廃墟ダンジョン
森のダンジョンのエリアボスを倒して、階段を抜けた先は一面半壊、全壊した建物が広がっている世界だった。
至る所から煙が上がっていて、遠くにスケルトンライダーの一団が崩壊した街を駆けぬけている。
ホルド「なんだこりゃ?」
アニヤ「一戦あった感じね?」
魔王マーシェルが逃げ込んだこのダンジョンは外の世界で起きた出来事を模倣して階層を構築する。私達はそこに乗り込み、魔王を一度は倒した。
私「うー、遠くはよく見えないわ。」
アニヤ「どこかにメガネはないかしら?」
勇者クリュソスが魔王に体を乗っ取られ、不意打ちを食らいパーティは全滅。
そして今、私達は魔王に一矢報いるため、このダンジョンから脱出しようとしているのだ。
ホルド「ニキータいねーかな?」
アニヤ「それも含めて探索に行かないと。」
私「継戦能力向上が急務。なんか魔力節約デバイスとかないかな?」
私のMPは残り僅か。
辺津鏡に火炎瓶はまだあるけど、かがり火は敵を呼び寄せてしまうし、貴重な落ちてるアイテムが焼失する恐れもある。
慎重に、使わなければ。
おっと、アレをもらおう。
ちょっと進んだ先の道にゴブリンアーチャーがいる。
アニヤ『最初からそうしとけばよかったんじゃない?』(ヒソヒソ)
私『弓なんて私は使えないし。』
アニヤ『私でやってあげるわよ。静音!』
プシュッ!
ボッシュゥゥゥ!
ゴブリンの頭が弾け飛ぶ。体はその場に崩れ落ちた。それから弓矢を剥ぎ取るとすぐにその場を離れた。
ドカっドカっ……!
すぐに駆けつけてきた、スケルトンライダーが死体を改めている。
コチラのいることが把握されている?
アニヤ『まさか?』
ホルド『ビーストやってだいぶ経つからな。』
私『クリュソスやエクレアとか言う魔女に知られてるのかな?』
早いとこここを抜けなければ、しかし、ニキータの店を見つけたときに金欠で何も買えないというのは避けたい。
私達はスケルトンライダーなどを避けつつ、半壊した建物を探索して金目の物を漁った。
ホルド「早くしろよ!」
アニヤ「んもう!タンスになんて入ってないって!」
いやいや、タンス貯金っていうじゃない?
私「……お!」(ゴソゴソ)
500円がたんまり入った貯金箱を見つけた!
私「あるじゃん!」
ホルド「ホントだ!」
ドッ!
目と鼻の先に矢が勢いよく刺さる。
私「わ!」
アニヤ「見つかった!」
グオ
体を捻って振り向きざまに矢を放つ。道路を挟んで向かいの建物の2階にいたゴブリンアーチャーの眉間を貫く。
ゴブリンアーチャー「ぎゃぁ!」
私「さすが我が嫁!」
アニヤ「いつ結婚したのよ!」
ホルド「バカやってないで、この場を離れるぞ!」
近くで警笛が鳴り、スケルトンライダーの一団が駆けてくる音がする!
私たちは直ぐその場から逃げ、近くの家の床に伏せた。
スケルトンライダーが骸骨の騎馬から降りて周囲の家を見て回っている。
ここも時間の問題だろう。そんな時、伏せていた猫のヒゲが何かを感知する。
ホルド『おい、これ!』(ヒソヒソ)
フワッ
敷いてあるボロい絨毯がハタハタと舞っている。
床材の切れ目から風?
アニヤ『地下室!』
ホルド『見つかる前にここに入ろう!』
ダバダバダバ!
地下室
階段を降りた先に扉があったので、そこに入る。
すると、パッと電気がついた。
(陽気な店内BGM)
あ、ここは!
ニキータ「いらっしゃいませ~!」
ホルド「音楽は消せ!」
ニキータ「えー?そうですか?」
プチ!
アニヤ「電気も!外に漏れちゃう!」
ニキータ「猫目の僕は良いですけど、人間はそうは言ってられなくないですか?」
パチ!
地下室は暗闇と静寂が包まれた。
(ドカドカドカ)
一階で足音がする。
少し、目が慣れてきたので辺りを見渡す。店のラインナップを見る。
ホルド『しーっ!みんな静かにしろ!』
ニキータは口を自分の手で押さえている。
アニヤ『見つからない!見つからない!』
目をつむり、両手を組んだ死霊が必死に何かに拝んでいる……
あ、辺津鏡で……、だめだ!私のではホルドが死んでしまう。
私の辺津鏡は生き物は自分以外損壊してしまう。
あれは万能ではないのだ。
敵を屠る。簡単にできるだろう。しかし、その後は?
ここに大勢やって来る。そうなればMP切れでアウトだ。
(ドカ、ドカドヵドヵ……)
ホルド「……いったか?」
アニヤ「まあ、しばらくはトーン落としていきましょう。」
さすがに暗すぎるからと扉に背を向ける形でランプに明かりを灯す。
扉は光が外に漏れないように店の商品で、すき間を埋める。
ニキータ『あー!お代を払ってからにしてくださいよ!』
ホルド『リナ!さっさと払ってやれ!』
はいはい、辺津鏡から今さっきの貯金箱を出す。
アニヤ『多分、足りてるはずよ。』
ジャララ!
ホルド『わー!振るな!』
ニキータ『えー!足りなかったらどうするんですか!僕がお師匠様に怒られちゃいます!』
アニヤ『サイレンサー!』
うげー!
すきっ腹にMP消費は効く!
私『は、はへぇ……』(ドサッ)
ニキータ『リナさん大丈夫ですか?』
ヨロヨロ
私『だ、大丈夫。それよりまだ余裕ある?矢の補充とかしたいんだけど……?』
ホルド『ちゅーるはこの際、諦めるか。』
アニヤ『そうだ、ニキータの知ってる範囲で外の様子を教えてちょうだい?』
ニキータ「はい、わかりました。矢の束は包みます?」
私『いらないわよ!』
受け取った矢は辺津鏡にしまう。
ニキータ「そうですねぇ、クリュソスさんの戴冠式が終わって、あの人が次期王に就任が済んだ途端に、王族や大臣が何人か不審死しましたねぇ。」
アニヤ「やば、もう魔王の統治が始まってるじゃない。」
ホルド「それで?」
ニキータ「騎士団をゴブリンとオークにしたもんだから治安がめちゃくちゃ。もう、王都は人が住める土地じゃないです。」
私「ウチのお母さんは?」
ニキータ「街にいた魔女はそのまま残って魔王の傘下に入るか、エルフの里に脱出されましたね。リナさんのお母様は知りませんけど。」
ウチのお母さんのことだから、エルフの里の方かな?
ここを出たら行ってみよう。
私「あ、それと、メガネ取り扱ってない?」
ニキータ「ありますよ?度の細かい調整は専門店でやらないといけませんけど。……はい。」(ジャラ)
ニキータは店頭に出してなかったメガネの束を袋から出した。
結構な品揃えだ。私はピントが合うのを探した。
スチャ
チラッ
まだぼやける……次は?
スチャ
チラッ
ホルド「俺かよ……」
丁度いい距離にいる猫にピントを合わせる。
スチャ
チラッ
私「あ、これ!」
ホルド「あんま、似合わねーな。」
うっさい。
猫の顔もはっきり見える。フレームも太くて頑丈そうだ。
私「これにするわ!」
ニキータ「まいど〜。あ、今のでちょうど貯金箱のなくなりましたよ、500円。」
今日はニキータの店の脇で野営することにした。
辺津鏡から要らないものを売って、火を使わないで済む食料品を買う。
ニキータ「これ、試供品ですけど、どうぞ?うちの新商品なんです。よかったら今度、買ってください。」
レトルト?
私「なにこれ?普通のパウチ?」
ニキータ「いえいえ、その紐を引っ張ってもらうと加熱する仕組みです。火がなくてもアツアツのものを食べれますよ!」
試しにやってみる。
(プシュー)
私「あっち!」
ホルド「わー!でっかい声出すな!」
咄嗟に私とホルドは自分の口を両手で押さえた。
外
ホッ
ホルド「気をつけろ!」
ゴメン、ゴメン。
たしかにアツアツだ。私はその試供品をフーフーして食べてみた。
私「……味が薄くない?」(モグモグ)
ニキータ「あ、そうですか?カスタマーセンター通してフィードバッグしてみます。」
アニヤ「リナは濃い味になれてるから、あんまり、信用しちゃだめよ?」
む?そうなのかな?言われてみればそんな気もする。
ニキータ「じゃあ、バリエーションを増やす方向で、進めてもらいます。」
幻覚を見る葉で歯を磨いて寝る。
お風呂入りたい。クチーテァの家が恋しい。おっきなオ○パイも拝めてたし。
アニヤ「悪かったわね、小さくて。」
いやいや、胸はそこにあるだけで尊い。私はアニヤのも好きだ。
そんなことを考えているといつの間にか寝てしまった。
いつもの現し世とは違う世界、いつもと同じ三人テーブル席。
違うのは今回は私の分もコップが用意してあることだろうか?
ターマ「あら、いらっしゃい。」
マフ「また来たの?今度は何?」
私「アヌって何?何のためにいるの?」
マフ「あー、それ?竜退治。」
竜退治?
ターマ「この星はかつて竜の物でした。我々が居住するには彼らの排除が必要でした。」
マフ「その尖兵がアヌの私や魔女のターマ。竜がほとんどいなくなった今じゃ宝の持ち腐れよ。」
ターマ「十種の神宝だけにですね。」
2人は顔を見合わせて笑っている。
辺津鏡が竜退治に?どうやって?
マフ「それは……」
視界がよどむ。
ターマ「時間切れですね。」
マフ「話の続きはまた今度。」
グゥ……




