VSスカルミリオーネ&バルバリッチ
朝
疑似太陽が登る前にニキータの店をあとにする。
暗い外を伺うとスケルトンライダー達は騎乗したまま固まって大人しくしている。
周囲の半壊した建物の影からゴブリン共の寝息がちらほら聞こえてくる。
ホルド「早くこの階層を抜けちまおう。」
アニヤ「今なら闇夜に紛れてだいぶ進めると思う。」
艶を消したミスリルアーマーを要所、要所にあしらった黒のボンテージスーツは闇夜に紛れるには最適だろう。
艶のある私の髪がダンジョンの天井の星空に輪郭を照らされて揺らめく。
私「ダンジョン脱出。上に行けば後は消化試合と思いたいわね?」
出入り口からいきなり高レベル帯のモンスターはいないはず。
夜目の利く猫を先頭に廃墟をスニーキングで抜けていく、猫のヒゲもフル活用してモンスターの裏とりをして無用な戦闘を極力避ける。
私「矢は100本、追加で要る?」
起きてきたゴブリンアーチャーの裏とりをしつつ死霊のアニヤに尋ねる。
アニヤ「十分じゃない?要らないわ。」
疑似太陽が昇る頃、かなり廃墟を進んだが、辺りは様子が様変わりして来た。コケが増えて植物が生えている。そして、
ワラワラ
ホルド「なんだこりゃ?」
変な赤い植物がそこら中に生えており、風もないのに蠢いている。
ピク、ピクク
ホルド「だめだ、ヒゲがコイツラに反応しちまう。」
アニヤに言われて半壊した建物の2階に上がる。マッピングして進もうというのだ。
進む先は赤い植物のせいか赤く染まって見えた。奥にはゴールなのかコロシアムが見える。アソコがエリアボスがいるところか?
アニヤ「音波探知!」
コーン
???「ぎー!」
アニヤ「え?!」
バッサバッサ
ホルド「不味い!コウモリだ!隠れろ!」
私は猫を抱きかかえて、コウモリに接敵される前にその建物を離れた。
ドシン!
私『うわ!』
ホルド『止まれ!』
道には湾曲した大きな片刃刀を持ったオーガ系モンスターが闊歩している。
奴らはオークの上位互換で巨体はそのままで頭が回る。青い個体だと魔法も使ってくる。
赤いオーガ「敵はどこだ?」
ゴブリン「ウホ、ウホホ!」
オーガの後ろには弓や片刃の剣で武装したゴブリンが数体こちらの方向を見ていて、背後を取られないようにしている。
明らかに今までより攻略難易度が上がっている。
ホルド「建物にはコウモリがぶら下がって裏通りを監視してやがる。」
コウモリは目だけじゃなく音波でも感知してくる。
幸い、蠢く植物が音波探知を妨害してくれるだろう。
私「アニヤ、不可視でいきましょう。」
アニヤ「オッケー!」
ビュゥゥゥゥ……ン
身を低くし、遮蔽物に隠れながら慎重にモンスターの目をかいくぐる。
パシッ
私『わっ!』
赤色の濃い普通のより長い植物は近くに動く対象が来ると絡みついて動きを封じてくる。覚えておこう。
ホルド『おちつけ!ナイフで切れ!』
辺津鏡からニキータのところで購入していたナイフで植物を切る。
ブチッ!
私『あー、びっくりしたー。』
しばらく進むと何やら後ろが騒がしい。
ホルド「なんだ?」
私「今さっき切った植物を見つけたのかな?」
ピー!
けたたましい警笛が鳴り響く。
目の前の道をスケルトンライダーの一団が駆け抜けていく。警戒が強化された。徘徊するモンスターの数が増える。
スタスタ
私『うわー、こっち来る。』(ヒソヒソ)
ホルド『一箇所にとどまってたらだめだな!』
アニヤ『万一のために弓を装備してリナ!』
不可視を維持しながら背の高い植物を避けつつ路地だけに頼らず建物の一階を腹ばいになりながら進む。
ソォッと窓を開ける。ツーマンセルのゴブリン達は同じ方向を見ている、素人か?背後がガラ空きだ。
アニヤ『今よ!』
スルリ
建物を出て道で警戒しているゴブリン達の後ろを抜けて路地に入る。
ホルド『コウモリ!』
アニヤ「!」
シュッ!
ドッ!
コウモリ「キッ!」
建物の屋根にぶら下がっていた。コウモリを矢で射抜いて無力化する。
アニヤ『早くここを抜けるわよ!』
走りたい衝動を抑えつつ、ゆっくり速く進む。
私『消化試合、望み薄っぽい。』
ホルド『だな。』
アニヤ『私たちのことを把握してないと、ここまでの配置は考えられないわよ。』
今度、ニキータの店を見つけたら、消音靴を注文しよう。値は張るだろうが、アレなら問題なく走れるはず。
コロシアムまで後少しだ。すると、
ボシュー
ボシュー
赤い苔?何か丸い植物が周囲に赤黒いガスをまき散らしている。毒ガス?
しゃがみながら建物に入り、ゆっくり物音を気にしつつ2階に登り、腹ばいになって先の様子をうかがう。
近隣のモンスター達はガスマスクや鼻をバンダナで覆っている。若干、スケルトンの割合が増えたか?
アニヤ「吸い込んだら不味そうね。」
私「ホルドじっとしといて。」
辺津鏡から取り出した2枚の布で自分と猫の鼻を覆う。
ホルド「目に入らなければ何とかなると信じたい。」
アニヤ「敵も本腰よね。」
私達はコロシアムを目指して進んだ。
赤い苔は路地に多く配置されている。
しかし、その濃いガスは視界を遮り、こちらの身を隠すのにも役立っている。
周囲に充満しているガスのせいでコウモリの音波探知も役に立たないだろう。
私『臭い。』
ホルド『我慢しろ、あと少しだ。』
朝から気が張り詰めっぱなしだ。
しかし、その分、魔力消費を抑えてここまでこれた。ヘルメーカーの銃身の磨耗もアニヤの弓矢で全くしてないし、状態は保たれている。
突然
後ろの通路が背の高い赤い植物で遮られる。後戻りはできそうにない。
ホルド「ふー、抜けたか?スニーキングは精神的に疲れるよ。」
アニヤ「コロシアムはもう目と鼻の先。エリアボスね。気を引き締めていきましょう!」
コロシアムの闘技場に進む。
ゴゴゴゴゴゴ……ズン!
後ろの扉は固く閉じられ同時に上空からたくさんの髑髏を黒いボロ切れに内包した怪物が降りてきて、下からは腕が四本もある赤いオーガが姿を現す。その腕にはそれぞれに違う武器を携えている。
私はメガネの追加機能を使った。
私「宙に浮いてる骸骨はスカルミリオーネ、赤いのはバルバリッチ。だって。」
ホルド「2体かよ。」
バルバリッチが突進してくると同時にスカルミリオーネが魔法を、火球を放ってきた!
私はコロシアムの柱の陰に隠れて火球をやり過ごした。
ドウン!
バシン!
バルバリッチを狙った魔力の弾丸は持っていた大きな湾曲刀に弾かれる。
私「うっそ!?」
アニヤ「魔法剣?!」
ブゥン!
カッ!
柱は綺麗に切られる。
私「ひえー!」
バルバリッチに背を向けて逃げるが、バルバリッチの巨体が邪魔でスカルミリオーネから魔法攻撃は飛んでこない。
バルバリッチ「うがっ!」
すばしっこい私達に痺れを切らしたのかバルバリッチは持っていたドッコを投げつけてきた。
ドゴッ!
ホルド「うわ!」
私「この!」
シュイイィィィ
チャージショット!
バッキィィン!
バルバリッチの大湾刀を破壊する。
それを見て、接近戦を諦めたのか、ドッコの投擲に切り替えてきて、スカルミリオーネの魔法攻撃も再開される。
私「くっ!」
ホルド「ドッコを盾にしろ!」
地面に刺さった大きなドッコの物陰に隠れて、魔法をやり過ごすもバルバリッチが向かってくる。
グオォ! 掴み攻撃!
私の体を乗っ取ったアニヤがそれをヒラリとかわす。
アニヤ「なりふり構わないってこと!?」
ドシュ!
アニヤが素早く矢を放つ。バルバリッチは残っていた大剣でそれを弾いた。
しかし、
ド!
バルバリッチ「ぐぎゃぁ!?」
アニヤは2射していた。矢を同時に2本放っていたのだ。
片目に矢を受けたバルバリッチは後ずさっている。その間をスカルミリオーネの魔法が飛んでくる。
私「おっと!チャージショット!」
魔法攻撃を柱に隠れてやり過ごしつつ、痛みに悶えるバルバリッチの隙を突いてその頭を吹き飛ばす。
ドッシイィィン……!
ホルド「やった!」
バルバリッチを倒した!
スカルミリオーネ「形態変化。」
スカルミリオーネの体包んでいた黒い布を突き破って無数の骸骨の腕が飛び出してきた。
ブゥン! 薙ぎ払い攻撃!
ホルド「おっと!」
スカルミリオーネ「マッドバレット。」
無数の泥弾が放たれる。
ドバババッ!
着弾してはじけたドロが柱に隠れていても当たる。
ビシッ!
私「うっ!」
結構な衝撃である。バトルスーツを装備している私は軽傷で済んでいるが、
私「ホルド!」
ホルド「大丈夫だ!」
猫に当たれば致命傷になる威力だ。幸い、的が小さいので当たらずに済んだようだ。
グオォ! 掴み攻撃!
私とホルドは二手に分かれた。
私「辺津鏡!」
掴み攻撃の腕を何本か虚空に消し去る!
スカルミリオーネ「ぐわぁ!」
ホルド(アニヤ)「ウィンドブレイド!」
ズバババ!
ホルドの僅かばかりのMPでアニヤが僧侶の魔法を使う。私に集中していてホルドに背を向けていたスカルミリオーネを風の刃が斬り刻む。
だいぶダメージが入ったはず!
スカルミリオーネ「うおおぉ!」
ホルド「ぐっは!」
ホルドはなれない魔法の行使で血反吐を吐いた。
私「ホルド!」
チャージショット!
ドグオ!
スカルミリオーネの土手っ腹に大穴を開ける。
ゴゴゴゴゴゴ……!
眩い光を放ちながら、エリアボス達が消滅しアイテムをドロップする。
アニヤ「神代の上着?」
私「やった!ハイポーション!」
気を失っているホルドに飲ませる。
ホルド「……うぇ!まっず!」
アニヤ「よかった!」
私「もう!無理するんじゃないわよ!」
ホルド「もしかしたら、俺も戦力として活躍できると思ったんだ。」
私は二人のファインプレーのおかげで廃墟ダンジョンを攻略できたばかりか、エリアボスまで倒すことに成功した。
三人居れば魔王を倒せる!
そう思えた。




