
私「アニヤ、なんて?」
奴らに遭遇するとお決まりの口上を述べるようだが、私はあいにく、そこら辺の記憶が飛んでいる。
ここは奴らの言葉がわかるエルフに翻訳を頼もう。
アニヤ「こどもを産んでって?」
私「やだ!」
ゴブリン「ウホホー」
アニヤ「そこをなんとかー。」
やだってば!プロポーズするなら、もっといろいろ口説き文句考えろよ!
気を取り直して、ゴブリンに鉱脈がないか聞いてみる。
アニヤ「ウホ、ウホウホ、ウホホホ、ホ?」
ゴブリン「ウホー、ウッホホ、ウホホホ、ウホ!」
ゴブリンが後ろを指さしている。そっちの方角にあるようだ。
私「ウホウホー。」
私は別れの挨拶にゴブリンに手を振って、その場を去ろうとした……しかし。
ゴブリン「?ウ?ウホウホ、ウホホホ、ウッホッホー!」
アニヤ「ただで教えたわけじゃないって!」
え?
ガサ!(敵対ゴブリン)
ガサ!(敵対ゴブリン)
ガサ!ガササ!
あ、やばいのでは?
あの個体なんて、ティン○ィンギンギンなんですが?今、魔力あんまりないから、数で押し切られるとまずい。薄い本のクッコロ即落ち展開になってしまう。
アニヤ「不可視!」
ビュゥゥゥゥ……ン!
昔は私も使えてたらしい不可視の魔法。目をつけた女人がいきなり消えてゴブリン達は驚いている。ホッ
黒猫にはしばらくの間、ボンテージスーツの中に顔を入れてもらう。
ホルド『く、苦しい……』
キョロキョロしてるゴブリン達の横を音もなくすり抜ける。アニヤのスキル消音移動だ。
私『さすが、元シーフ!』
アニヤ テレテレ
かっ、かわいい!嫁にしたい!
しばらく進んで、バイクを辺津鏡から出して一気に距離を取る。
ホルド「ふぅ!」(ぴょこっ!)
プルプルしながら猫が谷間から顔を出す。
私『ここまで来れば、もう、追いかけてこないかな?』
そのまま走らせたらエンジン音で敵を引き寄せるので、すぐに辺津鏡にしまう。
後は、歩きだ。アニヤのスキルは万が一の時のために取っておかなくては。
しばらく進むとハゲ山が見えてきて、中腹の岩場にそれらしき亀裂がある。
日(?)の光に照らされて、それは青く光っている。岩塩ではないっぽい……
私「あれね?鉱脈ってのは?」
ホルド「行ってみようぜ!」
ザッ、ザッ、
ジャリリ、
近づいて確認する。また、のぼりだ。
元ニートにはキツイ。
ドワーフの血が騒ぐのかホルドは興奮して鼻息が荒い。コイツらドワーフが少子化な理由が分かった気がする……
ホルド「うわ!魔石の鉱脈だ!やった!めっちゃレアだぞ!」
ホルドによれば、その昔はたくさん魔石が取れて、魔導技術で王国は大いに栄えたとか聞いたが。今は魔石は希少鉱物。
私「ツルハシは辺津鏡にもないわよ?」
おもむろにヘルメーカーを亀裂に向ける。コレで掘るつもりだ。
カチリッ
ホルド「わー、やめろ!魔石に魔力なんてぶつけたら大爆発するぞ!」
おっと!危ない!
危うくトリガーを引くところだった。銃を腰のホルスターにしまって、そっと撃鉄を下げる。
アニヤ「またニキータの店探さないとね?」
多分、この森ダンジョンに合わせたラインナップにしてくるだろうから。ツルハシもあるかもしれない。
ホルド「こっから、見えないか?建物。」
アニヤ「ちょっと待って……。」
アニヤのスキル 鷹の目
遠くのものでも見える。
シーフというより、もはや狩人みたい。
森の住人で狩りをして暮らしていたから、そういうスキルが充実しているのだろう。
学校を出てニートしてた私とは大違いだ。
アニヤ「あ、向こうに一軒。」
アニヤが指差す方向を見ても、何も肉眼では見えない。だいぶ、歩かないといけない。天井の疑似太陽の位置を確認する。
私『今日はそこでお泊りコースかな?』
道中、
ヴァイパーや一角ウサギ等とエンカウントして、ヘルメーカーで頭を吹き飛ばして、辺津鏡にしまう。生き物は出したときに損壊するが、死んでるなら大丈夫だ。
私『もしかすると、金の鍵とかだったら、生き物も収納できるのかも。』
マフ『もしかしても何もその通りよ。』
あ、やっぱり?
頭の中の辺津鏡の管理人は続ける。
マフ『アナタの辺津鏡の等級は鉄。生き物は収納できない。金は無傷、銀は損傷。』
なるほど。
なんか、上には上がいるのだと思うと、悔しくもある。
マフ『鉄の下にも木の鍵なんてのもあるわよ?』
うーん、あんまり嬉しくない情報。修行次第で上を目指せるとかはないのだろうか?
マフ『遺伝によるところが大きいからねー?そういうのはないわ。』
ガッカリ。
そうこうしていると、一軒屋に到着した。辺りは夕日でオレンジ赤い。東の空から濃い青が迫っている。
ホルド「早く中に入ろうぜ。」
私『や、休みたい……』
その木のロッジのような建物に近づくと、
ボコっ!
地面から草の生えたゴーレムが顔を出した。
ホルド「げ!」
アニヤ「ガーディアン?!」
私「えー!」
ゴーレム(ブゥン!)
おおきく振りかぶったゴーレムのパンチが伸びる!
ゴッシャァ!
咄嗟に避けて、さっきまでいた地面が宙に舞う。
私「この!」
ドゥン!
ドかぁ!
ガラガラ……
私「やった?」
しかし、土くれはすぐにまたコアの鉱石を元にゴーレムの体を再構築する。
私『ひぇー!まだやるの!?』
ホルド「見えた!コアは首の所だ!」
アニヤ「私に任せて!」
ドワーフの鉱物を見分ける目とエルフの精密射撃。
ドゥン!
パキーン!
ゴーレム「……!」
グッシャァ!
ゴーレムはその場で土に戻った。
この2人(?)がいてホントに助かった。頼りにしてる!
カランカラン
その家は店のような作りで入って正面のカウンターに女性が一人いた。
クチーテァ「あら、いらっしゃい!私はクチーテァ、仕立て屋の魔女だよ?」
ボヨヨン
私のより大きい!そして柔らかそう!つか、仕立て屋?
私「あ、噂の裁縫師!」
クチーテァ「噂なの?私が?」
魔女は目の周りに濃いクマができる。それ以外に彼女たちを見分ける方法はない。コゲ茶の長い髪の魔女に私はあの件を話した。
私「いま着てるスーツの改造ってできそう?」
クチーテァ「え?それ?神代のやつかぁ……できなくもないけど。」
私「やった!ちなみにミスリルアーマーを胸とかに着けたいんだけれど?できそう?!」
クチーテァ「まぁ、時間は掛かるけどやってあげるよ。」
私「よかった!」
あ、でもちょっと待てよ。スーツの改造には脱がないとだめだ。
正真正銘のスッポンポンになってしまう!お毛毛がないから丸見えだ!
クチーテァ「そういうことなら、服は貸し出すよ。」
神!さすが魔女!話が分かる!
アニヤ「でも、お代は?」
クチーテァはカウンターテーブルの影に立てかけてあったであろうツルハシを取り出した。
ホルド「やった!」
クチーテァ「?まだ何も言ってないんだけど?コレで、魔石とか掘ってきて?この袋に詰められるだけ。」
アニヤ「よかった。たまに、魔女のお代には人の魂とかあるから採取が大変な時があるのよね。」
何それ……怖いんだけど。
クチーテァ「ここらにはゴブリンの魂くらいしか採取できないでしょ?あれはあんまり高値で取引されないから……」
魂って取引されてんだ……
スーツの改造を待ってる間に魔石を狩りに行くことになった。が、とりあえず、明日にしたい。
私は宿の交渉をした。
実質、女一人だし、ベッドマットは自分で用意できるから、すんなりと泊まっていいことになった。




