隠しエリア&隠しボス
一夜明けて……
多分、一夜明けているはず。
陽の光がないので分からないが、体感そのくらいの時間は経過したと思う。
今さらながら懐中時計のネジを回しておくべきだったと反省している。
もう、止まって久しい。
今から回そうにも回す道具を落としている……。
定期的なメンテナンスができる人は偉いと思う。私には無理だ。
そんな感じで今日も登り階段を探してダンジョン探索が始まる。アニヤの愚痴から。
アニヤ「アナタが宿屋で夜、もぞもぞしてたのは知ってたけどさぁ……。」(モジモジ)
ホルド「どうかしたのか?」
先を行く黒猫が耳だけこちらに向けて私たちの話に参加している。
アニヤ「私まで頭がチカチカしてどうにかなっちゃいそう。」
ホルド「?」
私「まあ、ストレス解消は必要だし。嫌なら、あの時だけ感覚器官の接続切っとけば?」
アニヤ「む、無茶言わないでよ!私、体がないんだから!それにそこまで器用なことできないわよ!死んでまだ1日しか経ってないのよ?!」
私「私はアニヤの事好きよ?」
アニヤ「わ、私たち女同士じゃない!?」(////)
ホルド「よくわからんが、お前ら話通じてるのか?それ?」
昨日セーフハウス化した部屋で寝る時、ホルドが話してくれた私たちの事、旅の目的。
それらがあって、私は今までの経緯を大体思い出していた。
私たちパーティーは逃げた魔王マーシェルを追ってこのダンジョンに入った。
しかし、勇者であるクリュソスのバカがこのダンジョンで見つけた呪い装備を一式、装備しやがった。
魔王は倒せたが、呪い装備のおかげでヤツは勇者を乗っ取っていた。
それに気づかなくて、不意を突かれた私たちはあっけなくやられてしまった。
私『そして、運良く辛うじて生きてた私を頼りにダンジョンの脱出を試みるのであった。』
にしても帰りの食糧は大体、勇者が持ってたのよね。
私には料理スキルはないし。結構なサバイバルになりそう……
カサカサ
その時、頭は赤く体は青いムカデが足元を通る。
キラーン
アニヤ『え!やだ!あんなの食べる気なの?!』
え?ダメなの?
ホルド&アニヤ「いやー!」
私「待て待て〜!」
捕まるまいと必死で逃げるムカデは通路の壁の隙間を通って中へと消えていった。
私「?もしかして、昨日みたいにここも隠し部屋かな?」
ホルド「そうかも?」
アニヤ「かなぁ?」
コンコン
壁に耳を当てて叩いてみる。
土の壁は一撃を加えれば開きそうだが、あいにく、猫と死霊と魔法の使えない魔法使いしかいない。
オークキング「う?なんか呼んだ?」
リナ『そうそう!丁度いい所に!』「私はピチピチよ!早く棍棒で叩いてご飯にどう?」
私は件の壁を背にして銃を構えた。魔力が回転式弾倉に吸い込まれていくのを感じる。
オークキング「グヘヘ、それいいな。」
オークキングが大きく振りかぶる。
それと同時にスタスタ歩いて避ける。だいぶ、こいつの扱いにも慣れてきた。
ドグシャァァ!
見事、壁に人が通れるだけの穴が空き、隠し部屋が現れた。
私「ありがとう。お礼に受け取って?」
ドゥン!
ビシッ!
オークキング「う!い、いらな、い゙ー」
ボコボコッ!
パァァン!
こめかみに当たった魔力の弾丸が内部で破裂するのか、オークキングの頭も弾ける。
ドスーン!
ホルド「どれどれ?」
トコトコ
倒れた巨体の隙間を通って、先に黒猫ホルドが隠し部屋の中を確認する。
ホルド「は?下へ続く階段?」
アニヤ「この階より下?そんなのあるの?」
巨体が邪魔で覗き込んだ隠し部屋の奥の壁には下りの階段があった。
そして、その左側には光輝く球体と、その周りを衛星のように一つの星が回っている。
ホルド「だな。隠しエリアってことだ。ついでにセーブポイントまであるぜ。」
アニヤ「降りたらいきなりボス戦ってこと?」
行ってみよう。
オークキングのムキムキの体をよじ登り部屋の中へ入る。
ホルド「あ!こら!」
ズンズン
アニヤ「待ちなさいよアナタ!状況わかってるの?!」
死霊のアニヤの声がうるさいので、装備を確かめてみる。
右手 ヘルメーカー
左手 ヘルメーカー
あたま なし
からだ ぬのの服(状態:D)❋
脚 ぬのの服(状態:D)❋
靴 ショートブーツ(状態:C)❋
アクセサリー みかわしのマント(等級:A)❋
アクセサリー なし
魔法 ど忘れ ⇐デバフ状態(使用不可)
道具 水筒(回復の泉)
止まった懐中時計
❋状態:A(新品)〜E (ボロボロ)
等級:A(上等)〜E (ゴミクズ)
ん〜?無理か?確かに服は汚れや傷が目立つけども。(そこじゃない)
アニヤ「絶対、無謀よ!今は一人なのよ?!タンクのホルドも猫にされてるし。」
ホルド「せめて、辺津鏡が使えりゃな~。」
辺津鏡かぁ。私って薬草を持ってるのよね?
私『薬草、薬草、出てこい。薬草、薬草……』
ムムムム……
ポン!
私「あ!」
ホルド&アニヤ「出た!?」
宙空から薬草が姿を現し。フサッと傍らに落ちた。
ホルド「よし!自分が何を持ってたか思い出せ!リナ!」
私「とりあえず、インベントリも使えるんだし大丈夫じゃない?」
ホルド&アニヤ「えー!?」
アニヤ「せ、せめて、セーブはしなさいよ!」
はいはい。
最下層+α ボスの間
階段を下りるとチルド室のように霜の降りた薄暗い大広間に大きな氷のエレメンタルのような怪物が居た。
普通のエレメンタル(Yのような形)と違うところは、頭と腕があるところだろうか?
私『頭が弱点だと思いたい。』
私はそれを階段の途中、天井近くから大広間を覗き込んでいた。気づかれないように小声で話す。
私『一体だけ?』(ヒソヒソ)
ホルド『みたいだな。』
猫は胸の谷間に装備している。防御力が上がった、ような気がする。
アニヤ『見て、怪物の後ろ、小さい滝がある。』
確かに奥の壁の小さな穴からチョロチョロと水が流れている。あれは何のギミックだ?
私「とりあえず、突撃!」
ホルド「わー!?」
アニヤ「ちょっとー!また死んじゃう!」
階段を素早く降りながら頭(?)のクリスタルに向けて銃を撃つ。怪物は左腕で防御した。やはりあそこが弱点だ!多分!
怪物は右腕を構え、反撃に氷柱を発射する。
ドグシャッ!ドグシャッ!
後ろの壁に当たり氷柱が刺さっている。
ホルド「ひぇー!」
私「!」(タッ!)
当たる前に床に飛び降りる。受け身を取りつつ、頭を狙う。
ドゥン!ドゥン!
やはり、頭をカバーしている。
そして、魔力の弾を受けた腕は弾けてボロボロになっている。チャージショットならある程度、装甲を破壊できる。いけるかもしれない!
しかし、ダメージを負った左腕は右手でなでると元通りになった、驚愕するとともに部屋の温度が一気に下がる。
怪物「カウント10。」
何の数字だろうか?とりあえず、ヤバそうなのはわかる。
怪物の攻撃を回避しつつ銃を連射する。吐く息が白い。
体を動かしているし、ホルドのぬくもりで寒さは和らいでいる。が、長くは持ちそうにない。体感、部屋の温度はどんどん下がっている。
怪物「カウント09。」
減った!
ホルド「死の宣告系だ!」
アニヤ「即死攻撃!?」
うわー、どうしよう!
挑んだことに後悔する。死んだらどうなるんだ?
アニヤを見るに私たちも霊体となってダンジョンを永遠と彷徨うことになるのだろうか?
チョロチョロ……
水の音?この室温でも滝の水は凍らない?何かあるのか?
とりあえず、
私「(ゴソゴソ)……あった、あった。」
ポケットの道具、止まった懐中時計を取り出す。
私『辺津鏡!』
フッ
手の中の懐中時計が消えると同時に、滝の水が止まる。穴を塞いでやった。ザマァw
怪物「?!」
明らかに動揺している。メシウマである。
ドゥン!
グッシャァ!
一撃で怪物の腕が大きな亀裂とともに大穴ができる。
怪物「回復!」
出来てない!腕はそのままだった。
奴は水蒸気となった滝の水を凍らせて自分の身を再構築してたのか!
私「チャージショット!」
ドゥン!
グッシャァ!
両腕が破袋され、もはや怪物の頭を守るものはない。
パキパキパキ……
部屋に残っていた水蒸気で追加で腕を作ろうとしている。今さら悪手である。
怪物「か、カウント08。」
私「もう遅い!」
ドゥン!
ビシッ!
ドカーン!
怪物の頭が弾ける!怪物の体全体にヒビが入り、そこから光が漏れる。
ゴゴゴゴゴゴ……!
怪物は消滅し、その場所にはアイテムが転がっていた。
黒いゴムでてきてるような全身タイツ。
私「なにこれ。タイツ?」
ホルド「見た感じ、女性専用装備か?」
アニヤ「それと、筒?」
一丁の銃、大型のシングルシューターっぽい。
私「何かしら?ヘルメーカーの上位互換?」
こうして、ボスを無事に倒し、用途不明な武器と防具を手に入れた。もらえるものはもらっておこう。
隠しボスのドロップアイテムなのだ。さぞかし、いいものに違いない。




