止まったり進んだり
ガレットを離れ、町を歩くミコト達。ライアは貰った二つのクッキーをぎゅっと抱きしめ、険しい顔で辺りを見渡しながら歩いている
「ライア、何しているの?」
「また盗まれないように頑張ってる」
キョロキョロと回りを見渡しながらシアに返事をすると、シアがフルールを思い出しアハハと苦笑いをした
「ちゃんと根に持っていたんだね」
「また見つかって取られる前に食べてもいい?」
そうシアに聞くと、うーんと困った顔で近くにある街路樹に目を向けた。街路樹には目間にシワを寄せ三人を監視するフルールが木の枝に立っていた
「……まあいいかな」
「やった!いただきます!」
すぐにクッキーが入った二つの袋を開けたライア。バターの甘い香りが漂い、ライアの笑みが溢れる。クッキーを交互に一口食べて、ウンウンと嬉しそうに何度も頷く
「美味しい。昨日と同じ、美味しい」
美味しそうに食べるライアを見て、シアも一つ袋を開ける。甘いバターの香りと独特な甘い香りが混じったクッキーを食べる。それを見てライアもまた同じクッキーを食べた
「あの葉っぱなんだったんだろう?」
「あれはシナモンだったんだね」
「ふーん」
シアに返事をしながら、かじっていたクッキーを全部食べきったライア。次に何を食べようか袋を交互に見て悩む。そんなライアをシアがフフッと微笑み、二人に遅れて歩くミコトの方に振り向いた
「ミコトも食べないの?」
そう声をかけてもミコトは返事をせず空を見上げたまま歩く。立ち止まりミコトを見るシアに気づいたライアも立ち止まってミコトを見る
「ミコト、大丈夫?」
またシアが呼びかけると、やっと声が聞こえたのか立ち止まりシアを見る。隣で心配そうな顔をしているライアにも気づいて、心配を誤魔化すようにエヘヘと笑う
「なに?午後の授業の話し?」
「いや、全然違うよ……」
ミコトの返事にシアが呆れつつため息をつく。その間にミコトの隣に移動したライアが、さっきまでミコトが見上げていた方に目線を向けた
「さっき、何を見ていたの?」
「ちょっとね、今回は早く晴れたなって思って……」
ミコトも空を見上げ答えると、シアがクッキーの袋をぎゅっと握りしめると、三人を囲むようにそよ風が吹いて、地面にあった落ち葉が辺りに舞う。ライアがクッキーの袋を落とさないように目を少し薄目で前を見ると、一瞬目の前で何かが通りすぎていった。恐る恐る目を開け、通りすぎていった方を見ると、フルールが三人のすぐそばにある街路樹の枝に止まりじっと見ていた。フルールに気づいたライアがクッキーの袋を取られないように強く抱きしめミコトの背後に隠れると、クッキーが取れないと気づいたフルールは学園の方へと飛び去っていった。姿が遠くなり、ライアがふぅ。と胸を撫で下ろすと、ミコトがライアの手をつかんでほんの少し引っ張った
「フルールがまた戻ってクッキーを取られちゃう前に、急いで帰ろっか」




