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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

食屍窟

作者: チビドラゴン教の教祖

           食屍窟          


その日は曇っていて、少し強めの風が吹いていました。

私の家は2階建てで、私の部屋は2階にありました。

私は床に寝っ転がりながら漫画を読み、だらだらとしていました。

自分の部屋に一回の冷蔵庫から持ってきたジュースの量がちょうど半分になったぐらいのとき、窓の外から私を呼ぶ声が聞こえました。

私が部屋を出て玄関を開けると、そこには6人ほどの友人がいました。

彼らはみんな外行きの格好をしていて、懐中電灯などの明かりになるものを持っていました。

彼らは今から学校の裏山にある、洞窟に行くと言いました。

私は家の応接間の棚から懐中電灯を拝借し、ついでに親のお気に入りのカメラを持って家を出ました。

彼らの中にはオカルト好きで有名なAがいました。

Aは、今から向かう洞窟が「食試窟」と呼ばれていることを教えてくれました。

A曰く、あの洞窟には死肉を喰らう餓鬼が住み着いており、その数は30体を超えるらしいのです。

3年ほど前にオカルト好きの二人組がそこに入って消息不明になったという話や餓鬼たちが地底の奥底から這い出てきたという話、餓鬼たちは何か恐ろしい神を信仰しているという話を私はAから聞かされました。

餓鬼たちは「もるでぃぎあん」という神を信仰しているといわれていて、洞窟の奥にはそれの祭壇があるという話も聞きました。

私たちは学校の裏山に入りました。

裏山にはところどころにごみが落ちており、その中に手ごろな鉄製の棒を見つけました。

私はその棒を洞窟に持っていくことにしました。

私たちは洞窟の前に着きました。

洞窟の前にはさびれた祠がありました。

祠には漢字で何か文字が書いてあったが、難しくて読めませんでした。

洞窟はもう何年も人が立ち入っていないように見えました。

洞窟は下へ下へと続いていました。

私たちは全員は洞窟に入らず、Aとガキ大将であるB、口達者なCが3人だけで降りてみることになりました。

私達は洞窟の前で持ってきた漫画を読みながらAたち3人の帰りを待っていました。

Aたちが出発してから30分ほど経った頃、Cが一人で帰って来ました。

哀れなCは錯乱しており、とても話ができる状況ではありませんでした。

彼は憔悴しきっており、何かを酷く恐れているようでした。

Cはこんなことを口走りました。

「ああ、来るんだ、あいつらが!暗い底のほうから、貪りにやってくるんだ!Aはもともとあいつらの仲間だった!逃げろ!Bは貪られたんだ!喰われる!俺も俺たちもみんな喰われる!餓鬼どもが来る!あああああ!目が赤く暗闇の中で光って…!

群れてるんだ!群れで貪るんだ!奴らの神、もるでぃぎあんの生贄なんだ!Aは最初から俺たちを生贄にするつもりだったんだ!ああああ!うああああああ!」

私たちは困惑しました。

私たちはAとBを探しに行かないといけないと思い、洞窟に入りました。

洞窟は深くまで続いており、暗く湿っていました。

降り始めてから7分ほど経った頃、開けた場所に出ました。

私たちは一気に不穏な感情に襲われました。

それは壁一面に書かれた壁画で、その壁画には地底の底から食屍鬼の大群が現れ、人間を引きずり込む様子が鮮明に書き表されていました。

そして、その壁画の中にひときわ目立つ存在が描写されていました。

「巨大で黒い芋虫のような何か」であり、食屍鬼達はそれを崇めていました。

私はこれがAの言っていた「もるでぃぎあん」なのではないかと感じました。

私たちはさらに下へ降りていくことにしました。

私たちはあるものを見つけました。

それはBが洞窟に持って入ったバットでした。

野球用のバットはひどく損傷しており、乾き始めた赤い液体がついていました。

バットの近くには血痕があり、それは奥まで続いていました。

私たちは血痕をたどり、さらに奥まで進んでいきました。

私たちはまた開けた場所に出ました。

そこには人骨や動物の骨、かつてここへ来た人間のものであろう持ち物が山のように積み重なっていました。

その中にはまだ腐肉がついているものもあり、あたりには悪臭が立ち込めていました。

私はそこを通り過ぎようと歩いているとき、何かに躓いて転びました。

私はそれを拾い上げました。

それは銀色で金属製のペンダントで、五芒星の中心に目玉が書かれている謎の印が大きく書いてありました。

私はそれをその場においてそこを立ち去ることにしました。

そこから先は、階段が続いていました。

階段の下のほうまで血痕は続いており、私たちは階段を下りていきました。

階段の下には扉があり、私たちはその重い扉を開けることに成功しました。

扉の先は暗く、広い空間でした。

いくつもの石でできた長椅子が並んでおり、私はここが何かの教会だと予想しました。

教会の中を進んでいくと、そこには祭壇と一つの巨大な像がありました。

私たちは巨大な像に光を当てました。

その像は芋虫の様な円柱型で、顔には目が存在せず、手足もありませんでした。

私たちはこれが途中にあった壁画に書かれていたものだと分かりました。

この像は「もるでぃぎあん」をかたどったものであり、この教会はおそらく「もるでぃぎあん」を信仰するための場所であると私たちは気づきました。

私たちがさらに奥へ進もうと歩き出したその時、笑い声が聞こえてきました。

その声は嘲笑っているようにも聞こえました。

私達はそれがBだと思いました。

「B!よかった!無事だったんだな!」

そう言って私は暗闇の中のそれに懐中電灯の光を当てました。

しかし、そうして見えたのはBではありませんでした。

それはゴムのような弾力性のある皮膚を持つ怖ろしい姿をしていました。

二足歩行だが前屈みで犬のような特徴があり、ヒヅメ状に割れた足、犬に似た顔、かぎ爪を備えていました。

その姿は私たちに恐ろしいほど不快で、凄まじく不愉快な印象を与えました。

それは泣くような、嘲笑うような、かすれてざらざらとした不快な声でこう言いました。

「Bはもう死んだぞ!」

私たちは悲鳴を上げ、震えあがりました。

そして目の前の食屍鬼の後ろから、

「次はお前たちの番だ」

と聞こえてきました。

さらに私たちの後ろから、前から、右から、左から、下から、嘲笑う声が聞こえてきました。

それはやがて大合唱となり、私たちの正気をえぐり取りました。

私たちは半狂乱になりながら上にある出口へ向かおうとしました。

しかし、私たちはもう食屍鬼の群れに囲まれていました。

そして、食屍鬼どもの中にはAの姿がありました。

Aの目は焦点が定まっておらず、Aは狂気的な笑いを浮かべていました。

Aは言いました。

「ここにいる怪物たちも、遠い過去には人類と同じ種族だったのだよ。やがて進化の過程で別の生物となり、人類に地下に追いやられた」

Aは語りました。

「まだ人間と食屍鬼が同じだった時代。その時は星辰が正しい場所にあった。

偉大なる旧支配者と神話の生物が闊歩する素晴らしい時代だった。

やがて星辰の揃いしときは終わり、旧支配者は眠りについた。

そして永い時が経ち、人類は繁栄した」

Aは語り続けます。

「人類は永い時を過ごし、旧支配者への信仰は消滅していった。

人類は旧支配者の存在を忘れ地上で平穏を保っている。

僕は旧支配者の存在を知った。僕は感激したよ。

人間には想像できないような、宇宙的な、絶対的な恐怖があることを知って!」

Aの顔の形が崩れ、急速に食屍鬼に近づいていきます。

Aは震えて動けない私たちを見据えたまま、さらに語り続けます。

「ここは旧支配者、モルディギアン様の祭殿。モルディギアン様はかつて食屍鬼の頂点に君臨し、われらを導いたのだよ。モルディギアン様は未来に存在する地球最後の大陸、「ゾティーク」にて復活されるのだ!」

そしてAの姿は、少しづつ、少しづつ、食屍鬼になっていきます。

食屍鬼達は嘲笑いながら群れでこちらに近づいてきました。

食屍鬼達のうちいくつかは何かを貪っていました。

そこに懐中電灯を向ければ見えるのは、かつてBのものだった腕や足、指、頭、その他の体の部位を貪っている怪物でした。

食屍鬼達の中にはまだ「人だったころ」の面影を残しているものや、人間の服を着ている者もいました。

食屍鬼どもは自らを地底の底へ追い込んだ人間に復習を果たさんと、手に刃物や鈍器をもってこちらを見つめています。

彼らがこちらに近づいてきます。

これ以上後のことは語る必要もないし、語ることも不可能でしょう。

ただ、私が地上に帰ることは永遠になくなりました。

今頃、私達の屍は彼らの手によってきれいになくなっていることでしょう。


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