表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/56

episode.17 初デートは格安レストラン?


「ってなわけで、エルフの村は救われたってわけよ」


 テーブルに並んでいるのはイタリアン。チーズとミートソースたっぷりのドリア、海鮮が乗った新鮮なサラダやカルパッチョ、ミネストローネスープにバジルとチーズのピッツァ。


「でも、妬けちゃうなぁ〜。だってあのエルフのお母さん、すっごく綺麗だったしトオル君に優しかったし」


 恋沼結衣こいぬまゆいはサラダにドレッシングをかけて小皿に取り分けると、左の頬だけを可愛く膨らませる。トオルはそれをみてドキドキしつつも結衣にはしっかりと真実を伝える。


「ナターシャさん、確かに綺麗だし優しいけど……。527歳らしい」


「えっ……」


 びっくりして取り分け用のトングを落としたのをトオルがキャッチする。


「あぶね。そうそう、エルフってやっぱり長生きみたいでさ。成長するのもゆっくりなんだって。だからあのリータも実は俺たちより年上なんだってさ〜」


「そうなんだ……なんか色んな作家さんがファンタジーの世界を描いているけどさ。あながち間違いじゃないのかもね」


「まじまじ。てか結衣ちゃん。まじでセイゼでよかったの? もっとほらおしゃれで高いお店とかでもよかったのに」


 トオルは給料日のあとちょっと気分が大きくなっていた。というのも来月には収益が入るのでいつも以上のお金持ちになれるのである。

 男の子としては気になっている可愛い女の子に格好をつけたいところだったが、結衣のリクエストは全国チェーンでしかも格安のお店だった。


「高いお店ももちろん行ってみたい気もするけど……緊張しちゃうじゃん? それに、食べてみたかったんだぁ。この海鮮サラダ。高校生の時にクラスの子たちが話しててさ羨ましいなぁって」


 高校時代からあまり友人がいなかった結衣にとって、この場所は憧れの場所だった。それが今は「好きな人」と来られるのだから、彼女にとってはどんなに高級なレストランや高級で美味しい料理よりも価値があるのだ。

 一方でトオルは女の子に格好をつけたい、甲斐性を見せつけたいという気持ちを持っていたので少々複雑である、


「そっか。それならいいんだけどさ。これうまいなぁ」


「トオルくんってさ。本当に美味しそうにご飯食べるよね。食べ歩き配信する前も思ってたけど」


「え? まじ?」


「うん。たまーにリスラブの雑談配信でさ画面つけてカップ麺とか食べてたじゃん?」


「結衣ちゃん。それはあまりにも古参すぎるよ」


「えへへ。トオルくんが美味しそうにカップ麺食べるの本当に可愛かったなぁ。そうだ。エルフの村のご飯って洋風だったよね? イタリアンっぽかったというか」


「確かに、フォカッチャとかそうかも」


 結衣はピザを上品にたたんでから頬張って飲み込んでから


「もしかすると、異世界でも食発展に関しては私たちが住んでる世界と似ていくのかもね。種族が違えど、食材があって知能がある生き物がいれば……同じような食品や料理が生み出される。きっとエルフの村はヨーロッパ的な食材が多いのかも」


 トオルは自分が全く想像もしなかったことだったので結衣の発言に妙に納得してしまった。


「結衣ちゃんめっちゃ頭いいやん……」


「そう? ってことはさ、知性がある種族がいる場所にワープできたら美味しいものが食べられるかも? って思ったんだよね」


「次はそうやって願ってみようかなぁ」


「そうしてみなよ。楽しみだなぁ、トオルくんの生配信。次はいつ頃やるの?」


「とりま、エルフ編で撮った動画の編集終わってからかな……?」


「そっか、じゃあこの後は空いてる?』


「今日はバイトないかな」


「食べ終わったらトオルくんのお家に行ってもいい?」


「いいけど……結衣ちゃんは積極的だなぁ、ぐへへ」


 トオルは届いたハンバーグステーキを切って頬張った。安いファミレスのハンバーグステーキとは思えないくらいうまい。熱々の鉄板で切るのが醍醐味である。


「本当にトオルくんが食べているところ好きだなぁ」


 結衣は愛おしそうに食べているトオルを見つめながら、サラダを一口。いつもはしないような可愛いピアスにこの日のために下ろした桜色のワンピース。

 つい今朝までエルフの母娘に嫉妬しまくっていたのをうまく隠している。目の前のトオルの能天気な感じを見るにあのエルフ母娘とそういう関係にはなってないと結衣の女の勘が言っていた。


「そう? 嬉しいなぁ。今度、こっちでも食べ歩きしてみようかなぁ」


「楽しみ!」


「けど、こっちの世界だとどこがいんだろう? 結衣ちゃんなんかいい場所知らない?」


「えっと……調べておくね!」


「あ、結衣ちゃん。家に帰る前にペットショップによってもいい? ケンシンのキャットタワーとおもちゃ買いたくてさ。付き合わせてごめん! だけど……」


「いいよいいよ。じゃあ、食べたら出よっか」


 ほんの数週間、異世界に行けるようになってからトオルの生活は一変した。こんなに可愛い女の子と食事を食べ、家にまで呼べる上、来月には金銭の保証がされている。

 トオルは人生の一発逆転を感じながら急いでハンバーグステーキを頬張った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ