【第五話】ホワイトデー
今日は、ホワイトデー。
四宮くんからどんなお返しが返ってくるのか、とてもドキドキしていた。
もしかしたら今日がホワイトデーだということを忘れていて、お返しが無かったり……?そんな不安が頭をよぎる。
またいつものように廊下へ出て、三組へ向かおうとする。
そんな時、ちょうど藍香もこちらへ来る途中だったらしく、すれ違いざまに話しかけられた。
「あ、穂乃果!ちょうどいた〜!」
「あっ藍香、今三組行こうとしてたんだよね、どうしたのー?」
「そう、悠真がね!“今日の放課後体育館裏に来てって小川さんに伝えといて”って言ってた!!今日ホワイトデーだから、絶対お返しじゃん!」
「…マジ?え、やったー!めっちゃドキドキする〜!!」
「よかったね、穂乃果〜!!」
四宮くんに、体育館裏に呼び出された。
どんなお返しが返ってくるのか、さらにドキドキしていた。
そして放課後、カバンに教科書類を詰め込み、急いで帰りの用意をし、走って下駄箱を出て体育館裏へ向かった。
すると、まだ四宮くんは来ていなかった。
一分ほど経ったあと、四宮くんが来た。
「お待たせ、ごめんね待たせて。」
「大丈夫…!さっき私も来たばっかりだから。」
「そっか、それならよかった。あとそう、これ、バレンタインのお返し。」
「わぁ、ありがとう!中は何が入ってるの?」
「それは、箱を開けてからのお楽しみ。でも、チョコレートではないかなぁ。」
「そうなんだ〜…!楽しみー!家帰ったら開けてみるね!」
「うん!口に合えばいいんだけど…」
「私、甘いものは大好きだから、絶対口に合うと思うw」
「そうなんだw それなら大丈夫か!w」
「うん!」
それから、結構長い時間、四宮くんと話した。
気が付けば、三十分ほど経っていた。
そして、完全下校十五分前の予鈴のチャイムが鳴る。
「あ、チャイム鳴っちゃった。暗くなってきたし、そろそろ帰らないとだね。」
「確かに……。じゃあ、また今度ねー…!」
「うん、じゃあね!」
そう言って、四宮くんと別れる。
少し寂しくて、もう少し話したい気持ちもあったけれど、もうすぐ完全下校の時間なので四宮くんと別れた。
別れたあと、四宮くんの後ろ姿をまた見つめていたら、四宮くんがこちらを振り返った。
そして、目が合い、手を振ってくれた。
ドキッとしながらも、私は四宮くんに手を振り返す。
小声で、「また話そうね、好きだよ…」と呟いた。
そして四宮くんを想いながら帰路に着く。
家に着き、四宮くんからバレンタインのお返しで貰った、例の箱を取り出す。
四宮くんからもらったこの箱は、包装紙に包まれていた。その包装紙を取る。
すると、『小川さん、バレンタインでくれたチョコレート、おいしかったよ!ありがとう。四宮悠真より』
そう書かれたメッセージカードと共に、可愛いピンク色のパッケージの、長方形で片手に収まる程度の箱が出てきた。
ドキドキしながら、その箱を開ける。
すると、それぞれ色の違う、パステルカラーのマカロンが四つ入っていた。
「わぁ!!」
私は思わず声を上げる。
ここ数年間、食べていなかったマカロン。
そして、これは四宮くんから貰った大事な宝物。
少し…いや、かなり食べるのが勿体ない。
だけど、とても甘そうな匂いを発するそのマカロンの誘惑に負け、一番右にあった薄い黄色のマカロンを一口、口に入れた。
すると、頬っぺたが落ちそうになるほど甘いその感覚に襲われる。
こんなに甘くて、なんとも言えない甘味があるスイーツは今まで食べたスイーツの中で、最高と言っていいほど美味しかった。
マカロンを食べ終わったあと、このマカロンの値段は何円だったのか気になり、パッケージの後ろを見る。
すると、『1950円(税込)』と書いてあった。
かなり、高くて驚いた。
マカロンが四つしか入っていないのに、私が四宮くんにあげた、チョコレートとあまり値段が変わらない。
私のバレンタインのお返しのためだけに、そこまでお金をかけてくれたのかと考えると、とても嬉しかった。