失敗は成功の元
手際よく調合していくミコト。その隣でライアがじっと見つめている。戸棚から何個か取った液体や葉っぱや数冊の本を手に取ると、ライアが問いかける
「何をするの?」
「これらを合わせて、今からお菓子を作ろうかなって」
「お菓子?」
「そう、朝ごはんの後のおやつ。ライアは何が食べたい?」
「昨日のクッキー」
「それはマリーおばさんに頼んだ方が美味しくて早いよ」
二人の会話を聞いてシアがクスクスと笑ってライアに言うと、ミコトが少し頬を膨らませた
「そんなことないよ、私がすぐに作ってあげる」
シアに少し怒った声で返事をして背筋を正し、気合を入れる。ライアもつられて背を正し、クッキーを作ろうと調合をはじめたミコトの手元を真剣な眼差しで見つめる
「私は少し離れてるからね。何かあったら呼んでね」
「わかったー」
ミコトの返事を聞いて、同じ部屋にあるミコトから少し離れた所にある机に向かい、本棚にあった本を読みはじめる。部屋にはカチャカチャと容器を重ねる音や、シアが本をめくる音が部屋に響く
「これも入れちゃうの?」
「うん、クッキーに甘い香りを足したいからね」
ライアの質問に答えながら薄茶色い色の液体を沢山の液体を入れ枯れた葉っぱが浮かぶ容器の中に適当に流し入れていく
「あっ……」
「どうしたの?」
「それ、入れすぎだよ」
「えっ?」
ライアの言葉に首をかしげながら薄茶色の液体が入った容器を机にコトンと置く。その瞬間、クッキーを作るために使っている容器から白い煙幕が起こり、ドンッと一瞬ミコトが使う机が揺れた
「二人とも大丈夫?」
物音を聞いてシアが慌てて駆けつける。煙幕がまだ溢れだしケホケホと咳き込むミコトの声が聞こえる。換気のため急いで窓を開け少し雨風が入ってきた
「私はなんとか大丈夫そう……」
「ライアは?大丈夫?」
シアがライアを探すと、机の側で物音に驚き目を丸くして床に座るライアを見つけた
「カメリア先生に見つかる前に早く片付けよう」
机や床に散らばった容器を見て急いで片付けはじめる。ミコトがテンション低く容器の欠片を拾い、シアは床に零れた液体を拭いていく
「ライア、何してるの?」
片付けをせず静かに机に向かっているライアを見つけシアが声をかける。ミコトも気づいて一緒にライアに近寄り机で何かしている手元を見ると、机の上に置かれていたミコトが使っていた容器の中に、クッキーが数枚入っていた。ミコトとシアが驚き顔を見合わせていると、ライアがクッキーを見て嬉しそうに容器から一枚手に取った
「出来たよ、昨日のクッキー。食べてもいい?」




