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【第四話】バレンタイン

しばらく、三組に通い、藍香と話しながら四宮くんを観察する毎日が続いた。

観察はするけれど、四宮くんには勇気がなくて、話しかけることができなくて、話せない日々が続いた。

ラインもあれっきりで、あれからは一度もラインをしていなかった。

今日は、バレンタインだ。

興奮していつもより早く目が覚め、いつもよりも早く学校に着いた。時刻は朝八時少し前。

チョコレートは、二千円もする立派なチョコレートを買った。そしてそれを、四宮くんにあげようと意気込んでいた。

チョコレートをあげるなら今だよね!

そう思い、チョコレートを持ちながら三組に向かう。だけどその時、ふと思う。


(まず、二学期の始業式の日に一回だけ挨拶を交わしただけなのに、チョコレートをあげるなんてやっぱりおかしい……?)


(ラインで少し話しただけじゃん…!まだリアルでは挨拶しかしたことないのにバレンタインの日にチョコレートあげるなんて、やっぱり気持ち悪いでしょ…!! …やっぱり、やめよう……。)


そう思い、重い足取りで四宮くんにあげるはずだったチョコレートを持ちながら、教室に戻ろうとする次の瞬間、


「お?穂乃果じゃんヤッホー。」


藍香に話しかけられた。


「あ、や、やっほー…。」

「涙目…?なんかあったの?」

「あ…えっと…ううぅううう(泣)」

「え?!どうしたの穂乃果?!」


藍香に話しかけられて、安心して涙が溢れてくる。私は藍香に相談した。


「私、今ね…四宮くんに…チョコレートあげようと思ってここまで来たんだけどさ……ふと思ったの……。」


「あ、そういえばバレンタインだったね、うんそれで…?」

「…でも、ここまで来て私思ったの……。」

「うん…?」


「まずさ…二学期の始業式の日に一回だけ挨拶を交わしただけなのに、チョコレートをあげるなんてやっぱりおかしいよねって思って……。

…あと、ラインで少し話しただけで、まだリアルでは挨拶しかしたことないのにバレンタインの日にチョコレートあげるなんて、やっぱり気持ち悪いよねって思って……やっぱりやめようって思って……。」


「えぇ?!そこでやめちゃうの勿体無いでしょ!あげなよー!」

「…で、でも…」


「だめだよ、あげないと!一生後悔しちゃうよー。私が協力してあげるから!」


「…マジ?あリがとう藍香マジ神ぃいい…(泣)」


そうして、藍香が協力してくれることになった。


「そうだな…まず、今日悠真が、部活オフって言ってたから、放課後体育館裏に来てほしいって言う?」


「なんか、告白みたい…。好意バレバレじゃん〜。」

「…確かに。でももうさ、いっそのこと告白しちゃえば?」

「え?!恥ずかしい…。しかも振られたらその後めっちゃ気まずいやつじゃん…。」


「うーん、確かにそうだな…。どうしよう……。

あ、いいこと考えた!

好きバレした方が逆に意識してもらえるかも?告白はしないけど、普通に呼び出して、ちょっと恥ずかしそうにチョコ渡したら、意識してもらえるかも!」


「マジ?うーん、でも恥ずかしいな…。」

「もう、恥ずかしいとかそういう無駄な気持ち全部消し去って、何も考えないようにすればいいんだよ。そしたらきっとうまく行くはず!」


「確かに…!!私、頑張ってみるね!

色々マジでありがとう藍香…!!四宮くんに、“穂乃果が、今日の放課後体育館裏に来てほしい”って言ってたって伝えておいてほしいな…。」


「わかった!悠真に伝えておくね!」

「よろしく!ありがとう藍香…!」


そして、放課後体育館裏で四宮くんにチョコレートを渡すことになった。

朝からずっとそのことばかり考えていて、授業の内容が頭に入ってこなかった。


ついに放課後、この時が来た。

私は急いで帰りの用意をする。

チョコレートが入っている紙袋だけを取り出し、それ以外のものは全てカバンにしまった。

深呼吸をし、前髪を整えて、心の準備は完了。

下駄箱を出て体育館裏へ向かった。

来なかったらどうしよう…という不安が頭をよぎる。だけどきっと来るだろう…と信じることにした。


体育館裏に着く。

すると、四宮くんがもう既に椅子に座って待っていた。


「ま、待たせてごめんね…。」

「…大丈夫、今来たばっかりだから。それで、どうしたの…?」


「あ、えっと…これ、どうぞ。」

「ん…?何これ…?」


「…今日、なんの日だと思う?」

「…あ、もしかして、バレンタイン?ってことはチョコレート…?」


「そう…!これ渡すためだけに今日呼び出しちゃって…本当にごめんね。」

「え、大丈夫だよ。てか嬉しい!ありがとう…!俺、中学生になってから初めてバレンタインで貰ったわー。」


「…そうなの?」

「うん、だから嬉しい!本当にありがとう!」


そう言って、笑顔で喜んでくれた四宮くん。

私は今にも心臓が破裂してしまいそうなほどドキドキしていた。


「じゃあ、またね!ありがとう、絶対に返すよ!」

「う、うん!またね〜…!」


そう言って、帰っていく四宮くん。

四宮くんが見えなくなるまで、後ろ姿を眺めていた。


「楽しみだな、ホワイトデー…。」


そう呟く。

「ありがとう、絶対に返すよ!」

その一言が頭に焼き付いて離れない。

ホワイトデーでどんなお返しが返ってくるのか、楽しみで仕方がなかった。


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